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"近所の人"で生き延びたロンドン生活:eSIM・Wi-Fi難民とホテル予約ミス

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「英語はまだビギナー。でも、世界を見せたくて。」シリーズ第三弾 前回はこちら

英語が流暢でなくても、世界のいろいろな街でなぜか、現地在住と思われがちです。かつてニューヨークのタクシーで、わざわざ否定したがために観光客だと足元を見られて、派手にぼったくられた経験から、今では謎の地元感で切り抜ける術を身に着けました。

今回もロンドンで、肝を冷やしたトラブルに出会い、わが家の新たな夏の怪談が生まれました。

■息子は切り抜けた、お金と通信の入口

昨年のシドニーでは、息子をホストファミリー宅に迎えに行く前日に、自分のクレジットカードが利用制限枠にひっかかり使えなくなる、という初歩的なトラブルが発生。眠れぬ夜を過ごしました。

何とか2枚目のクレジットカードで急場をしのぎ、ようやく息子を連れてホテルに帰着。

しかし、ほっとしたのも束の間、息子がレンタルの携帯電話を無くしていた!という、ドタバタがありました。
(詳しくはこちら

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さて、1年前よりも賢くなっているはず、のわたしたち。
13歳となりティーンの仲間入りをした息子は、自分のiPhoneを持参。もはや海外のレンタル携帯は不要です。

お金については、このために開設したソニー銀行のデビットカードを持たせました。ロンドンでは、買い物も交通機関もこれ1枚で万全でした。

しかし、息子はサマースクール終了後の移動時に、デビットカードをまんまと紛失
しばらく探しても見つからず、即日停止手続きをして事なきを得ました。



■eSIMは便利...なはずだった

今年は、わたしも息子も、それぞれのiPhoneにeSIMをインストール。
SIMカードの差し替え不要、ルーターも不要で、料金も安いと、まさに"良いことづくめ"、のはずでした。

私の個人iPhoneには生成AIで調べたユーロ圏キャリアの無制限プラン、会社用と息子には日本のキャリアの5GBプランを設定。

ロンドン到着直後にヒースロー空港で3台すべてをeSIMオンにし、「よし、万全!」。子どもを学校のお迎えスタッフに引き渡し、わたしはひとりになりました。


今回はホテルまで電車移動を選択。地下鉄ルートで目的地へ向かいました。

しかし、手持ちのiPhone2台がなぜかネットワークに接続できない。
命綱が切れたような、不安を覚えました。


地下鉄内では地図アプリがかろうじて使えたので、方向だけは把握できましたが、

トラファルガー広場近くのCharing Cross駅でいよいよネットワークが全に切断


IMG_5164.jpg

仕方なく、駅前のタクシー運転手に住所を伝え、徒歩圏内にもかかわらず車で案内してもらうことに。

やむを得ない必要経費です。

黒光りする大型タクシーの運転手は親切で、不安がるわたしをドアの前まで送り届けてくれました。


■そして、予約されていなかったホテル


ちなみに宿泊先は、使い慣れた旅行手配サイトで数か月前に予約しました。
子どもが寮生活中、洗濯もできるアパートメントに11日間滞在の予定。その後は合流して、リゾートホテルに宿泊というプランです。

