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ファーストキャリアの選び方②~入社後に向き合うべき3つのステージ

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全4回でお送りしているキャリアシリーズ。今回は第2弾だ。

第1回:会社選びの視点を変える
第2回:入社後に向き合うべき3つのステージ(今回はここ)
第3回:会社選びの7つの基準
第4回:環境×マインドで伸び方が決まる

前回の記事(第1回:会社選びの視点を変える)で

・自分がやりたい事ができる会社をどう探すか?

ではなく、

・会社に入った後、真に自分がやりたい事をどうやって見つけるか?
・見つかった後、どうやってその仕事に移っていくか?

の方が大事だと書いた。だとすると、どうすればこれが上手く出来るのか?入社してからどんな風に仕事と向き合うとよいのだろうか?
仕事のステージを、大きく3つに分けて考え方を整理してみたい。これは何も新卒入社に限ったことではない。きっとすべてのビジネスパーソンに共通することなんじゃないかと思っている。が、内容的には結構難しいことを書いている気がする・・・。



◇ステージⅠで、自分の特性を見極める

入社後数年は、仕事の幅を増やし、工夫をしまくり、自分の特性を見極める時間にする。

自分自身の「好き/嫌い」、「得意/不得意」さらに「働くモチベーション」がどこにあるのか、何に「働きがい」を感じるのか。という事は、結局、色々やってみて散々経験してからでないとわからない。だから、社会人になって数年は、色々なことを経験し、自分と向き合う時間にしたほうが良い。

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学生時代に立てた仮説を実戦環境で検証するのだ。だとすると、気をつけるべきことは以下の4点ではなかろうか。

①単一の仕事に埋没するな、色んな仕事をしろ

複数の仕事、タイプの違う仕事をする機会を作ったほうが良い。
「自分はこの仕事が好き」「この仕事は嫌い」という思いが強いと、仕事を毛嫌いしてしまう。だが「この仕事が好き」というのは基本的に思い込みであり、変わる前提だ。もしかしたら毛嫌いしていた仕事こそ、自分の天職かもしれない。
色々なタイプの仕事をすることで好き嫌い、強み弱み、得意不得意がはっきりするのである。「嫌いな仕事だと確信した」というのも、この時期にはとても大事な発見だ。だから、色々やらせてくれる会社や組織に所属するのが良いだろう。手を挙げたら「やってみたら?」とさらりと言ってくれる組織。
極度に分業が進んでいない仕事が良い。「仕事を覚えろ」「これだけやっとけ」という組織はあまりおすすめできない。


②適当に流すのはやめろ、工夫して全力を投じろ

繰り返すが、色々やるのは、自分の好き嫌い、強み弱み、得意不得意を見極めるためだ。だから、ボケっと仕事をしてもだめだ。
適当に流した仕事は、仕事ではない。単なる「動作」だ。単なる動作からは何も得られない。
何も考えず「石を右から左に移動させる」動作をしても、あなたの体力が消費されるだけだ。
同じ「石を右から左に移動させる」ことでも、工夫して全力を投じてみると、それは単なる動作ではなく、仕事になり、そこに感情が生まれる。
・工夫したことが、どんな結果として返ってくるのか。
・結果によって、自分の感情はどう動くのか。
・工夫することは好きなのか嫌いなのか。
・工夫の方向性は正しかったのか、間違っていたのか。
・次はどうするともっと良くなりそうか。
こんな事を考えるきっかけが生まれる。

これに関しては、以前のブログ【「お前、仕事で全力出してんのか?」がもたらしたパラダイムシフト】でも少し触れている。

③「好きな仕事」はない、「好きな作業」を見極めろ

前述の通り、色々なことを全力で経験をすることで、自分の好き嫌い、強み弱み、得意不得意を見極められる。
だが、これは「仕事」の単位ではなく、「作業」の単位で見極める必要がある。
「会計の仕事」「広告の仕事」「コンサルの仕事」と一口に言っても、それは無数の作業で構成されているのだ。仕事の構成要素である「作業」に注目すべきなのである。例を挙げてみよう。

