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「習っていません」と言われると、「やる気がないのか?」と40代以上が思うワケ

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先日、40代半ば過ぎの、初めて人材育成に携わるようになったご担当者様が「最近若手が、すぐに「習ってない」と言うんだよね。これって、みんなそうなんですか?私たちの世代は「習ってない」というのは禁句だったので、すごく違和感を感じるんですが・・・」とおっしゃっていました。

実は私、この気持ちがとてもよくわかるのです。

そこで、若手の方には上司の考え方を。そして、「やる気がないのか?」と感じる人には、若手とのコミュニケーション上のポイントを、ご紹介します。

40代以上の価値観-20年前の仕事の覚え方
筆者が20代の頃に遡りますが、その時の経験が、上司世代の価値観を知る上で役立ちそうなのでご紹介します。

私が最初に入社した生命保険会社は、人材育成システムがしっかりしていました。新人~3年目までに身につけなければならない知識やスキルの基準と方法、得なければならない情報は常に用意され、それを一定期間で身に付け次のステップを目指していく。そして、売上成果を上げるための支援役として、5~6人のチームに一人のトレーナーが付き、配属後3ヶ月間はほぼつきっきりで。半年目以降は、自立して行動しつつ必要なサポートを得る。常に、何を求められているのか、何をすればよいのかが非常にわかりやすい環境でした。また、身近に世代の近い先輩や同期も多いので、わからないことや困ったことがあれば、聞きやすくもありました。

その後、人材育成企業に入社しますが、その会社での人材育成の中心はOJTでした。といっても上司は全員役員で、コンサルタント。常にオフィスにいるわけではありません。指示がなくても動かざるをえないOJT環境でした。そのような環境下で仕事を覚える方法は4つでした。
1つ目は、上司の担当企業先に同行させてもらい、そこで打ち合わせ~研修実施の現場を肌で感じること。
2つ目は、上司が手書き(当時はまだPCが普及しておらず、上司はワープロが苦手)で書いた原稿をワープロ入力する過程で、研修運営の構造を理解していくこと。
3つ目は、社内にある既存の企画に目を通すことや、参考文献を読むこと、わからないことは図書館で調べること。
そして最後に、お客様先に1人で行き、お客様との会話の中でわからないことを書き留め、戻ってから上司に教えてもらったり、自分で調べたりしながら身に付ける。
これが、仕事を覚える方法でした。

そして、社内の専門分野以外の知識や情報(世の中の動向や営業手法のトレンドやノウハウ)は、書店に行き、売れている雑誌や本をチェックしたり、何となく「ピン!」ときた書籍を手に入れて学んでいました。

生命保険会社と人材育成会社。ある程度決まったことをシステムに則って仕事を覚えさせる会社と、常に新しい状況に対応しながら仕事を覚える会社。全て用意された中で手際よく対応することを求める会社と、常に未知のテーマを与えられ、試行錯誤しながら取り組むことを求める会社。当時はただガムシャラに取り組んでいたので全く気づきませんでしたが、置かれた環境により、仕事の覚え方も異なるわけです。

実は、40代以上の多くは、OJTで仕事を覚えてきた人達が大半です。その人達にとって仕事を覚えるとは、きっかけをもらいながら、自分でつかみ取っていくもので、誰かが教えてくれるまで待つという感覚が希薄です。そのため、誰かが教えてくれることが前提となる、「習っていない」という表現に違和感を感じます。その理由は、この表現からとても受け身な印象を持つためです。

若手が「習っていません」という理由
一方、当事者の若手側に視点を移すと、彼らが「習っていない」というのは、ムリもありません。というのは、大きく分けて2つの要因があるからです。
1つは、採用環境の変化。
20年前は、就職活動期に「会社が人材育成に投資しているか」を気にする人はほとんどいませんでした。しかし今は、採用時に「人材育成制度があるか」をチェックする人が増えています。そのため、採用情報には必ずと言っていいほど、人材育成について紹介があり、「基礎から丁寧に指導します」「OJTでしっかり仕事を身に付けていただけます」などの文言が添えられています。彼らにとってみれば、生命保険会社を例に挙げてご紹介した、システムに則った人材育成こそ、イメージするものでしょう。

もう1つは、仕事を覚えにくくなった環境にあります。
IT化が進んだことにより、多くの仕事はパーソナルになっています。そのため、人材育成会社の例でご紹介したような、OJT中心の育成は、上司や先輩の仕事を見て覚えることがしにくく、機能しないと言えます。
また、職場は余裕がない上に、年の近い先輩も少ないため、ちょっとしたことなどの相談や質問もためらわれます。
その結果、様々なことを1人で抱えた上、指示者の意向とズレが生じたアウトプットを出し、評価されない経験を1度でもすると、そこで気持が萎縮します。気持ちの萎縮が起こると、それからは自己防衛を始めます。そのため、「習っていない」という表現をする必要が出てくるのです。

彼らが「習っていません」と言う時は、何の他意もなく素直に言っている場合と、ミスや失敗をしたくないという自己防衛心から言っている場合があるわけです。

「やる気がないのか?」と思った時は
ここからは、若手に「習っていません」と言われ、「やる気がないのか?」と思った時のアプローチ方法をご紹介します。
私は最初、彼らに「やる気がない」ことを前提にアプローチしました。
そのため、「やる気を出すためのアプローチ」に必死になって取り組みました。コミュニケーションを取る頻度を増やしたり、ほめたり、叱ったり、動機づけをするための方法論を試したり、仕事の心構え(自立姿勢)などを伝えていました。

しかし、コミュニケーションを取っていると、何となく違和感を感じます。
彼らは伝えたことはしっかりやってくれるし、ミスや間違いもとても少ないです。私が20代の頃よりも、はるかに優秀とさえ感じます。

どうやら、やる気がないのではないのです。

そこで次に試したのは、「仕事の覚え方」を教えることでした。私が人材育成会社時代にやっていた方法の一部を伝えることです。
例えば、仕事は全体像を見せて、その中で今取り組んでいる業務の位置づけを伝え、その前後も考えながら仕事をすること。
お客様先に同行する機会には、議事録を書いてもらい、その議事録の中でわからない用語を確認し、それを調べる方法を教えること。
1つの仕事が終わったら、課題を見つけてその改善策のアイデアをいくつか出してもらい、やってみてもらうこと。

などです。

すると、「習っていません」という表現は使わずに、「ここはどうしたらいいですか?」や「自分としてはこう考えてみたんですが」という表現に変わっていきます。

その方法が上手くいっているかどうかを測る目安として、私は、メンバー一人ひとりの表情が明るくなっているか、また、口数の少なかった人の口数が増えているか。こんな点をポイントに置いています。

まとめ
ご紹介したアプローチ方法は一例にすぎませんが、「習っていません」と言われ「やる気がないのか?」と頭をよぎった時の参考になれば幸いです。

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