「省エネルック」と「クールビズ」 ビジネスの成否を分ける3つのポイント
7月もあと10日ほどですが、まだまだ続きそうな暑さ。本来は、地球温暖化対策の一環として平成17年よりスタートしたクールビズ。今年はその基本スタンスに加えて、電力の不足を補う目的も加わり、「スーパークールビズ」として新しいドレスコードが登場。環境省が提示したガイドラインをもとに、各社、各自が状況に合わせた判断をしながら対応しているようですね。
そんなクールビズですが、調べているうちに「これってビジネスに使えるエッセンスがある」ことを発見しましたので、ご紹介します。
1970年代の日本の夏
1970年代は2度、原油の供給ひっ迫の影響から原油価格が高騰するオイルショックがありました。1度目は1973年。社会現象としてよく語られるのは、トイレットペーパーの買い占め。オイルショックのことをよく知らない世代の方でも、この騒動については耳にしたことがあるかもしれません。
第一次オイルショックと言われる1973年には、エネルギー対策の一環として、深夜の電力消費の抑制をしたそうです。テレビの深夜放送の休止、ネオンサインの早期消灯、ガソリンスタンドの日曜休業、プロ野球のナイターの開始時間の繰り上げ、週刊誌や漫画雑誌のページ数の削減といった資源の削減。そして、大型公共事業の凍結・縮小、雇用調整(新規採用の停止、残業時間の短縮など)、関連産業の技術方向の見直しなど様々な対策をとったようです。
そして、1979年に再度訪れた第二次オイルショック。この時には、第一次オイルショックを経験済みだったため、第一次で実施した省エネルギー対策(深夜放送の自粛、ガソリンスタンドの日祝日休業など)と、企業の自助努力による合理化などで、混乱は少なかったようです。
その時、当時の首相 故大平正芳氏が提唱したのが「省エネルック」(写真参照)。この服装は、現在のクールビズの源流になったといわれています。
"1979(昭和54)年6月6日、オイルショック後の省エネルギー対策で登場したのが半袖スーツ「省エネルック」。大平正芳首相自らが首相官邸で国民にアピールした。左は音頭取り役の江崎真澄通産相。涼しそうに見えたが「かっこいい」という反応は少なく、定着しなかった。2009/06/06 12:38 "(写真・記事 【共同通信】配信資料引用)
お笑いネタ?の省エネルック
"スタイルとしては半袖開襟のワイシャツやシャツが特徴的で、東南アジアなど熱帯国のスタイルを取り込む形であった。大平正芳や羽田孜ら人気政治家が着用を推進したことから流行の兆しもあったが、あまりにも見栄えがよくないため、結局はほとんど普及することなく終わった。今日では珍妙なスタイルの同義語的に利用されることがあり、マスコミには笑いの対象にされている。しかし、現在のクール・ビズにつながる先駆的試みとしての役割は大きい。" ウィキペディア「省エネルック」より引用
省エネルックが提唱された当時、私は小学生でした。大平首相の「あー、うー」という口癖とともに、この省エネルックがお笑いネタで取り上げられていたような・・・ないような、そんな記憶があります。
ダウンタウンの"ごっつええ感じ"では、浜ちゃんが袖がないスーツを着て、笑いを取っていたような記憶も。いずれにしろ、省エネルック=ダサいというイメージが定着しています。
ちなみに、あるスーツメーカーのサイトでは、故大平正芳元首相が提唱した半そでの省エネスーツは、「5着しか売れなかった」と書かれていました。
2005年スタート「クールビズ」
一方、私たちの身近になったクールビズですが、その由来をウィキペディアからご紹介します。
"このキャンペーンは2005年に始まったものであり、第1次小泉内閣第2次改造内閣にて環境大臣に就任した小池百合子が内閣総理大臣の小泉純一郎から、「夏場の軽装による冷房の節約」をキャッチフレーズにしたらどうかとアドバイスされた。それ以降、環境省が音頭をとり、ネクタイや上着をなるべく着用せず(いわゆる「ノーネクタイ・ノージャケット」キャンペーン)、夏季に摂氏28度以上の室温に対応できる軽装の服装を着用するように呼びかけた。「クール・ビズ」(COOL BIZ)という表現は、「涼しい」や「格好いい」という意味のクール(英語:cool)と、仕事や職業の意味を表すビジネス(英語:business)の短縮形ビズ(BIZ)をあわせた、グンゼが提案した造語である。2005年4月に行われた環境省の公募によって選ばれた。
2005年の段階では衣料メーカーや百貨店は、かつての「カジュアルフライデー」につづく紳士服の商機ととらえ、開襟シャツなど、ネクタイを装着していなくともだらしなく見えないデザインのシャツや、沖縄で夏のシャツとして普及しつつあるかりゆしウエアの販売を展開した。"(ウィキペディア 「クールビズ」 引用 了)