例えばコンサルの仕事には
・プロジェクトの進め方を考える
・プロジェクトの進め方を周囲に説明する
・ヒアリングの項目やフォーマットを考えて作る
・現状をお客さんからヒアリングする
・現状を資料から読み解き把握する
・現状を他社と比較して、違いをあぶり出す
・揃えた情報から、問題点を特定する
・問題点が発生している原因を特定する
・わかったことを資料にまとめる
・各自が作った資料を束ねて、中間報告用にまとめる
・資料の誤字脱字やトーン&マナーを整える
・資料のデザイン性を高め、見た目を良くする
・施策のアイディアを出す
・施策の有効性を検証する
・施策を具体化する
・施策を実現したい時のリスク、問題点を考え対応方法を検討する
・上記についてメンバーとの議論をリードする
・上記についてたたき台となるアイディアを出す
・プレゼンのストーリーラインを作る
・プレゼンを資料を作る
・プレゼンをする
・質疑に応じる
・チームの雰囲気を良くして気持ちよく働ける環境を作る
・・・・

という感じで無数の作業がある。これらが積み重なって「コンサルの仕事」になるのだが、普通、これら全部の作業が「好きで得意」なわけがない。この中の特定の作業が好きで得意なだけ。

そして、好きで得意な「作業」が多く含まれている仕事を、「やりたい仕事」だと感じるのだ。そもそも「好きな仕事」という考え方がナンセンスなのだ。

結局、どの作業が好きで、どの作業が嫌いなのか、それはなぜか?どの作業だとパフォーマンスが上がり、どの作業は質が低くなるのか、そしてそれはなぜか?
これを見極めないとダメだ。

④「好きな状況」を見極めろ

もう一つ。「作業」にはそれぞれ「状況」が加わってくる。嫌いな「作業」でも「状況」次第でハマる可能がある。
場合によっては「好みの状況」が作り出せれば、作業はなんでもOKになる可能性もある。

例えば状況にも様々ある。
・作業の道筋がついてる状況/混沌としてる状況
・やったことがない初体験の状況/何度かやってある程度予測がつく状況
・誰かが進め方をハッキリさせてくれた状況/自分でイチから考える状況
・切羽詰まっている状況/時間的に余裕がある状況
・1人でやる状況/チームでやる状況
・誰かに感謝される状況/アウトプットに納得がいく状況
・バリバリモノが進む状況/生みの苦しみを味わう状況
・・・など。

そして状況に応じて「好き/嫌い」「得意/不得意」「パフォーマンスが出る/出ない」があるのだ。
僕の場合、
目に見えるアウトプットが出る状況が好きだと思っていたが、誰かが心底喜んでくれる状況の方が好きだった。
混沌とした逆境でこそパフォーマンスが出ると思っていたが、ゴールや目的がハッキリしている時の方がパフォーマンスが発揮される事がわかった。

③④ひたすら書き出して見極める

「好きな作業、好きな状況」「パフォーマンスが出る作業/出ない作業」などを、ひたすらに書き出しておく。なにか新たな経験をした時がチャンスだ。
そうすると自然と③④に向き合えるようになる。ただし①②をやってないと、③④は上っ面になる。①②での体験・経験があると、③④の精度がぐっと上が上がる。
僕は今でも、定期的に自問するようにしている。



◇ステージⅡで、意図的にフロー状態に留まる

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数年仕事をして、これらの見極めができてきたら、好きな「作業」×「状況」の組み合わせに極力長く留まる努力をする。
これは入社後3~8年頃の時期だろうか。このステージになると、仕事がどんどん楽しくなってくる。
「作業」×「状況」の組み合わせで、自分の特性をつかめると、嫌いな作業を極力避けたり、嫌いな作業だけど工夫して好きな状況を作り出し、パフォーマンスを上げられるようになるからだ。

