オルタナティブ・ブログ > 教育ICT研究室 >

グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

リブート第11回「教育現場における『タブレットのグループ活用』編 ~望月陽一郎先生のお話より~」

»

現役の先生に教育現場のICT活用について伺いました(2015/2/20初公開分をリブート)

リブートシリーズ・・・2013年から不定期で掲載してきた「教育・授業・ICTに関するインタビューシリーズ」を、今に合わせて「再構成」していく企画です。


中学校で教諭をされておられる望月陽一郎 先生に教育とICTを学校現場でどのように実践されてきたのか、お話を伺っています。

【望月陽一郎先生・略歴】
大分市中学校教諭(理科担当)。大分県教育センター情報教育推進担当主事、指導主事、大分県主幹等を経て、現職。


【ご挨拶】

新年あけましておめでとうございます。いよいよ2018年になりました。みなさま、いかがお過ごしでしょうか。

望月先生に取材している本連載(教育現場におけるICT活用)は、2013年6月から始まりました。今年の6月で満5年です。ここまで続けることができましたのが、望月先生のご厚意と読者の皆様のおかげです。みなさまに感謝の気持ちでいっぱいです。2018年も引き続きよろしくお願いいたします。

【前回の概要】

前回(リブート第10回目)は、望月先生が勤めている中学校で、タブレットをどのように活用しているのか、「指導者用のタブレット」という切り口でお話を伺いました。提示の工夫の実践例を、4つの観点から説明していただきました。

  1. なぜ「指導者の提示用タブレット」からなのか。
  2. なぜ「大型テレビ」あるいは「プロジェクター」の常設なのか。
  3. 提示用はタブレットがよいのか。
  4. どんな提示教材を使っているのか。

例えば、生徒達が二人一組でタブレットを使う場合と、五人一組でタブレットを使う場合では、違った提示の工夫が必要になるのではないかと考えています。

指導者用タブレットのお話に引き続き、今回はグループでタブレットを活用するときに工夫・注意したことについてお聴きしたいと思います。

〇「一人一台」に向けて

-タブレット活用において、「一人一台」をめざす動きがあるようですね(2015年当時)。教育現場の状況は、いかがでしょうか?

望月先生:「教育の情報化」に向けて、2020年までには、子どもたちに「一人一台」端末を持たせるとの話が出ています(2015年当時)。最近よく聞かれる「ICT教育」も、情報リテラシーを身につけさせるアプローチの方法のひとつといえますね。

私は、まだ「一人一台」整備が先の話(学校現場では、指導者用タブレットの整備もまだ見通しがみえない)なので、それまでにいろいろな使い方のポイントを見出しておきたいと思っています。

-なるほど。学校現場では、指導者用タブレットの整備もまだ見通しがみえない状況なのですね。「それまでにいろいろな使い方のポイントを見出しておきたい」という部分について、詳しくお訊かせいただけますか。

〇グループ一台活用

望月先生:「一人一台」を試してみるだけのタブレットがないため(学校には10台のiPadのみ)、DiTT(デジタル教材教科書協議会)からiPad・MicrosoftさんからSurfaceを貸していただいて「グループ一台活用」から始めました。

▼デジタル教材教科書協議会 http://ditt.jp/

-前回、お話しいただいた取組ですね。

リブート第10回「教育現場における『提示の工夫』 指導者の提示用タブレット・編 ~望月陽一郎先生のお話より~」

望月先生:はい、それ以前から100均の「ミニホワイトボード」をグループ活用したり、そのホワイトボードを指導者タブレットで投影して共有したりしていたので、「グループ一台活用」も子どもたちは、スムーズに受け入れてくれました。このように段階を踏むことが導入しやすくするコツかもしれませんね。

また、使ってみて、iPadでもSurfaceでも、活動で使う分にはあまり変わりないこともわかりました。それよりも「使う場面」の設定、授業設計の方が大切です。

-iPadでもSurfaceでもあまり変わりないという点、興味深いです。「使う場面」の設定、授業設計の方が大切というお話、その通りだと思います。

〇「二人一台」構想をやめた理由

-生徒用のタブレットを何人一組で利用したらよいのか、迷われている先生方は多いのではないかと思います。

望月先生:その後、NECさんからも貸与いただいたので、30人のクラスで「二人一台」15台の活用が可能になりました。ただ、どう使うか・どんな活動の様子になるか授業をイメージしていったとき、15ペアの中を自分が一人で動き回らなければならないことに気づいたのです。

