親子で3都市留学:シドニー・セブ・ロンドン、英語ビギナーが夏の終わりに得たもの
「英語はまだビギナー。でも、世界を見せたくて。」シリーズ第ニ弾 前回はこちら
小学6年生のとき、息子は初めて語学留学でシドニーとセブを訪れました。中学生になった今年は、ロンドンへ。英語はまだ初心者のままですが、世界3拠点で得た、親子それぞれの体験を振りかえってみようと思います。
■ 英語は本当に必要か?生成AI時代の"問い"
今から半年ほど前、小学校の卒業式に出席したときのこと。壇上で子どもたちが「将来の夢」を語っていた中で、目立っていたのは「英語が話せるようになりたい」という声でした。
ふと、疑問が浮かびます。
これだけ生成AIが翻訳も文章作成も手伝ってくれる今、人間に語学力は本当に必要なのか......?
わたしも日々考えるところですが、もしカズコAIなるものがあれば、「はい、以前よりもむしろ必要性は高まっています」と答えるかもしれません。
なぜなら、AIが出力した情報を精査し、ハルシネーションを見破り、そこに理性と感情を織り交ぜて言葉にする、人間+語学の「人間語学力」(造語です)が今こそ求められている、と思うからです。
■シドニーのホームステイ:受験のない、最後の自由な夏
小6の夏は、「受験がない最後の自由な夏」として、2カ所で異なる環境を体験するという、ふたつ連続した語学留学を企画しました。(詳しくはこちら)
最初のシドニーではホームステイを選択。語学学校と大手旅行代理店が連携した万全のサポート体制を信じ、ドキドキしながらも子どもを現地のお宅に託すことができました。
ふだんは徒歩圏の都立小に通う一人っ子が、カタコトでのやりとりがやっとのホストファミリー宅からバス通学で学校へ。
たった1週間でしたが、息子にとっては自立への一歩になったと感じています。
わたし自身も現地オフィスで素敵な同僚に出会い働きながら、同じ空の下で大人も子どもも過ごしやすい気候や街並み、風光明媚な景色に触れ、本当に心に残る体験でした。
日本との時差が少なく、直行便で比較的短時間で行けるシドニーは、私見では子どもの留学先として最も優れている選択肢のひとつだと感じました。
留学期間の後半、親子で合流して一緒に観光名所を巡ったりお土産を探したりした時間は、とても心温まる思い出になりました。「また来たい」と素直に思える特別な経験です。
■セブでの"親子駐在"ホテル留学
セブでは、日本人経営の親子留学プログラムに参加しました。
母子でホテルに滞在し、初日のオリエンテーションにも同行できたことで、安心して送り出せました。
印象的だったのが、現地法人を運営する日本人・フィリピン人のご夫婦。
未就学児の可愛らしいお嬢さんを傍で遊ばせながら、家族連れの留学生や若い先生たちを取りまとめ、日夜懸命に働いている姿を、目の当たりにしました。
それが「どれだけ英単語を覚えたか」と同じくらい、いやそれ以上に貴重な経験だと感じました。
そんな話を小学6年生の息子とできるのが得難い機会でした。
キャンパス 兼 宿泊先は、ビジネス街のホテル。
自動車やカラオケの騒音が窓から聞こえる亜熱帯の街で、東京と仕事を続ける"ちょっとした駐在"のような日々でした。
その合間に、子どもと一緒に現地の孤児院を慰問したり、水族館やプールに出かけたりと、教室の外にあるリアルなセブの暮らしも肌で感じることができました。
■ロンドンの大学キャンパスで過ごすという贅沢
そして中学生となった今年、行き先はロンドンに。
息子は地元の区立中に通いながら、近所の友達と遊ぶことを何よりも楽しむ"市井の子"です。
でも、だからこそ限られた時間の中で、異なる文化に触れる機会を作りたい、そう考えての選択でした。
- 10時間を超えるフライトに耐えられる年齢になったこと
- 世界から集まる多様な国籍の留学生を受け入れていること
- そしてわたしの仕事の中心地であること
これら3つの条件が揃い、「今こそロンドン」となりました。
今回のロンドン留学の素晴らしさは、語学留学でありながら、数百年の歴史を持つ大学のキャンパスと寄宿舎で過ごせるという、他にない環境にありました。
WhatsAppで授業連絡が届き、デビットカードで買い物や電車利用が可能で、親子間のコミュニケーションもLINEやメッセージで気軽にできる。
まさに現代の利便性にも満ちた留学でもありました。
事前の説明資料もわかりやすく、1週間のスクーリングもスムーズ。
学校が終わってから見せてくれたノートには、「日本の寿司」をテーマにした和やかなグループワークの記録が。
バインダーには、初心者向けクラスの卒業証書も挟まれていました。
わずか一週間のスパルタでいきなり英語がベラベラに、といった奇跡はありませんでしたが、牧歌的で微笑ましかったです。
■そして、現実に帰る時
英語は少しずつ上達しているものの、習得への道のりはまだ長いと知るのは、息子自身。
「来年の夏はどこに行こうか」「いや行かない」という親子問答もまだ続きそうです。
なにはともあれ、夏の終盤になって、中学校から出された大量の宿題に青ざめ、私に叱られながら、友達の助けも借りて、ギリギリで提出物を完成。
8月31日の日曜日、無事に長い夏の幕が閉じたのでした。
......そして思い出すと怖い、イギリス滞在中のトラブルの話は次回。