そうすると、好きで得意な作業だけをやって高いパフォーマンスを出せる様になる。
好きな状況を作る事もしやすくなるので、仕事に夢中になれる。心地よい状態を維持しやすくなるのだ。

この時期に気を付けて欲しいのは以下の3つ

①苦手な作業、嫌いな状況を避ける

チームで仕事をしているなら、得意な部分で貢献し、誰かに不得意部分を補ってもらうこともできる。嫌いな作業は極力やらないほうが良い。
例えば僕は、

  • 誤字脱字をゼロにするのが本当に苦手。だから、誰かにチェックをお願いするようにしている。
  • スケジュールを覚えたり調整したりするのが苦手。だからスケジュールを100%Outlookに入れて電子的に管理・公開している。

②好きな状況に寄せる

好き嫌いがハッキリわかっていると、嫌いな状況を避けるだけでなく、好きな状況を意図的に作り出すことできる。
これは結構大きい。仕事なのだから、苦手な作業をやらざるを得ないこともある。嫌いな状況に陥ることだってある。その時に逃げるのではなく、得意な土俵に寄せてしまえるのだ。

例えば僕は、

  • 目的やゴールがハッキリしていない状況は嫌いで、能力を発揮できない。だから、真っ先に目的・ゴールをすり合わせて合意するようにしている。
  • 単純作業は好きじゃないが、やりきって「完成形」を自分で作ると達成感があって気持ちがいい。だから、単純作業は部分的にやるのではなく、自分で完成形を作れるように、全部1人でやるようにしている。



◇ステージⅢで、好き・強みを軸に新たな可能性を広げる

次のステージだ。感覚的には10年目くらいからこのステージに入る。フロー状態に長くとどまれるようになったら、「作業」×「状況」を軸に、仕事の幅を広げていく。と言うか、勝手に広がる。すごく重要なことなので改めて書く。

好きな仕事はない。好きな「作業」×「状況」があるだけだ。

例えば、「グローバルの仕事」が好きなんじゃない。
「異文化に触れ、自分の価値観をアップデートする感覚が好き」とか
「世界に影響を与えている、という実感が好き」とか
「見知らぬ土地に行き、新しい発見をするのが好き」とか。
グローバルの仕事を要素分解した先に答えがある。

そして、好きな「作業」×「状況」が作れさえすれば、仕事の種類は何でも良くなる。

例えば僕は、

  • 「客観的な成果」を上げることではなく、「個人に影響を与える」ことが好き。
  • 「わかりやすく噛み砕いて、本質だけを伝える」ことが得意。
  • ファシリテーションやチームビルディングが得意だし、好き。
  • 無駄なこと、空転したなと思うことが嫌いで、経験を残らず積み上げて言語化することが好き。
  • ゴールがハッキリしている状況でパフォーマンスが上がる。

という特性がある(本当はもっとずっと複雑なのだが、超簡略化するとこうなる)。これは、ファシリテーション型コンサルタントとしてはめちゃ向いていると思うが、「個人への影響」にフォーカスを当てていくなら、教育や研修・トレーニングも、楽しくやれるしパフォーマンスも上がりやすい。「経験の言語化」にフォーカスを当てるなら、執筆やブログも苦も無く高いパフォーマンスが出せる。

という感じで勝手に仕事の幅が広がっていく。

好き嫌い、強み弱みをきっちり理解し、そこにフォーカスを当てているから、自然と強みが伸びる。強みが伸びて、好きな状況で仕事をしていると、活き活きのびのび出来る。そういう人には新たな仕事が舞い込んでくるものだ。自分の好きな「作業」×「状況」がわかっていると、引き受けるべき仕事/断るべき仕事も判断がつくようになる。こうなると、自然と仕事の幅が広がっていく。人生100年時代、変化の多い時代でも全然問題ない。
強みが強みを呼び、仕事や環境が変わっても、変わらず強みを軸に成果が出せるようになる。(僕はまだまだここまで辿り着いていないが・・・)



