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グローバル化する中で日本人はどのようにサバイバルすればよいのか。子ども×ICT教育×発達心理をキーワードに考えます。

視覚認知バランサー:児童・生徒の「学習の困り感」を発見 問題改善を目指す教育ソフト

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1.問題提起

視覚認知バランサーは、外見からだけではわかりにくい児童・生徒の「学習の困り感」の発見と、問題改善を目的とした教育用ソフトウェアです。かわばた眼科の川端秀仁先生が、工学院大学の長嶋研究室と協力して、「視覚不良に起因する学習障害診断」のためのソフトウェアを試作開発したものをもとに、レデックス社が開発したソフトウェアです。

▼パソコン版:視覚認知バランサー(http://www.ledex.co.jp/products/vb001)

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「視覚不良に起因する学習障害」や「学習の困り感」とは、どのようなことでしょうか。文部科学省は、「学習障害(LD)の定義 <Learning Disabilities>」で、以下のように説明しています。

(平成11年7月の「学習障害児に対する指導について(報告)」より抜粋)

 学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。  学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

※文部科学省 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05120801/s004.htm より引用

川端先生は医師の立場から、解説動画で目・視覚と学習に関係があることを説明されています。

外部の情報の80パーセント以上は「視覚」から獲得されるそうです。そして、視覚に関わる機能は目だけでなく、脳の働きと関連があるそうです。学習面の困難には、視覚が関わっていることがわかります。

注:鹿児島大学教育学部の片岡美華先生は、「発達障害のある学生への理解と支援」で大学生の困り感について解説されています。大学生には、小学生に通う子供たちとは違った困り感があるようです。http://www.saga-u.ac.jp/somu/kouen2011-1.pdf をご参照ください。  

この記事は、視覚認知バランサーの使用感を紹介することを目的にしています。すでにICT教育ニュース等で、かわばた眼科の川端先生が監修した教育ソフト、等の報道はされていますが、実際に使ってみた人の詳細レビューは、現時点でまだないからです。

私のパソコンの講座に、過去、学習障害の児童・生徒が数名参加していました。目のトレーニングができる教育ゲームで遊んでから、ワードの操作や勉強に関することを行うと、生徒さんの負担を減らすことができました。軽い場合も含めて、文字の見え方に困られている方が多かったです。

学習障害まで行かないが、学習の困り感があるお子さんがいらっしゃるのではないかと思います。そこで、視覚認知バランサーを丁寧にレビューすることにしました。

2. ゲーム感覚で取り組める16のプログラム

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視覚認知バランサーには、16のプログラムがあります。パズルや迷路などがあり、ゲーム感覚で愉しむことができます。

  1. へんかでタッチ
  2. ずけいきおく
  3. おなじかたち
  4. せんをのばすと?
  5. パターンパネル
  6. ごうけいのマス
  7. パネルきおく
  8. かけたピース
  9. なかまはずれ
  10. ボールめいろ
  11. ファイアーパニック
  12. おなじところは?
  13. からまりずけい
  14. カードがえし
  15. ペアをさがせ
  16. ねずみとねこ

例:へんかでタッチ

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注意:パソコンの音声をオフにしていると、「ひよこのアイちゃん」の説明が聞こえません。難易度が格段に上がりますので、音声をオンにしておくことをオススメします。

私はスピーカーを外した状態で「へんかでタッチ」を始めたため、顔をクリックしないといけないのか、画面ならどこでもクリックして良いのかわからず、自ら難易度をあげてしまいました。

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スピーカーを付けて説明を聞いたところ、正解は「画面に表示された赤い○の中ならば、どこをクリックしても良い」でした。ご注意くださいね。

3.視覚認知バランサーの脳トレが楽しくなる理由

視覚認知バランサーを使ってみて気がついたのは、お子さん達が飽きないような工夫を凝らしていることでした。私が気がついた点をご紹介しますね。

その1:解説書を読まなくても、いきなりプログラムに取り組めたから

このソフトにはれんしゅうステージがあります。まず、マスコットキャラ「ひよこのアイちゃん」が、女性の声で遊び方を説明してくれます。その後、得点とは関係ない練習が挟まれているので、やり方を理解してからゲーム本番に参加できます。

その2:ポイントがたまると、新しいプログラムが始められるから

各プログラムを終了するたびに、成績に応じたポイントが加算されます。ポイントが一定数たまるたびに、メインメニューで?だった部分に色がつき、新しいプログラムで遊べるようになります。早く新しいゲームで遊びたい! という子供たちの欲求をかき立てそうですね。

その3:自動レベル調整があるから

ソフトに自動レベル設定があるので、自分の成長に合わせて各プログラムに取り組むことができます。個別設定機能があるので、ポイントが足りなくても最初から全タスクを利用する事ができます。お子さんの状態・状況に応じて、設定を変えると良いのではないでしょうか。

その4:過去の成績に応じた「ほめ・はげまし」メッセージをしてくれるから

「ひよこのアイちゃん」が、プログラムの合間合間に、優しい女性の声でほめたり、はげましたりしてくれます。視覚認知バランサーは、一気に取り組もうとするよりも、地道にこつこつ続けた方が効果が出るソフトです。

褒められて伸びるタイプのお子さんに良いのではないでしょうか。なお、適度な「ほめ・はげましメッセージ」を言ってくれるので、過剰にほめるわけではありません。

その5:視覚認知の5領域をレダーチャートで表示するから

グラフを見れば、何が得意か、何が不得意か、が一目瞭然です。なにかが突出しているタイプなのか、それともバランス良くできるタイプなのかもわかりやすい点がよいと感じています。

自分がどんな個性がある人なのか、さらにトレーニングをするにつれて成長していることかわかるので、やる気が出ますよ。

その6:キャラクターが取り組み課題を自動的に選択する、隠し機能がある

どれにしようかパソコンの前で悩んでいましたら、「ひよこのアイちゃん」が「私が●●をオススメするね」という類いのセリフを言って、「へんかでタッチ」の画面に切り替わりました。

最初にやり方がわからず、得点が低かったプログラムが選ばれたのです。ちゃんとユーザの得意・不得意を踏まえて、オススメしている点が良かったです。わざと「ひよこのアイちゃん」が声を掛けるまで待つ、という作戦もありかもしれませんね。

>>「児童・生徒が抱える「学習の困り感」を発見・改善するために "視覚認知バランサー"詳細レビューに続く

今回、紹介したソフト

▼パソコン版ソフトウェア

視覚認知バランサー (レデックス 株式会社)
http://www.ledex.co.jp/products/vb001

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編集履歴:2015.3.13 12:19 iPad版の情報を追加しました。2016.12.12 15:27 「関連記事:」→「【関連記事】」(段落改行を箇条書き)に修正。

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