「PoC死」の葬り方・前編
「IoTで新しい事業を立ち上げたい」
例えば、このようなお客様からの相談に、あなたならどう対処するだろうか。
- センサーを工場内に配置して、従業員の稼働状況や作業効率を把握できるようにしたい。
- ARを使って、工程の進捗や設備の状況を即座に知ることができるようにしたい。
- RFIDを使って、資材の動きを把握し、設備や人員の最適配置を直ちに割り出せるようにしたい。
なるほど、いままでにできなかったことができるようになりそうだ。しかし、少し待って欲しい。そもそも「なぜ、何のために」、このようなことをしなければならないのだろう。新しい技術が登場し、それを使ってみて、何ができるか、どれだけのことができるかを知りたいという知的好奇心は大いにけっこうだが、「なぜ、なんのために」やる必要があるのだろう。自分たちの「あるべき姿」はどうあるべきか、その実現を阻む課題は何か、その課題を解決することにどれほどの価値があるのか、といった「なぜ、なんのために」をはっきりさせないまま、PoC(Proof of Concept/概念を検証するための取り組み)に取り組むケースが後を絶たない。
このようなPoCは、おおよそ次のように進められることが多い。
- 現状のプロセスをそのままにして、その技術の使えそうなところを探す
- 使えそうなところに使って、使えるかどうかを検証する
- 使えることは確認できたが、これで何が解決されるのか分からない
「なぜ、なんのために」がないのだから、何が解決されるのか分からないが、結局のところ分からない。「使ってみた」という成果は残るが、次に続くことはない。
本来、PoCのC = Concept(概念)とは、事業の概念であり、その事業が思惑通り実現できるかどうかを検証することが趣旨である。しかし、事業の概念がないままに、IoTとは何だろう、何ができるのだろうかといった機能や性能への興味や関心のためにPoCを行っても、事業の成果に結びつくことはない。
事業の成果に結びつかないPoCを繰り返せば、予算はいくらあっても足りないだろう。まさに「PoC貧乏」である。一方、SI事業者にとって、このようなPoCは必ずしも悪い話しではない。なぜなら、成果を保証する必要がなく、工数を稼ぎ、しかも、自分たちは技術検証ができて勉強になる。短期的には「PoC成金」になれる。
しかし、それがお客様の事業に継続的に組み入れられなければ、安定した収益の確保や継続的拡大にはつながらない。また、技術のつまみ食いが増えて、実績が積み上がらず、ノウハウが蓄積しないし、持ち出しも増えるだろう。結局はPoC貧乏、いや、実績を出せないSI事業者というレッテルを貼られ、この会社に相談しても仕方がないと思われてしまい、やがては「PoC死」に至るかもしれない。
本来、PoCは次のような手順を踏むべきだ。
【明日の後編に続く】
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