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コミーに学ぶ「チームマネジメント」の知恵(その3)

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 ビジネスの成功、技術の進展などの背景には、かかわる人の想い、出会い、問題意識、多くの失敗、成功へのきっかけなど、様々なものが詰め込まれています。
 さて、そうした経験を私たちの組織ではどう蓄積し活用しているでしょうか。研修などで様々な組織にうかがいますが、年々、事象の背景、人とのつながり、経験などが伝承されにくくなっているように感じています。

 一方、組織の中で起こる出来事を「物語」として記録し、効果的に活用している企業があります。それが、安全・防犯用のミラーを「気くばりミラー」として開発し、特殊ミラーの分野で圧倒的なシェアを誇るコミー株式会社(以下、コミー)です。

 「小さな会社の競争しない経営術」という講演の中で、小宮山社長は次のようなお話をされました。

「社員は、物語をつくっている」

 この言葉を聴いたとき、私は、なんと素敵な言葉だろう!と、感じました。というのは、企業の成功事例の多くは、経営者や卓越したリーダーの存在を中心に描かれることがほとんどで、社員一人ひとりにスポットライトがあたることはあまりないからです。

 一方コミーでは、「社員が物語をつくっている」といいます。これは、一体どういうことなのでしょうか?

 あまりにも気になり、私は、コミー本社にうかがうことにしました。IMG_3689.JPG お話をお聞かせくださったのは、広報のご担当者。ご担当者によると、コミーでは「物語」を用語集の中で、次のように定義しているとのこと。

 コミーでの「問題発見」または「可能性の追求」から結果出しまでの事例集

 そして「物語」は、当初は、小宮山社長が作成されていたそうですが、今では、それぞれの担当者が作成されているとのこと。

 「物語」という言葉のニュアンスから、長文をイメージしますが、実物は内容によって異なるそうです。2015年9月に作成された最新版は、A4×2枚程度(表紙と裏表紙は別途)。テーマは「雨の日の階段問題物語」。内容は、日々の業務の中で見つけた小さな問題発見、そこで得た気づき、課題解決のプロセスと成果をまとめたものです。
コミー様 物語 事例.png さて、この「物語」、実は様々な展開を生んでいます。1つは、2年前に「物語」を集めて「社史」として発行したこと。
IMG_3738.JPG 一般的に「社史」づくりは数年がかりで取り組むそうですが、コミーの場合は「物語」を編集したのでかなり短い期間でまとめることができたそうです。さらに、その「社史」は各方面で注目され、色々なメディアで取り上げられる人気者に。そしてついに先日、「タモリ倶楽部」で紹介されました(2015年9月11日放映)。番組は、神奈川県立川崎図書館にて収録され、「1万7千冊の蔵書から学ぶ他社に差のつく社史のつくり方」というテーマの中で取り上げられました。番組の中で取り上げられた社史は、わずか数社。その中の1つに選ばれるとは!

 社員一人ひとりが取り組む仕事をまとめた「物語」が、「社史」になり話題に。取り組んできたことをコツコツとまとめたものが、次々と展開する形に。
 それでは、なぜ、コミーの社史はこれほどの展開を生んでいるのでしょうか。
 その理由の1つは、社史の冒頭に書かれた次のページにありそうです。

IMG_3739.JPG 一般的に社史で取り上げられるのは、その会社の歴史に残るような出来事ことです。しかし、歴史をつくり上げるのは、社員一人ひとりの、日常のコツコツとした仕事の積み重ねです。
 コミーでは、そのコツコツと積み重ねる仕事の中に、問題を見つけ、そこに向き合い、解決に向けて試行錯誤するその過程で、知恵が生まれ創造につながる、と考え、それこそが「物語」であるとして40年間大事に扱ってきました。
 特別な人の何かが「物語」なのではなく、私たち一人ひとりの日常こそ「物語」であり「歴史」である。そのことに気づかせてくれたことが、多くの人に知ってほしいと思われるほどの存在感を与えたのではないか。私は、そのように感じました。

 また、別の視点としては、「失敗」の共有は、同じ失敗を繰り返さなくて済むこと、自分だけが「できない」と悩み自信を失うことや、行き詰った状況を打破するための着眼点を得られる、ということもあると思います。

 いずれにしても、コミーの「物語」は、「人の心を動かす力をもつ」物語であることは、間違いないようです。

 なお、コミーでは、「物語」をまとめる上での構成も大まかに決まっているそう。その詳細は聞きそびれてしまったのですが、『なぜ、社員10人でもわかりあえないのか 鏡で世界一!コミーに学ぶ少人数マネジメント』日経BP社刊(2011年)の、『時間がたってもわかり合える「物語化」し、何度も追体験』の項「プロセスを物語風に書き残す/書くことで思考が広がる」に、ヒントがあるようです。
 また、コミーの「物語」は、コミーのウェブサイト上でも公開されています。こちらも合わせてご覧いただくことで、自分の組織で「物語」をまとめていく上でのヒントは得ていただけるものと思います。

 3回にわたり、コミーについてご紹介してまいりましたが、いかがだったでしょうか?ブログにまとめようと思ったきっかけは、小宮山社長のお話の中に「出会いの喜び」という言葉があり、その言葉に触発され、「コミーに出会うと何が起こるのかな?」と好奇心がわいたからでした。

 その結果、コミーにお伺いし、社員の皆様にお目にかかり、お話をお聞きすることができ、また、コミーで取り入れている「確認型応答」について、対話法研究所の浅野先生にも、「確認型応答」についてご教示いただきました。
ご協力くださった皆様、本当にありがとうございます。

 1つの講演をきっかけにした記事ですが、ご覧くださった方のお役に立てればうれしく思います。

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