-先生が一人なのに、15ペアでは、大変ですね。

望月先生:中学校では教科担任制で複数のクラス、私の場合5クラス、75ペアそれぞれに合わせた指導・配慮が必要になります。授業は教科の目標を達成することがメインであり、タブレットの使い方を教えることがメインではありませんから、そこに時間が取られては本末転倒になりますね。

-そうですね。授業は教科の目標を達成することがメインだと思います。ICT支援員さんや補助の先生がつけば、操作がわからない生徒に説明してもらって、先生は授業を進められますが、一人だと確かに難しいですよね。

〇そこで「グループ二台活用」をしてみて

-クラスや環境によって、タブレットの操作が得意な生徒・不得意な生徒が出てくると思います。先生の人数が足りない中で授業を進めるとなると、それなりの準備と工夫が必要になるのではないかと思います。望月先生は、どのようにされてきましたか。

望月先生:発想を変え、「グループ一台活用」→「グループ二台活用」をすることにして、子どもたちにもそのねらいを説明しました。

-「グループ二台活用」ですか。なるほど。

望月先生:これだと、画面が見やすくなります(グループ一台だと画面が小さいし、見る向きが限られる)。また、わからないときはグループの中で教えてもらうこともできやすい(二人で考えるのではなく、グループで相談することができる)。

また、指導する側からは、グループ(私の場合、6グループ)の間を動くことになるので、「グループ一台活用」の時と変わらないことになります。

-それでしたら、先生の目が行き届きやすいですね。

望月先生:こういう考え方を積み重ねていくと、「一人一台」でも「グループ単位で活動」していくことで、子どもたちも指導者側も負担は増えず、授業の目標により近づきやすくなるのではないかと思います。

-私は「生徒何人に対して、タブレットを配布するのがよいのか」と考えていました。しかし、「グループで●●台」というアイデアをうかがうと目から鱗ですね。

グループ活動を単位にするという工夫だけでも、ずいぶん授業がやりやすくなるのですね。様々な視点を持つ大切さを感じました。

望月先生:今回は(2015年当時)、理科の実験データをExcelでグラフ化して、そこに見られる特徴について話し合わせました。グループの中で使い方がわからない子どもが他の子どもにきいている姿、二人で話し合いながら画面のグラフを見る姿などが見られました。

-想定していた「グループ二台活用」のよさが見られたということですね。お忙しい中、望月先生には現場の実践に基づくお話をしていただき、大変ありがとうございました。読者の皆さまの実践に、この記事が役立つことを願っています。

片岡による補足

文部科学省は「2020年に全学校で情報端末1人1台」という案を掲げていました。教育現場での推進状況を「マイクロソフト教育ICTリサーチ2016」で確認したところ、

■現状調査で 1%、目標調査で4%という結果に
今回の調査では共有端末ステージへの移行が目立つ形となり、1人1台端末は現状調査で1%、目標調査で4%という結果になりました。入学時に端末の購入を義務づけるBYOD事例などを注視しながら、1人1台端末化に向けて今後も検討を進める必要があります。

私立では1割近い法人が導入を検討

一方、私立では目標調査において1割に近い9%の法人が1人1台端末の導入を検討していることが分かりました。私立において1人1台端末化が進む背景には、入学者人口が減少する中で、他学園との差別化を図り、競争力を高める狙いもあると考えられます。
※「マイクロソフト教育ICTリサーチ2016」 P,10より引用

と記載されていました。

現時点では、「1人1台端末化」できている学校が私立で1割弱(できていない学校が約9割)とのことですので、タブレット等の情報端末を「複数人で共有する活用方法」をいろいろと共有し、現場で実践していく必要性を感じた次第でした。

本記事で紹介した望月先生の「タブレットのグループ二台活用」のアイデアがみなさまのご参考になりますように。様々な現場で活用されることを願っています。

>>リブート第12回「理科の実験におけるICT機器の活用術 -中学校教諭・望月陽一郎先生のお話より-」(1月15日公開予定)に続く

Reboot Produced by Yoichiro Mochizuki

参考記事

先導先生 - DiTT(デジタル教科書教材協議会)
※望月先生の45の取組みが紹介されています。

Comment(0)