リブート第21回「英語教室(English Classroom)の設置とICT活用」
教育現場のICT活用について伺いました(2017/05/01初公開分をリブート)
リブートシリーズ・・・2013年から不定期で掲載してきた「教育・授業・ICTに関するインタビューシリーズ」を、今に合わせて「再構成」していく企画です。
この春まで中学校で教諭をされておられた望月陽一郎 先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。
【望月陽一郎先生・略歴】
元中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経験されています。
前回(リブート第20回目)では、「板書と教材提示」について望月先生にお尋ねしました。先生方のICT活用指導力にも関係するからです。
板書とICT機器による提示を組み合わせることによって「簡潔で見やすく」できる点、「記録として振り返りができる」点、「効率的(スムーズ)な授業を設計することも、『授業づくり』といえる」点、等をお話しくださいました。
今回(第21回目)は、望月先生が取り組まれている(2017年当時)
- 英語教室にみられる特別教室のメリット
- 特別教室におけるICTの活用
についてお聞きしました。
◯「英語教室」について
望月先生:今年度(2017年当時)特別教室をつくりたいと年度当初に提案がありました。特別教室にすることで教科に特化した設備や掲示などのメリットがあります。そこで私も
- iPad
- 新しく配備されたWindowsノートパソコン
などを授業で使えるように準備しました。
中学校は教科担任制です。子供たちは理科・音楽・美術・保健体育・技術・家庭それぞれの授業を、普通教室から特別教室に移動して受けています。英語も特別教室で受けると、普通教室で授業を受けるのは、国語・社会・数学だけとなります。普通教室へのICT機器常設がいわれていますが、半分以上普通教室にはいないのです。
-「半分以上普通教室にはいない」という点が気になりました。私が中学生・高校生の時は教室で英語を習いました。時々、リスニングの練習で録音機器がある視聴覚室で英語の授業を受けた経験はありましたが、今は英語科の専用の教室があるのが普通なのでしょうか。
望月先生:あまり聞きませんが、あってもおかしくはないと思います。
-私の学生時代は体育や家庭科、芸術系の授業を専門の教室で受講しました。今は大半が特別教室で行われているのですね。驚きました。
◯特別教室でのICT機器の活用の工夫について
-特別教室を設置するメリットはどこにあるのでしょうか?
望月先生:特別教室だと専用の設備(理科室では実験器具など)を置くことができるため、時間的な余裕ができ、リフレクションシートによる振り返りもさらに広げることができると私は考えています。
-リフレクションシート(子どもたちによる授業のふり返り)を活用する時間が確保できるのはいいですね! ICT機器(プロジェクター・iPad・ノートパソコンなど)は、どのように設置されたのですか?
望月先生:ICT機器を活用しやすくするため次のように設置するとよいですね。
- 常設のスクリーン
- プロジェクターを置く専用机
- 延長タップケーブル
- プロジェクター+HDMIケーブル(音声も流すため)
- iPad+有線アダプタ
- ノートPC(Win10+Office2016 無線LANでインターネット(教育用フィルタリングつき)につながる)
- Bluetoothマウス(PCのそばにいなくても操作できる)
-個人的には、プロジェクター+HDMIケーブル(音声も流すため)が特に気になりました。
[補足]HDMIケーブルについて、Amazonの解説を引用させていただきますね。
HDMIケーブルとは、パソコンやレコーダー、ビデオカメラなどのデジタル家電の映像と音声をデジタルテレビに送るためのケーブルである。劣化しにくいデジタル信号を用いているため、高解像度の映像もゆがみ無くにじみ無く伝送することができる。またHDMIケーブルは音声の転送に対応した機器同士を接続した場合、映像と音声を1本のケーブルでまとめて送ることができる。
より引用
望月先生:HDMIケーブルやBluetoothマウスをうまく使うことで、ノートパソコンをCDプレイヤーとしても使えると思います。できるだけ使う機器をまとめてしまう(数を減らす)ことが、スムーズに授業をすすめるポイントですね。
-CDプレイヤー代わりにできる、というのがいいですね! 「Bluetoothマウス(PCのそばにいなくても操作できる)」も注目しました。Bluetoothマウスを使う理由は他にもありますか。
望月先生:映像を転送するのでなく「操作を転送できる」ことですね。
-そこがポイントなのですね。「操作を転送する」とは具体的にはどういうことなのでしょうか。
望月先生:プロジェクターにHDMIケーブルでつながっているノートパソコンだと、そばに行かないと操作できないので、授業中の先生の「動きを制限」してしまいます。プロジェクターに映像を無線転送する方法もありますが、無線が使えない場合、Bluetooth無線でつながるマウスであればそばに行かなくても操作できます。そうすることで限られた授業の時間を効率的に使うことが可能になります。
また、教室内のどこからでも操作できるということは、子供たちの間をまわりながらでも、スクリーンに映し出された画面を操作できますね。
◯今後の展開について
-もしもっと予算が使えるとしたら、さらにやってみたいことはありますか?
望月先生:プロジェクターにノートパソコンの映像を無線転送できると、さらに教室内の自由度がさらに増すと思います。投影が有線だとどうしてもそばに置かないといけません。特別教室は面積が広い場合が多いので、室内での無線接続は大いにメリットがあります。
-特別教室にICT機器を設置する際に、意識した方が良い点がありましたら教えてください。
望月先生:中学校などでは、このように普通教室だけで授業するわけではないので、普通教室に集中して常設機器を整備してもあまり意味がないことを、整備する側に知ってもらう必要があります。
-こういった実践から出て来る情報を先生同士で交換するとよいですね。
おわりに
今回は特別教室でICT機器を活用しやすくするための工夫についてお話を伺いました。これから特別教室向けの機器設置がどんどん進んでいくとよいですね。今回の事例が多くの先生方の参考になればと思いました。
なお、私が中学生だった頃(1990年頃)はまだOSがDOS-VもしくはWindows3.xくらいのバージョンを使うのが一般的な時代でした。中学校の教室で英語を学ぶ際は教科書の内容を収録したCD・カセットテープを聞きながら発音したり、ビートルズやマイケル・ジャクソンの歌を聞きながら洋楽を歌ったりしていたと思います。
現在はPCやタブレットを使ってインターネットに接続したり、カメラ機能を活用して掲示の工夫をしたり、語学学習用のアプリを活用して外国語の発音練習をしたり、多様な授業を行えるようになりました。
語学習得にICT機器を活用することによって、生徒・児童の理解度や個人のペースに合わせてカスタマイズできるようになったメリットがより多くなったように見受けられました。望月先生のお話から通信機器が教育に与えた影響をあらためて実感いたしました。
ご多忙な中、インタビューにお答えくださった望月先生、記事を読んでくださった皆さまに感謝の気持ちでいっぱいです。今回も大変ありがとうございました。
>>リブート22回(リブートシリーズ最終回)「子供たちが使う「学習者用デジタル教科書」の機能とは」(6月15日公開予定)につづく
Reboot Produced by Yoichiro Mochizuki
参考記事
先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。