2011年スーパークールビズ
さて、電力供給のひっ迫から、更なる取り組みを余儀なくされている2011年の夏。さらに6月下旬ごろからの暑さも相乗し、クールビズに興味のなかった人たちでも、取り入れざるおえない状況になっています。
そんな折に環境省が発表した、スーパークールビズのポスター。スーパークールビズの服装ガイドラインを示す効果を狙っている模様です。オフィスのイメージ写真で働くのは、なんと白クマさん達。氷山が溶けて、行き場を失ったのでしょうか。見事にパソコンまで使いこなしている様子。クマも雇用を求める昨今。我々もうかうかしていられません。・・・という冗談はさておき、新しいライフスタイルの提案を受け入れやすく、お財布をしっかり持つ、若手層や女性層を取り込もうという狙いが見え隠れします。
1970年代と、2000年代以降で、似たような目的で推進されたキャンペーンですが、一般層への浸透に大きな違いがあります。時代背景や環境など、様々な要素が関わってきますが、ここではあえて、私たちのビジネスに生かすためのエッセンスを、3つに絞って抽出したいと思います。
3つのポイント
ポイント1:残念ネタを拾う
1979年の「省エネルック」の取り組みは、"思いつき?"な印象です。しかしインパクトのある服装の印象と、「省エネルック」という言葉がその後30年間廃れずに残ったことは、注目に値します。 恐らく「省エネ」は、誰にとっても関心ごとであり、誰でも取り組みやすいテーマなのでしょう。但し、「ルック」となるとオシャレでなかったので、一般の人から敬遠され、残念な結果に終わっています。
しかし、「省エネルック」の本質的な価値を捉えていたのでしょう。新たなテーマと結びつけ、オシャレに進化させたのが小泉元首相。しかも、環境大臣に女性を登用し、推進させたこともオシャレ感に繋がった一因でしょう。
スーツとYシャツの袖を半分に切った「省エネルック」。開襟シャツとノーネクタイの「クールビズ」。この受け入れやすさ、取り組みやすさの違いは、物事を推進する上では押えておきたいポイントです。
残念ネタは、人の気持ちに訴えなかった点を見直すことで、新たな訴求効果があることを示し、0から新しいテーマを探すよりも取り組む価値があることの好例だと思います。
ポイント2:「ネーミング」が重要
ポイント1と合わせて重要なのが、やはり「ネーミング」です。「ネーミング」から想起されるイメージというのは非常に大きいものです。「省エネルック」だと、「何かを省く」ということばかりに意識が向きがちですが、「クールビズ」と言われれば、ビジネスシーンでも合うクール(涼しい、カッコいい)なモノという風にイメージの範囲を拡げることができます。
「省エネルック」でノーネクタイだと、何だか野暮な印象をイメージしてしまいますが、「クールビズ」でノーネクタイであれば、"そっちの方がイケてる"という印象につながる気がしませんか?このような言葉が与えるイメージの違いをしっかり捉えて表現するか否か、それが多くの人の賛同を得るか、得られないかの違いにつながることを、物事を推進するサイドは知っておきたいものです。
ポイント3:参画しやすい環境を作る
「クールビズ」は、一般公募から選ばれた造語です。下着メーカーのグンゼさんが提案されたそうです。このように、新しいテーマを推進する際には、多くの人にテーマを投げかけ協力を求めると、そのテーマに対する理解も深まり、良いアイデアが出てきやすくなります。自分たちと同じ立場の人(この場合で言えば、一企業)が選ばれれば、他の同じ立場にある人も参画意欲がわくものです。この点をうまく活用できないと、推進する側の一生懸命さが空回りし、本来動いてほしい層が全くついてこないという結果となります。
推進する側は、環境を提供することに意識を向け、参画側からのアイデアや行動を引き出す。そこに注力することがポイントです。
今回のまとめ
誠ブログ管理人のさわださんから、お題をいただいた時は、"クールビズと言われても・・・、書きにくいテーマだな"と思っていましたが、調べてみるとビジネスに役立つヒントがたくさん埋もれていました。ご紹介した3つのポイント以外にも、たくさんのエッセンスがあります。是非、クールビズをライフスタイルとしても、ビジネスのヒントとしても楽しんでいただければと思います。
(参考)
環境省ホームページ:スーパークールビズポスター ダウンロードサイト
http://www.challenge25.go.jp/practice/coolbiz/coolbiz2011/download.html
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