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ラオスについてのBLOG(第6回): ラオスの産業、その現状と可能性について

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ラオスで郊外にある小学校と中学校を訪ねて教室で子供たちの話を聞く機会がありました。(英語-ラオ語の通訳つきですが)

「日本から来たんだけど、日本て知ってる?」

多くの子がちゃんと世界地図上で日本を指し示すことができ、またホンダやヤマハといった名前も。
(日本人だと大人でもラオスの場所とかよくわからないってケースも多いですけど・・)


「大きくなったら何になりたいですか?」

答えの大半は、軍人。そのほかでは警察官、パイロット、お医者さんなど。
(野球選手とかサッカー選手というのは無かったですね)

そのときには、子ども心にはやっぱり制服を着ている仕事にあこがれるんだろうな、と聞いていたのですが、就労人口の約7割が農業に従事している農業国ラオスでは、そうそう子どもたちの身近に多様な職業がまだ無いのかもしれないということに気がつきました。
もしそうだとすると、ちょっと酷な質問だったのかもと反省しています。


しかし、現在ラオスも急速な成長期に入っており、2010年にはGDPに占める農業の比率は2位の31%に低下し、42%のサービス業に首位を明け渡したとのこと。ちなみに、3位は工業・建設業の27%。

観光立国を目指した国の政策もあり、サービス業が大きく伸びたらしい。
観光産業だけをとってみると、就業人口の10%、GDP比でも10%を占めているという統計もあるようです。
実は日本からも年間3万人ほどが観光で訪れているとのこと。

観光以外の外貨獲得源としては、森林資源、豊富な水流を活かした水力発電による売電が挙げられます。

アジアの新興国というと電力不足や停電が日常というイメージがありますが、ラオスの電力事情はかなり安定していて、また農村部の家庭にもかなり電気が通じていると聞きました。

水力発電で豊かな電力というのは、再生可能エネルギーをベースとしたエネルギーインフラという点である意味うらやましい感じがします。

このほか、すず、鉄、金、銅などの鉱物資源も有望視されています。

最近では中国をはじめとする外資による鉱山開発や、水力発電所の建設が盛んになってきているそうです。


内陸国のラオスは物流面でややハンデを負っていますがインドシナ半島メコン川流域諸国の連携による南北経済回廊、東西経済回廊と呼ばれる幹線道路網の整備が進み、中国、ミャンマー、タイ、ベトナムなどと結ばれることでそれらの中心にある地の利を生かした発展が期待されています。

広大なメコン川を船で移動すればいいのに、と思ってしまうのですが、カンボジアとの国境付近に大きな滝があるため船は遡上できません。
だたこれは、反対に大型船が入らないことでメコンの生態系が維持されているという側面も考えると必ずしもマイナスばかりではないような気もします。


先日東京で開かれた日本アセアンセンター主催のラオス投資セミナーに参加してきました。
50-100人規模のイベントだろうと思って行ったのですが、かなり広い会場が300人以上(目算)の出席者でいっぱいでした。
日本からもラオスに対する視線が急に熱を帯びているようです。


さて、農業、鉱業、水力発電、観光など以外はどうでしょう。
ここからは、ラオスの友人に聞いた話や僕が見てきた印象など中心になります。

一昨年、ラオスにも証券取引所が開設され、現在2銘柄が取引されています。
今のところまだ日本からは売買できないようですが、先日東京で会った日本人の個人投資家さんがラオスの株を持っているという話をしていてびっくりしました。

通信、特に携帯電話会社は4社(も!)あります。
(2009年の携帯電話普及率は50%強)
まだ音声通話+メッセージ程度が主流ですが、今後急速にデータ通信、コンテンツサービスなどが充実しそうです。

インターネットは外国人が泊まるようなホテルでは大抵WiFiがつながります。
ただ、全体としてはインフラはまだ整備されておらず、回線速度もあまり高くありません。
ネット利用は人口の約8%、Facebookユーザは2%程度のようです。
従って、今すぐインターネットを介した各種サービスがブレイクするという状況ではなく、まだ紙メディアの可能性が高いと言えそう。

実際、ラオスの友人の一人は、最近ヴィエンチャンで就職情報誌の発行をはじめました。
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これから産業が発達し、いろいろな企業が採用を活発化させていくのを見越した戦略で、またネットに飛び付くのではなく現実的な紙媒体でのスタートです。
ラオスの江副さんですね。(いい意味で)

TV放送は、国営放送局の1つだけ。
多くの家庭ではタイの衛星放送を受信して見ているそうです。
タイ語が読めるので、雑誌や本なども多くはタイから入ってきています。


音楽は、若い人たちの間ではここでもK-POP!
ドラマも韓国ドラマが人気とのこと。


製造業は、手工業的なものが中心でまだ大きな工場は多くありません。

国内で最大の製造業と言われているのは、ビアラオ。

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ビールだけでなく、飲料水やその他食品なども扱っていて、日本のサントリーのような存在と言えるでしょうか。


日本からの進出企業としては、丸八真綿が工場進出しています。

日本からといえば、規模は大きくないようですけど、ラム酒製造のLAODIがあります。

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広島からラオスに渡ったみなさんが現地で立ち上げた事業だそうです。
日本でも販売されていて、バーなどにも置かれています。
今度ラオスに行くときには工場を訪ねてみたいと思っています。


そして、IT。

証券取引所ができるなど金融会社をはじめ小売、製造などの企業でのITニーズは高まっています。
もう一人の友人は、ヴィエンチャンでシステム開発、インフラ構築のビジネスを立ち上げました。
彼はまた、JICAによるIT人材育成プロジェクトにも協力しています。
この分野もこれから拡大する兆しを見せています。


ラオスは、周辺諸国に較べて人口が多くないということもあり、ITのオフショア拠点として、またメーカーの製造拠点としての外資の進出はあまり盛んではありません。
そういう意味では、コストが安い生産の場として活用されることによる経済発展はなかなか難しい面がありそうです。
しかし、だからこそそうでない別の道を歩むことができるとも捉えられます。
地理的な特性も活かし、隣接する中国、ベトナム、カンボジア、タイ、ミャンマーと連携し、包含した可能性も模索できると思います。

インドシナの中央を占めるこの国が、ユニークな産業を生み成長する姿が見られるのも間もなくのことだと思います。
それを楽しみに、またそこに貢献できるかたちで関わっていきたいと考えています。

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バックナンバー


第1回: ラオスってどこですか?
http://blogs.itmedia.co.jp/isojima/2012/01/post-95b3.html

ラオスについてのBLOG(第2回):ラオスでの食べ物いろいろ
http://blogs.itmedia.co.jp/isojima/2012/01/blog2-c652.html

ラオスについてのBLOG(第3回): 物価とか生活事情はどうなんだろう?
http://blogs.itmedia.co.jp/isojima/2012/02/blog3-2ed5.html

ラオスについてのBLOG(第4回): ヴィエンチャンの日本食レストランのメニュー
http://blogs.itmedia.co.jp/isojima/2012/02/blog4-04ba.html

ラオスについてのBLOG(第5回): ラオス(ヴィエンチャン)からメコン川を渡ってタイ側の国境の街に行ってみたよ!
http://blogs.itmedia.co.jp/isojima/2012/02/blog5-de30.html

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