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「森の仕事場」と「理想のITエンジニア」の関係

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「理想のITエンジニアとはどういう人材か?」

いま、このテーマに向きあっている。エンジニアでもない私が、なぜそんなことに関心を持ち、取り組んでいるのかと言えば、いま取り組んでいる「森の仕事場」を事業として成り立たせるためである。

昨日のブログで述べたように、環境、設備、ロケーションともに、申し分のない施設であるとの自負はある。しかし、どれほど素晴らしい「場」があっても、それを活かすソフトウエアがなければ、収益の確保は難しい。そのソフトウェアのひとつとして考えているのが、「理想のエンジニアを育成する研修プログラム」である。

言うまでもないが、我が国のITは、未だレガシーに大きく偏っている。仕事柄、最新のITトレンドや、これからのビジネス戦略といったテーマで講義や講演をしたり、ITリテラシー向上のための研修講師や研修プログラムの開発に関わったりしているが、いまだ多くの企業のITの常識は、古き良き時代のメインフレームやクライアントサーバーの前提を抜け出せていない。特に、SI事業者の現実が酷い。

確かに、彼らも、クラウド、アジャイル、DevOps、サーバーレス、マイクロサービスといったことに取り組んではいる。しかし、それらは、既存のビジネス・モデルのトッピングとして、一部の変人たち(敬意を込めて)の取り組みに留まっている。経営者と話をすると、このようなモダンITの大切さを理解しているとは言うが、本腰を入れて、ビジネス・モデルを変えようとしている企業は、多くはない。

彼らのビジネス・モデルとは、「作る技術」を前提に組織力で大人数を動員し、工数を稼ぐやり方だ。一方で、上記に紹介したようなテクノロジーは、「作らない技術」が前提であり、これこそがいまの時代の潮流となっている。

「作らない技術」とは、どういう技術かと言えば、次のようなケースだ。

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「配車サービス」を新たに立ち上げようとすれば、その機能の大半を既存のクラウド・サービスで賄うことができる。地図情報、代金決済、ID認証、損害保険、セキュリティは、自分たちで作る必要ない。また、サーバーやストレージ、ネットワークなどのインフラの構築や運用は、クラウド・サービスに任せることができる。むしろ、それぞれに特化した優れたノウハウつぎ込んだサービスとして積極的に使うほうが、「配車サービス」の魅力を高めることができるだろう。

どうしても自社で作らなければならないのは、クルマと人のマッチング機能だ。独自の需要予測アルゴリズムで迅速に配車できることは、サービスの魅力の根幹であり、差別化と競争力の源泉となるからであり、それは自分たちで作るしかない。

サービスとして提供される機能や独自の機能は、マイクロサービスで実装し、REST/APIでつなぐことで、新しいサービスを短期間に立ち上げることができる。また、より魅力的な代金決済のサービスが登場すれば、容易に乗り換えることができる。機能の向上やUXの改善も、継続的かつ頻繁に繰り返すことができる。

このようなことをできるようにするのが「作らない技術」である。これが技術が当たり前になれば、小規模なIT事業者や内製チームなどの少ない人数でも、「作らない技術」で対処できる。そうなれば、「作る技術」を前提とした「組織的な人材の動員力」はビジネス価値としての合理性失うだろう。事実、事業会社が、内製化の適用範囲を拡大しようとしているわけだが、その前提は、「作らない技術」であり、今後、こちらに需要がシフトしてゆくとすれば、当然、SI事業者の既存のビジネス・モデルは、根本的に変わらざるを得ない。

これについては、以下のブログに詳しく書いているので、よろしければご覧頂きたい。

事業目的は「従業員に成長の喜びを与えること」

この変化は、極めて根本的なもので、上記についての知識やスキルを身につければ、済む話しではない。働くことや人とのつながり、さらには生き方といった、カルチャーの変革も強いるものであろう。つまり、企業と個人のカルチャーそのものを変えなければ、ならない取り組みだ。

また、「工数を増やして売上を拡大すること」ではなく、「エンジニア個人の技術力を高め利益率の高い仕事を拡大すること」へと、事業目的を転換しなければならない。

こんな話をすると、何と大仰であり現実的ではないとの誹りを免れないであろう。まさに、それをやることが、変革であり、巷が大騒ぎをしているDXの根底にある考え方である。変革とは、それほど、大仰で大変なわけで、それなくして、時代の変化に対処できないことを、真摯に受け止めるべきだ。

