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【4週連続短期集中シリーズ 1】GIGAスクール端末の活用はどの程度進んでいるか

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情報教育に関するさまざまな取り組みをされている望月陽一郎 先生に、2013年から教育現場の状況や先生のお考えについてインタビュー形式で伺っています。今回は「更新が近づくGIGAスクール端末の活用は進んでいるか」についてお聞きします。

【望月先生 プロフィール】

大分県立芸術文化短期大学非常勤講師。Forbes Japan電子版オフィシャルコラムニスト。公立中学校理科教諭(理科)・大分県教育センター指導主事(情報教育)などを経験されています。自作の「micro:bit『サンプルプログラミング集』」などをサイトにて公開されています。

望月陽一郎 個人サイト:http://mochizuki.net/

●GIGAスクール端末の教育現場での活用について

―2019年度から導入が始まったGIGAスクール端末ですが、来年度(2024年度)は早く導入した自治体で5年目を迎えます。活用は進んでいるのでしょうか。

望月先生:10年ほど前に勤めていた学校(30クラスの大規模校)では、

  • コンピュータ室 1室(Windowsデスクトップ端末 40台)
  • 授業用PC    数台(以前使っていた古い端末)
  • 実物投影機   理科室に2台
  • プロジェクター 古いものも含めて5,6台
  • 大型テレビ   理科室(3室)それぞれに1台(普通教室にはテレビなし)
  • 電子黒板    古いものが1台
  • iPad      10台

 という環境でした。

 今とは比較にならないほど機器が整備されていなかったですね。

―当時、望月先生から生徒が800人以上いるのにiPad10台しかないという現状を伺いました。

参照記事:望月陽一郎 先生によるICT機器の活用・啓発の取り組みhttps://blogs.itmedia.co.jp/kataoka/2013/08/ict-d348.html

―今回、望月先生が2022年末にGIGAスクール端末活用についてアンケート調査された結果を見せていただきました。「子供たちのGIGAスクール端末活用状況」についての回答を見ると、

  • 「毎時間使っている」     ・・・20.8%
  • 「一日のうち数時間使っている」・・・65.3%

となっており、何らかの形で毎日端末にふれている子供たちが8割以上もいることがわかります。

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「子供たちのGIGAスクール端末活用状況」(2022年末)

―あくまでも望月先生が調査した範囲での数値とのことですが、先程の10年前お聞きした環境と比較すると、授業というものが大きく変わったのではないかと思います。

―「子供たちの日頃の持ち帰り状況」についても、2021年調査との比較で大きく増加していると思います。

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「子供たちの日頃の持ち帰り状況」(2022年末)

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「子供たちの日頃の持ち帰り状況」(2021年)

「全員毎日持ち帰っている」
 ・2021年・・・21.0%

      ↓
 ・2022年・・・38.2%

これは、前年度と比較して学校での活用が進んできたということなのでしょうか?

望月先生:比較する際、回答者がすべて同じ人ではないという前提がありますが、全体として、持ち帰りが進んでいるということはわかります。

アンケートに回答している先生方は、日頃から活用している先生が多いと考えられますので、日頃の授業での活用が進むと持ち帰りも進んでいくのではないのでしょうか

―そうですね。GIGAスクール端末の活用が確実に進んでいることがアンケート結果から読み取れます。アンケートに回答している先生方以外のクラスでも日常の授業で子供たちの活用は進んでいるのでしょうか。

望月先生:残念ながらそうとはいえないようです。
アンケートでは記述による回答もしてもらっていますが、その記述を読むと、まだまだ活用の偏りや、活用がなかなか進まない様子が見られ、いわゆる「二極化」が以前より進んでいるように思います。

GIGAスクール端末が早く導入された自治体ではそろそろ更新の話も出ているのですが、まだ活用が始まるかどうかという段階の学校・自治体もあるようです。そうなると、すでに子供たちに影響がでていますよね。

―そういえば、先日のニュースでこの4月に行われた「全国学力・学習状況調査」で、端末を使って回答した、中学校外国語「話すこと」に関する調査結果が話題になっていましたね。

参照記事:全国学力テスト 英語で意見表明、正答率わずか4% 「使える英語」に課題
https://www.iza.ne.jp/article/20230731-BMYC3SD46FJMXI5OYFX5UFMHOE/

―端末・ネットを使った調査だったとのことですが、スムーズに進んだのでしょうか。

望月先生:時事通信社の記事によると、うまく話した音声が記録されたのは90%となっており、0.7%(約6600人)は記録できていなかった(ということは採点されなかったのではないか)ということです。

参照記事:6600人が解答登録できず 初オンラインの英語「話す」 学力テスト
https://www.jiji.com/jc/article?k=2023073100770&g=soc

一度に行うとネットワークに負荷がかかる心配があるということで、一ヶ月くらいに分けて実施したようですが、それでもトラブル0とはならなかったようです。また、先生方にきいてみると、送られてきたヘッドセットについて、周りの声が聞こえたり不具合があったりというトラブルがあったようです。

―調査の問題が難しすぎたのではないかという声もありましたが、システムや周辺機器なども結果に影響しているかもしれませんね。

望月先生:影響はわずかかもしれませんが、なかったとはいえません。
 日頃から英語の授業で活用することを考えても、次回更新では、ヘッドセット・キーボードなど周辺機器も含めて仕様が示される必要があると思います。

―今回は、アンケートによる調査結果をもとに、色々なお話をしてくださり大変ありがとうございました。望月先生のお話がこの記事を読んでくださった皆様の参考になることを願っています。望月先生、読んでくださった皆様、改めてありがとうございました。

>>「【4週連続短期集中シリーズ 2】ChatGPT等、生成AIの学校における活用について(前編)」につづく(2023年8月28日 公開予定)

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