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リモートで専門知識・技術を教える人が知っておきたい「できる人」を育てる教え方すごいコツ

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新入社員や未経験者対象の、専門的な知識や技術習得のための研修をリモートにして以降、職場配属後の実践になると、理解できていないケースが増えている印象です。
もちろん、膨大な量の知識や技術を教えるので、もともと習得までに一年程度かかることはよくあります。しかし、従来よりも早い段階でつまづき伸び悩んでいるように見えます。その理由を考えてみると、対面の場合で何気なく行っていた「その場で補うこと」がしにくいことの影響が大きいように思います。

「その場で補いにくい要因」は大きく分けると2つほどあります。
1つは、対面の場合は講師がその場の参加者の表情や態度や姿勢などから汲み取り、その場で投げかけたり、休憩時間中に歩み寄り、様子を伺いつつ補っていました。

もう1つは、参加者間でお互いにちょっとしたことを確認したり、何気ない会話の中で「あぁ、そういうことなのか」という形で補っていました。

しかしリモートでは、これらがしにくくなります。

では、「補うことがしにくい」ことを前提にした場合、どのような改善が図れるでしょうか。

そのような課題にうってつけの本がありました。それは、オルタナティブ・ブロガーとしても人気の開米瑞浩氏の著書『頭のいい教え方すごいコツ!』です。

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同著の「専門家のままでは新人の誤解が予想できない」の項の「教材作りのための6つのステップ」の部分が役立ちそうなので、引用します。

 教育研修を行うための研修教材の制作工程を大まかに分けると下記のようになります。
教材制作のための6つのステップ.jpg テーマを決めて、必要な情報を集め、構造化をして、教材としての原稿を書き、必要な編集・デザイン作業をして、印刷・製本する、という流れです。
 このうち、最初の2つは業務専門家の仕事です。その会社の仕事をよくわかっている人間がするべきなので、通常は社員の中の優秀な人材が担当します。
 一方、最後の2つはいわば「印刷物等のメディアのプロ」の仕事です。
 ちなみに、自社の社員教育をするためだけに使う自社用教材の場合は、このうちの編集・デザイン以降の過程にはあまり労力をかけません。テーマを決めて、情報を集めたらPower Pointに箇条書きでチャッチャッと列挙しておしまい。あとはプリンタで打ち出してホッチキスで止めるだけ、といった簡易なケースがよくあります。
 逆に、教育研修そのものを本業にして、他社の社員教育を請け負うような会社では、教材が見た目に美しく見えるように編集・デザインをしっかり行い、良い紙を使って上等な印刷をし、製本もしっかり、という傾向があります。

問題は、真ん中の2つの工程「構造化」および「教育シナリオ作成」です。これをやれる人間が少ない、良い研修教材を作れない、というケースがよくあります。

知っているからこそわからない、という落とし穴
 真ん中の作業をするためには、業務専門家でもなくメディアのプロでもなく「教育のプロ」が必要なのです。それが、できる人材が少ない理由です。

通常、会社は社員を育てようとするとき、特に新入社員に対してはそうですが、「業務専門家」の豊富な知識・経験を、それが欠乏している社員に少しでも教え込もうとします。そのためには、当然「豊富」と「欠乏」の間で翻訳をしなければなりませんが、その翻訳をするためには、専門家の知識・経験の構造化を行い、それを「欠乏」組に教えるときに起こりうる「コミュニケーション・エラー」を予想して、教育シナリオを組み立てる必要があります。ところが、「コミュニケーション・エラー予想」を業務専門家だけで行うのは難しいのです。その理由は、知識の豊富な人間は、どの知識が相手に通じているかを想像できないからです。
構造化の重要性.jpgのサムネイル画像のサムネイル画像 1990年代後半のこと、私がある仕事でアルバイトの学生と話をしていたとき、このことを実感したことがあります。そのとき、バイトのA君は「自他共に認めるパソコンおたく」という評判でした。そこで私もそれを前提に打合せをするわけですが、どうも話が通じません。あれ、変だなと思っていろいろとコンピュータの動作原理に関する基本的な質問をぶつけてみたところ、どれもこれもほとんど通じない、という事態に直面して愕然としたものです。え、パソコンおたくなのにこれも知らないの?あれも知らないの?マジで?というそのときの私の心の叫びをどうか想像してください。
 原因は、私とA君の間の10歳の年の差でした。私の時代の「パソコンおたく」というのは、コンピュータの動作原理を知った上でプログラムを組むのは当たり前だったのに対して、A君世代の「パソコンおたく」というのはどうやら「どのメーカーがどんな製品を出しているかに詳しい人」という意味であり、動作原理なんて知らない、場合によっては、プログラミングなんてやったこともないというケースがありました。
(中略)
 当時の私がそうであったように、「業務専門家」というのは、たいていの場合、自分の使っている用語、概念が当たり前に通じる世界で仕事をしています。そのため、ある専門用語が素人にどのように誤解されるかを予想できないことが多いんですね。これは自分が豊富な知識を持っているからこその落とし穴で、プロになってしまった者には、初心者が何を難しいと感じるかがわからない、という問題です。
 結局のところ、コミュニケーション・エラーを予想するためには、業務専門家と、教えられる初心者の中間的な立場の人間が必要です。つまり
業務専門家が何を教えようとしているのかをすばやく理解し、それを初心者がどのように誤解するか(エラーを起こすか)を予想して、
エラーを未然に防ぎ、修正できるような教育シナリオを作る
ことができる人間が必要なのです。これができるのは教育のプロであって、編集・デザインや印刷・製本といった「メディアのプロ」ではないことに注意してください。
引用了

 新入社員や未経験者に、専門知識や技術を教えるためには、文中にあるように「構造化」→「コミュニケーション・エラー予想」→「教育シナリオ作成」が必要です。さらに、今の状況に合わせると、「リモート環境で既に起きたコミュニケーション・エラー」を情報収集し、その対応を図っていくことが必要になってきているのです。

 では、どのような対応が必要でしょうか。すぐに対応できそうなのは次の2つのポイントです。

2つの対応ポイント
1)情報収集
まずやるべきことは、2019年~2020年に入社し指導を受けた若手社員や、若手社員の指導にあたっているOJT担当者を中心に、実際にやってみてうまくいかなかったこと、つまづいたことなどをヒアリングすることです。
うまくいかないこと、つまづいたことが、教育シナリオ(あえてその経験をさせる)以外で起きている場合は、次の対応へと進めます。
2)「構造化」あるいは「教育シナリオ」の見直し
問題があることがわかれば、
・知識、技術、経験の構造化
・教育シナリオ
の見直しです。経験上、問題の多くは「構造化」の段階で、端折っていたり、飛ばしていたりしていることに起因していることが大半です。

 そのような問題が起きやすい理由は、資料づくりの段階で「箇条書き」で作成することが多いためです。「箇条書き」にすると、一見必要な要素は盛り込まれているように思えるのですが、背景、隠れた前提、因果関係などがモレやすいのです。そのため、現場でのエラーが発生しやすくなります。

以上のことをもとに、リモートで指導にあたる人は、今一度、上記の観点から課題の洗い出しをしてみてはいかがでしょうか。

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