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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

【改訂版】子どもはなぜ不登校になるのか -キャリアカウンセラー・荒尾俊樹さんに伺いました-

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教育ICT研究室のアクセスランキング年間1位(2015年)に輝いたのが荒尾俊樹さん(キャリアカウンセラー)にインタビューした不登校関係の連載でした。

荒尾さんは不登校児の支援もされているキャリアカウンセラーです。お子さんの不登校の問題でお悩みがある方が多数、教育ICT研究室の荒尾さんの記事をご覧くださいました。

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筆者 :荒尾 俊樹 キャリアカウンセラー 
NPOの職員として発達障害や不登校の支援に携わっている。

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「親と子の関係」についてのインタビューは、特に反響が大きかったです。「親として子どもにどう関わるか」について、お悩みの方が多いと言うことなのでしょうか。

今回は支援者の立場からの解説的な内容として、書き下ろしをしてくださいました。今後、数回に分けて、以下のテーマでご解説くださいます。

【今後、紹介するテーマ(予定)】

  1. 不登校とは
  2. 親子関係から見る不登校
  3. 不登校と発達障害

以下、荒尾さんによる解説です。

【不登校とは】

不登校とは学校に「行かない」「行けない」状態のことです。

文部科学省の統計では年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いたものと定義されています。

この数には、保健室登校や別室登校、学校が出席として認めているフリースクールに通う子どもなどは含まれていません。

不登校の数は1970年代から増え続け、少子化が進む現在においても高い数で推移しています。

子どもはなぜ不登校になるのかについては、様々な調査研究が行われており、要因として挙げられる項目としては、いじめ、先生との関係、勉強、クラブや部活動、入学・転校・進級などがあります。しかし誰を対象とした調査なのかによって統計結果が大きく違うことがあります。

近年の興味深いデータとしては、学校側が回答した「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」と、不登校経験者本人が回答した「不登校生徒に関する追跡調査報告書」の比較があります。

不登校の原因として「教職員との関係」と答えた割合が学校側の回答より本人の回答の方が約16倍も多いというの統計比較です。

子どもが不登校になる理由は様々で、要因を特定することは簡単なことではありません。

しかし対応を考える上では、その理由を考えることは重要になります。

ここでは不登校の理由を2つの大きな視点に分けて、その対応を考えてみたいと思います。

  1. 疲労・ストレス
  2. 学校が合わない

1.疲労・ストレス 主な対応方法

・休む(罪悪感を覚えることなく)

疲労やストレスが溜まっているのであれば、まずは休むことが重要になります。ただし休んでいることを悪いことと捉えてしまっていると、上手く休息することが難しくなるため、本人が休むことに対して罪悪感を覚えなくても良いように配慮する必要があります。

会社員が年次休暇を取るように、子どもにも、年間20日から30日程度、理由がなくても学校を休める枠組みを、あらかじめ作っておいた方が良いという専門家の意見もあります。

・ストレスが溜まりにくい環境づくり

疲労やストレスが溜まりやすい環境があるのであれば、その環境を変える必要があります。

宿題の量が多いのであれば量を減らす、行事の練習などが続いている場合には負担にならないよう調整する、対人関係でのトラブル(特にいじめなど)があるのであれば、問題がエスカレートしないように介入するなどです。

2.学校が合わない 主な対応方法

・学校外の学び成長の場の確保

学校が合わないとは、感覚の過敏がある、集団における不安・緊張が強い、行く意味を見い出せない、一度学校で受けたショックが強いなど様々です。

そもそも全ての子どもが学校に馴染めるわけではありません。学校が合わないのであれば、学校外の学び成長の場を確保する、というのはとても合理的な考え方に思えます。

学校外の学び成長の場としては主に下記のような機関があります。

  • フリースクール
  • 適応指導教室(教育支援センター)
  • 塾や習い事などの民間機関
  • 放課後等デイサービス ※発達障害などがある場合

これらの機関を利用するときには、

  1. 本人のエネルギーが回復しているか
  2. 本人に利用する意思があるかどうか

この2点を慎重に見極めることが大切になります。

・家庭で安心して過ごす

学校で受けたショックが大きい場合は、しばらく外に出られないこともあります。

不登校の子どもが通える機関は、一昔前よりは増えてきてはいますが、それでも不登校の子どもたちの多くは、日常の大半を家庭で過ごしています。

家庭以外に出かけられる場所が限られている不登校の子どもにとっては、家庭が安心して過ごせる場所になることは非常に大きな意味を持ちます。

>>「2.親子関係から見る不登校」につづく

謝辞

このたび、荒尾さんから「掲載データを最新のものに置き換えたい」とご連絡をいただき、新規記事として改訂版を公開する運びとなりました。書き下ろしをしてくださった荒尾さん、および読んで下さった読者の皆様にお礼を申し上げます。

編集履歴:2016.2.14 15:45 片岡の担当部分の本文に以下の文章を追加。「荒尾さんは不登校児の支援もされている(中略)ご覧くださいました。」「「親と子の関係」についての(中略)にお悩みの方が多いと言うことなのでしょうか。」「今後、数回に分けて(以下略)」から黒墨カッコの部分。謝辞の「書き下ろしをしてくださった(以下略)」の一文を追加。本文から以下の部分を削除。「以前(2012年)に公開した記事(「子どもはなぜ不登校になるのか -その道のプロ・荒尾俊樹さんに伺いました-」)はインタビュー形式でした。」同日 22:25 「不登校の問題でお悩みの方が数多く、」→「お子さんの不登校の問題でお悩みがある方が多数、」、「「親として子どもにどう関わるか」に」のあとに「ついて」を追加。同日 22:49 「以下、荒尾さんによる解説です。」を本文に追加。

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