組織で気持よく働くコツは漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学べ
はじめに
今回は漫画『ガラスの仮面』シリーズのスピンオフとして速水真澄の義父・速水英介会長に焦点をあててみたいと思います。この記事の主役は大都グループ会長の速水英介です。本編とは違い、速水英介の語録の中からビジネスに役立つものをピックアップしました。
『ガラスの仮面』のあらすじはWikipediaのものが一番わかりやすいのでオススメです。
参考:ガラスの仮面 (Wikipedia)
※以下のページの「あらすじ」の項目をご参照下さい。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%81%AE%E4%BB%AE%E9%9D%A2
速水真澄の「女優は商品」という発言のルーツは義父・速水英介。彼は価値があるかどうかで人を判断し、扱いを変える人物です。
しかし、よくよく漫画『ガラスの仮面』を読んでみると人間観察力のある人物であることがわかります。複数の企業を経営する大都グループの会長として眼力が強く、ビジネスに役立つ名言も複数発言しています。
そこで、今回はITmediaオルタナティブ・ブログをご覧のビジネスマン/ビジネスウーマンの方に役立ちそうな語録をご紹介したいと思います。
今回の記事も物語の結末や核心となる部分に触れています。この記事は「『ガラスの仮面』のネタバレになっている記事でもかまわない」という方を対象にしていますのでご注意ください。
人から妬まれる時とは
速水英介は戦争で熱病にかかり子供をつくることができない身体になってしまいました。そこで後継者として目をつけたのが家政婦・藤村文(ふじむら あや)の息子真澄です。
真澄の才能に気がついた英介は藤村文と結婚し、真澄を養子とします。そのため速水英介の腹違いの兄弟たちは我が子を跡継ぎにするため真澄にさまざまな嫌がらせをします。
そんな状況の中、速水英介は真澄に親族の前で立派な電車のおもちゃを与えます。妬んだ親族の子どもたちは「使用人の子が生意気だぞ」と発言し、おもちゃを破壊します。
真澄が泣きながら義父・英介に謝りに行くとこんなことを言われます。「いいか、幸運を手に入れても見せびらかすな。」と。(注)
※注:『ガラスの仮面』紅天女1 文庫版20巻より
その理由は同じくらいの立場にある人間が自分よりも成功したり、幸福になってしまうと妬まれてしまうからとのこと。(注)
※注:『ガラスの仮面』紅天女1 文庫版20巻より
速水英介は「見えない敵ほど恐ろしいものはない」と真澄に教えます。「人は妬むと他人の幸せをぶち壊すために行動することもある」というのです。
確かに見える敵ならばいかようにでも対策を取ることはできるでしょう。しかし、「見えない敵」は眼に見えないがゆえに「敵がいない」と錯覚してしまいます。油断が生じてしまうのです。
妬まれてしまったが最後、自分が少しでも油断をしてしまったら、少しでも付け入る隙を与えてしまったら幸運の何もかもぶち壊すこともあるのです。
「出る杭は打たれる」のか
速水英介の言葉は小学生時代に読みましたがそのときはずいぶん恐ろしいことを言うなと思っていました。しかし、今、見返してみると恐ろしいほど人間心理を突いているのではないかと思うようになりました。
「同じくらいの立場にある人間が」という主語がとても大事な意味を持っていると受け止めています。明らかに自分よりも優れて立場が上の人間が幸運を手に入れても妬む気持ちにはならないのです。
ことわざに
「出る杭(くい)は打たれる」
という言葉があります。
ヤフー辞書([大辞泉 提供: apanKnowledge])によりますと、
1 才能・手腕があってぬきんでている人は、とかく人から憎まれる。
2 さし出たことをする者は、人から非難され、制裁を受ける。引用元:ヤフー辞書 http://qrl.jp/?336830
という意味でした。
「出る杭は打たれる」の意味を「他人よりも優れてはダメなのか? 」と受け取る方もいらっしゃるかもしれません。ですが、私見では日本のビジネス社会において考えると2の「さし出たことをするものは」の意味として使うことが多いのではないかと考えています。
速水真澄は家政婦の子供だったことから英介の養子になった後も速水家の子供たちに殴る蹴るのいやがらせと暴言を受けます。これは速水家の親戚の子どもたちが真澄を自分よりも目下の存在(使用人の子)と思っていたから妬んだのではないでしょうか。
もし速水英介の実の息子であったならば速水真澄は親戚の子どもたちにここまで嫌がらせをされたでしょうか。
速水真澄は速水英介が出した課題、「速水邸の池の泥さらいを鯉を傷つけずに行う」をあっさりとやりとげます。親戚の子どもたちは数人がかりで泥を掻き出そうとしますが手におえません。
しかし、真澄は植木屋のおじさんに「池の泥は肥料になるから」と相手のメリットを提案。見事、植木屋の機械で泥を汲み取ることが出来ました。(注)
※注:『ガラスの仮面』紅天女1 文庫版20巻より
この時のことを速水英介は以下の3点から評価しています。
- 自分(真澄)が池に入って泥さらいをしなくても目的を達したこと
