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「東京大学にいけない」と悩む高校生への処方箋

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 達成できていたはずの目標が達成できなくなり、焦ったり悩んでいる営業担当者。業務上設定されている目標に対してモチベーションが保てず、業務への着手が遅れたり、アイデアが全くわかないことに悩む専門職。上司として自信が持てない管理職。そんな方は、「できることをあえて目標設定し」→「達成する」の繰り返しを試してみる価値があるかもしれません。

 どうしてこんなことに価値があるのでしょう?それに関連する話を紹介します。

 10年以上前になりますが、以前の職場で講演会を主催しました。講師は、聖路加国際病院 精神科部長の大平健先生。大平先生は、時代環境の変化とともに、人の悩みが変化していることを捉え、『豊かさの精神病理』、『やさしさの精神病理』などの著書にその考察を詳述されています。

 さて、その講演で「できることをあえて目標設定し」→「達成する」の繰り返しが、効果的であることに関連した話がありました。それは、次のような話です。

大学受験を控えた高校生の悩みです。
彼の悩みは「東京大学にいけない」こと。

親や周囲から期待されているのに、"東京大学"に行けない自分を悲観していたそうです。

大平先生は、一通り話を聴いた後、処方箋を出します。
「中学生の英語の教科書を買って、今度来るときにもっておいで」

彼はその後毎回、中学生の英語の教科書を先生に指定されたページを勉強してくるようになりました。

すると、どうでしょう。

徐々に成績があがりはじめました。
そして、自分がいけそうな大学のイメージが段々見えてきたそうです。

その後、彼は無事に大学に合格し、先生に報告に来ました。
そのとき先生が、「東京大学以外は、大学じゃなかったんじゃないの?」ときくと、彼は「先生、そんなの無理ですよ」と、笑って答えたそうです。

大平先生は、「彼は、本当は大学に行きたかった。でも、何からどう手をつけていいのかわからない。それを人にも言えない。そこで私のところへやってきた。最初は"東大"と言うことで、できなかった時のエクスキューズをしているけれども、段々、現実の自分が見えてきたところで折り合いをつけることができた。"自己期待"と、"現実"をどう埋めてよいのかわからないと、不安になるんですね」と、まとめていました。

 この高校生が言う「東京大学」は、過度に期待され(ていると本人が感じて)心理的にプレッシャーを受けている状態で発せられた言葉です。ですので、彼が本当に相談したかったのは「ある程度の大学に入りたいけれども、プレッシャーを感じてどうしていいのかわからない。勉強が手につかない」ということです。

 これに対する大平先生の対応が、「中学生の英語の教科書を買って、今度くるときにもっておいで」です。

 「中学生の英語の教科書に取り組ませる」ことで、相談者である高校生(恐らく、ある程度の学力があることがイメージされます)に、あえて「できること」に意識を向けさせた上で、「取り組む」→「できる」を繰り返してもらった。それにより、基礎力がつく→学力が上がる→自信がつく→自分の希望が明確になる、というサイクルを経て成果をあげられたのではないかと想像します。

 ですので、「目標にストレスを感じる」状態のときは、「できること」に意識を向けて、「できることをあえて目標設定し」→「達成する」の繰り返しを試してみてはと思うのです。

~夢を創り、夢を育む~出あいに、感謝
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