◇絶対にしてはならない勘違い

さて、ここまで書くと、誤解を招くこともある。勘違いが生まれないように、2つの事を書いておく。

①「好きなことは、すでにわかっている」と思い込む。

多くの人がステージⅠを端折ろうとする。
ステージⅠに全力で向き合わずに、自分の本当の趣向はわからない。わかったと思っているのは錯覚。ほんとにこれ。だから、しばらくは色々なことにチャレンジし、面白がって仕事をする必要がある。工夫して仕事をすることが、本当の自分を見出すことに繋がる。
よくあるミスは「これは私の好きな仕事じゃないからやりたくなーい」「これはなんか楽しくなーい」という思考停止だ。
「楽しくない」ならどうしたら楽しめるか色々工夫してみる必要がある。その過程で「楽しい状況」「楽しくない状況」がハッキリわかるようになる。
「好きな仕事じゃなーい」なら、「その仕事のうち、どの作業が嫌いないのか?それはなぜか?」を内省して欲しい。
仕事単位ではなく、「作業」×「状況」で考えるのだ。これは、色々やって体験して、工夫して、アクションの結果自分の感情がどう変わるかを観察して、ようやく分かることなのである。

②「好きなことはどうせわからない」と開き直る。

一方で、「趣味趣向はわからないから、考えても無駄」というのは、極論でありよくない。
仮説がいるのだ。「俺の趣味趣向はXXという事かもしれない」と仮説を持った上で、色々な経験をして検証していく。仮説がないと、効果的な検証はできないものだ。
僕の場合は、
「目に見える"成果"が出る状況」が好きだと思っていた。
だが、さんざん検証して内省した結果「目に見えて、"眼の前にいる人が喜んでくれる"状況」が好きだとわかった。これは僕の中ではかなり違う。
最初に仮説を立て、それに検証し続けるのである、最初の仮説は間違っていても構わない。というか間違っている。
でも仮説がないと、間違っていることにも気が付けない。



◇まとめ

ここまで来ると、後は勝手に人生が展開していく。こうなってくると仕事が楽しくなる。

僕は、ブログや執筆をするけど、「書かねばならぬ」と思ったことはあまりない。

「好きだから書く」「書くと、自身の経験が言語化されて気持ちがいいから書く」
仕事だと思ったことはあまりない。

でも、書くと自分の強みが強化され、新たに仕事の幅が広がる。仕事の幅が広がると「眼の前にいる人に喜んでもらう機会」も増える。
生きるために仕事をするのではなく、楽しいから仕事をする。その結果お金がついてくるし、その結果新たな機会が生まれる。という状態になる。これが連続していくと、きっと50年くらいは楽しく働けるのではないかと思う。

きっと、理解できない人には理解できない。

「やりがい搾取」という言葉があるくらいだから。「働かなくていいならその方がいいでしょ」という人もいるだろう。でも僕はそうは思わない。働かないで、遊んで暮らす人生が楽しいとは思えない。(試しに数週間だけお金を全く気にせず仕事もせずに、全力で遊び呆ける。というチャレンジをしてみたことがあるが、すぐに飽きてしまった)

これは僕の主観なので、押し付けるつもりはないが、「遊ぶように、活き活きと働く人生」が最高なんじゃないかと、僕は思う。「仕事と遊びをくっきり分ける」のではなく「遊びと仕事の区別がつかないけど、なんだかめっちゃ楽しい人生」が最高なんじゃないかと思うのだ。この辺の考え方は、仲山 進也さんの「組織にいながら、自由に働く」という本と考え方がかなり近い。この本もお薦めだ。

だらだら書いたが、これを踏まえて、学生としてどうやって会社を選べばよいのか、次の記事で書き起こしてみたい。

次回は、第3回:会社選びの7つの基準




ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに所属するコンサルタント榊巻(さかまき)がお送りするブログ。
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