しかし、アパートメントへのチェックインを目前にし、

  • 建物に宿泊施設の案内は一切ない。
  • ブザーを押しても無反応。
  • 1階の中華料理店に聞いても「知らない」の一点張り。

という状況に遭遇。

頭が真っ白になりました。


ホテルに連絡できない。
Wi-Fiもない。
バッテリーも切れそう。
もう夜8時。

IMG_5042.jpg

ロンドンのど真ん中で、絶望、絶句しました。


どうしよう、野宿......ってどうやってやるんだろう......。

いろいろな思いが頭の中を駆け巡り、うつろに目線を動かすと、出前待ちのUber Eats風の配達員が視界に入りました。

そうだ。スマートフォンでリアルタイムに出前を受けている配達員が持っているのは、Wi-Fiです。

ひらめいたわたしは、そのお兄さんに

「すみません、Wi-Fiを貸していただけませんか」

と声をかけ、iPhoneの設定画面を見せると、彼は無言でパスワードを入力してくれました。

ネットワーク接続成功。
神降臨です。


しかし、それからが本当の混乱の始まりでした。

領収書に記載のあった番号に電話して状況を確認したところ、支払いも済ませてあるホテルは、予約ができていなかった。

空いているのは徒歩圏内の別の物件のみ
となっていることが発覚。

もはやどこであっても、宿を確保するのが先決。

Uber Eats風のお兄さんの腕をつかみ懇願してWi-Fi接続をキープしたまま、アプリ操作、クレジットカード手続きを終えて、なんとかホテル予約は完了。

だがそのホテルは、どこにあるか、わからない。

そこで、また見知らぬ人に声をかけてWi-Fiを借り、切れてはまた別の人にWi-Fiを借り、指定の住所に到着。

ドアの開け方をなんとかマスターして、ようやく入室できたときには、心身ともにぐったりでした。

後になってメールボックスを検索して理解しましたが、チェックイン1か月前の予約確認メールに、仕組の説明がありました。

冒頭のお客様情報、宿泊詳細、料金概要、領収書をスクロールした下の「重要事項」という箇条書きのなかに、チェックインには事前のデポジット支払いとリンク発行が必要という旨の説明が、文字化けを含む飛び飛びの表記で書いてありました。

hotels.com note.png
これは、スマホアプリ画面では探せず、わかりづらかった......。
何はともあれチェックインできたことに安堵して、泣きそうでした。


■もはや気にならない、洗濯機トラブル

こうして、ようやく入室できた宿は、会社にも近いにぎやかな繁華街の一角。

石畳の路地に面し、階上はアパートメント、階下はレストラン、階段で上り下りという典型的なロンドンの建物でした。

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トラファルガー広場にも大英博物館にも歩いていける中心地。
部屋はこぎれいで、設備に不足なく、キッチンもあり、しばらく暮らすにはぴったり。


適度に広いリビング、ベッドルームを占有でき、心穏やかに過ごせた......はずが、問題が一点。

洗濯機が壊れていました!

現地のスタッフに連絡して、修理員に来てもらいましたが、しばらくして「部品が足りない」と帰ってしまい、結局直らず。

これではアパートメントを借りた意味があまりないのですが、仕方なく、昔ながらのバスタブ手洗い

備え付けのヒーターと大型扇風機を総動員して、夜通しで衣類を乾かしました。




もはや無事に泊れただけでラッキーな気持ちになっているわたしには、大した問題にも思えませんでした。


■ ロンドン旅が教えてくれたこと

  • eSIMは便利、でも過信は禁物。
    キャリアと端末の組み合わせによって設定が微妙に異なり、サポート体制もまちまち。
    通話不可のデータ専用プランは、緊急時に電話が使えないリスクの認識を。

  • 生成AI情報は不確実、オフラインの備えを。
    生成AIの情報は二重三重に調べても「体験しないと本当のことは分からない」。
    また、ネットワークがない場合を考えて、旅程などの情報はオフラインでも保存が安全。

  • 宿の予約完了は確約ではない、連絡手段を確保。
    アパートメント型の宿では、別途デポジットの送金や、宿泊先との直接やり取りが必要な場合もある。
    アプリの予約完了を過信せず、現地で宿と連絡できる手段をもっておくこと。


まあ考えてみたら、旅先の想定外、を想定できていなかった、と学びになりました。

そして何があっても、地元然としていたら、周りは静かに受け止めてくれる、と改めて思いました。

通りすがりの人からWi-Fiを借り、バスタブで洗濯しながら、わたしの生活はロンドンの土地に馴染み、リズムが出来てきました。

この続きはまた。

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