- 植木屋にとっても自分にとっても得になったこと
- その場で即座に的確な判断ができたこと
実力において速水真澄は明らかに他の子どもたちよりも優れていました。にもかかわらず親戚の子供たちから嫌がらせが行われたのは「さし出たことをする者」と認識されてしまったからかもしれません。
もし真澄の存在が速水家の親族にメリットがあるものだったとしたら才能があっても恨まれることはないかもしれません。というのは損をするよりも得をしたいと考えると仮定できるからです。
しかし養子の真澄が速水家の跡継ぎになってしまっては他の親族にとってメリットがありません。
会社やその他の場において、他人から妬まれないようにするためには「私の存在はあなたにとってもプラスなんですよ」と認識してもらう必要があるようです。
働く際に何かを発言したい場合、突然、他者へ主張をするのではなく、事前に関係者に根回しをすることが必要となります。
しかし、働き始めた頃の私はそれがわかりませんでした。働く経験を重ねて痛い目にあって初めて「そういうことか」と納得が行くようになりました。
他人から妬まれないために全力で物事に取り組まず、手抜きをしてしまったら生産性が下がります。
「私は仕事ができる」と会社に認識されなかったら評価も給与も下がります。会社としても国内のみならず国際競争力にも負けてしまいかねません。
実力を発揮することが悪いわけではなく、他人に過剰に見せびらかさないことが大事なのではないでしょうか。自慢と誇りが違うようにです。
漫画『ガラスの仮面』の登場人物が魅力的なのは「演劇に真剣勝負」。本気で演劇スポコンをしているからです。生きる力となる情熱があり、不正を行わずまっすぐに真剣勝負だからこそ北島マヤも姫川亜弓も輝けるのです。
漫画『ガラスの仮面』は「因果応報」に貫かれています。原因があって結果があります。
策略を張り巡らせて北島マヤを芸能界追放に追い込んだ付き人・乙部のりえは姫川亜弓に演劇の実力で大敗し、女優としては再起不能となります。不正はどこから未来の自分に悪い因果として跳ね返ってくるのです。
まとめ
今回は速水英介の「いいか、幸運を手に入れても見せびらかすな。」というセリフを軸とし、会社で気持ちよく働いていくにはどうしたらよいのかを考察しました。
英介が当時小学生だった真澄に「ふうむ......。自分の身を汚さずして双方に利益を与え、目的を達する......か。」と言っているのは、大岡越前「三方一両得」の精神を感じます。
- 速水英介の格言「いいか、幸運を手に入れても見せびらかすな。」を心得とし、
- 「見えない敵」は作らないようにし、
- 実力の有無にかかわらず「私の存在はあなたにとってもプラスなんですよ」と周りの人間に認識させ、
- 妬みそうなひとが「この人はすごすぎて異次元」と妬めなくなるくらい超越した実力も日頃から鍛え、
- 子供時代の真澄が実践した「双方に利益を与え、目的を達する」を仕事においても行う
などの気遣いが必要となるのではないでしょうか。
たかが漫画。されど漫画。不況、大震災と大変なことが続く中だからこそ、『ガラスの仮面』から人生の知恵を学ぼうではありませんか。
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今回の記事はSpecial オルタナトークが「ポジティブ・シンキングしてますか?」だったため、ポジティブの逆、ネガティブな感情「妬みを転化する」を考察しました。対立概念のネガティブ・シンキングを考察することで、「ポジティブとは何か」の本質が見えるのではないかという試みでした。
編集履歴:
2011,10.22 ※本文最後の一文に脱字があったため、「から」の2文字を追加しました。
2011.10.23「参考:大都グループ会長・速水英介とはどんな人物なのか」を参考情報として本文から切り離し、追記扱いに変更しました。
2012.7.4 19:25 冒頭にガラスの仮面のあらすじへのリンクを追加しました。
2012.10.22 21:12「参考:大都グループ会長・速水英介とはどんな人物なのか」の箇所はパブー版『ガラスの仮面と速水真澄の"紫のバラ"』に移動しました。
2912.12.7 17:29 題名を「漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学ぶビジネスの格言「いいか幸運をつかんでも見せびらかすな」から「漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学ぶ ビジネスの格言」に変えました。
2012.12.12 22:25 題名を「「漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学ぶ ビジネスの格言」から「漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学ぶ 気持よく働くコツ」に変えました。
2012.12.30 1:02 題名を「「漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学ぶ 気持よく働くコツ」から「組織で気持よく働くコツは漫画『ガラスの仮面』の速水英介に学べ」に変えました。