話しが、「理想のエンジニア」から、大きく膨らんでしまったが、そんな時代のビジネスを支えるエンジニアをどのように育て、輩出していけばいいのかを考える時、目指すべきあるべき姿として、この言葉を定義しておく必要があると考えている。

既に、モダンITを実践している企業や個人であれば、こちらが余計なことをしなくても、IT環境の充実した森の仕事場を提供するだけで、彼らはそれを十分に活用してくれるだろう。しかし、そのような企業や個人はまだまだ少ない。

ビジネスのポテンシャルは、それができない企業や個人にあると考えている。まさにそういう人たちに、「理想のエンジニア」になるためのスキルを提供し、カルチャーギャップを意識させ、マインドセットのアップデートに貢献できるかが、この「森の仕事場」の事業の採算を支えることになると考えている。

私の思いこみが過ぎるであろうか?的外れであろうか?しかし、もしそれができるのであれば、本当に幸せである。

*追加開催決定!9月1日(火)

新入社員のための 「最新ITトレンド・1日研修」

ご要望多数により、「最新ITトレンド・1日研修」を9月1日(火)に追加開催することとなりました。
新入社員の皆さんはもとより、ITの最新トレンドやDXなどの基本的知識を整理したいとお考えの方には、お役に立つと思います。

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1万円(税込)/2021年度の新入社員と2年目の方
2万円(税込)/上記以外の方
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オンライン( zoom)にて開催します。

ITビジネス・プレゼンテーション・ライブラリー

【7月度のコンテンツを更新しました】
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・新入社員のための最新ITトレンド1日研修・2021年版 改訂
・一般社員向け最新のITトレンドとビジネス戦略・1日研修パッケージ 改訂
・ブロックチェーンの資料を分かりやすくしました
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研修パッケージ
・【改訂】総集編 2021年7月版
・【改訂】DX基礎編 デジタルトランスフォーメーションの本質とビジネス戦略
・【改訂】最新のITトレンドとビジネス戦略 1日研修パッケージ
・【改訂】新入社員のための最新ITトレンド1日研修・2021年版・パッケージ
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ビジネス戦略編・DX
【新規】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/デジタル化以前 p.9
【新規】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/デジタル化以降 p.10
【新規】デジタル化とはレイヤ構造化と抽象化/社会構造の変化 p.11
【新規】見せかけのDXと本物のDX p.79
【新規】デジタルで"何"を変革するのか p.80
【新規】DXのメカニズム p.107
開発と運用編
【新規】DevOpsのメリット p.70
サービス&アプリケーション・先進技術編/AIとデータ
【改訂】ニューラル・ネットワークの仕組み p.86
クラウド・コンピューティング編
【新規】マルチクラウドのメリット p.77
【新規】クラウド各社のコンテナ展開 p.78
【新規】Googleのマルチクラウド戦略 p.79
【新規】Microsoftのマルチクラウド戦略 p.80
【新規】IBMがRed Hatを買収(2018.10) p.81
【新規】OpenShiftによる統合 p.82
【新規】マルチクラウドへの取り組みの差 p.83
テクノロジー・トピックス編
【改訂】Armのビジネス・モデル p.19
【新規】競合他社の懸念 p.33
【新規】半導体(CPU)を取巻く市場環境の変化 p.34
【新規】半導体を巡るこれからの動き p.35
【新規】Linuxのビジネスモデル p.78
【新規】オープンソース開発の実際 p.79
【新規】OSSのビジネスモデル p.80
【新規】OSSへの誤解 p.81
【新規】OSSは利用者とベンダーの双方にメリットがある p.82
テクノロジー・トピックス編/ブロックチェーン
【新規】NFT: Non Fungible Token/非代替性トークン p.5
【新規】ブロック・チェーンの構造 p.11
【新規】ブロック・チェーンの構造 / Proof of Work p.12
【新規】ブロック・チェーンの構造 / 改竄が困難な理由 p.13
【新規】ブロック・チェーンの種類 p.18
下記につきましては、変更はありません。
 ITインフラとプラットフォーム編
 ITの歴史と最新のトレンド編
 サービス&アプリケーション・基本編
 ビジネス戦略編・その他
 サービス&アプリケーション・先進技術編/IoT

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