「人材育成」で生まれる「差」
一体何のために人を育てるのでしょうか?以前、ある経営者から、この質問に対するわかりやすいエピソードをお聞きしたことがあります。今日はその話をご紹介します。
その経営者(A社長)は7年前、某企業の研修を依頼されました。A社長は驚きました。なぜならばA社長は、自分が経営する社内勉強会の講師をすることがあっても、社外で教えた経験はなかったからです。しかも、日本国内を代表する一流企業からの依頼です。内心(私に頼まなくても、社内でもできる人がいるはずでしょう)と思ったそうです。
しかし、次の話を聞いて「そういうことならば、やってみましょう」と引き受けたそうです。
その話とは、どのような話だったでしょうか?
研修を相談されたのは、ある事業部門のリーダーでした。リーダーは次のような話をされました。
「私たちのビジネスは現在、国内と海外の両方でビジネスを進めていますが、中心は国内です。しかし、3年~5年先には海外ビジネスに比重を置いて取り組む必要があります。その際、今のままの意識・行動で取り組めば、目標とする成果に到達することは難しいでしょう。そこで今回、社外で海外とのビジネスをアグレッシブに進めていらっしゃる方にご協力いただくことで、意識を変えていただきたいと考えたのです。それにより、行動が変われば数年後に到達すべき目標に近づけるのです」
A社長はこの話を聞いた時、「『目標とする成果の違い』を明確にしてもらえたので、自分にできることがわかった」と言っていました。
この話のポイントは、「3年~5年先に組織がどうあるべきか」と「現在の組織」を客観的に把握していることにあります。そこに「差」があれば、自ずと人材を育成する目的が明確になるからです。(参考イメージ図:「人材育成」の目的とは?)
私たちは日々の業務に追われていると、ついつい将来のことを後回しにしてしまいがちです。ただそれでは、いつまでたっても同じレベルの成果しか出すことができません。どこかで、「こうなっていたい」という理想を持ち、角度を上げる機会が必要なのです。
そこで次回は、「人材育成目標の考え方」をご紹介します。