スポーツ界の外国人監督たちから見た「ニッポン再考」
今、書店に出ているNumber最新号(No768)「ニッポン再考」は、日本&日本人論としても、とてもすばらしい充実した内容です。
オシム、ザッケローニなど最近のサッカー日本代表監督や、日本のサッカーチームで成功した過去および現役の監督・選手たちにも充実したインタビューがなされています。
似たような話を一人のファンの観察結果として以前に2回ほど以下の記事で書きましたが、それに近い内容を裏付けるインタビューが満載という感じです。
彼らガイジン監督たちがほぼ一様に語るのは、
- 日本人の素晴らしさ=チーム重視の文化、基礎技術の高さ、ルールへの従順さ、フェアプレーさ
- 日本人の物足りなさ=プレッシャーへの弱さ、自信不足、個の弱さ、時にルールを破り自らルールを作る図太さ、結果への淡白さ
です。「ものづくり」は素晴らしいけど、我がままがトリガーになるイノベーションは下手といわれている産業界にそっくりの状況です。
そんな中で、今年J1で優勝した名古屋グランパスのストイコビッチをはじめ、やはり成功した外人監督たちは、日本人(というか目の前の選手個人)の特性を強く理解したコミュニケーション力を持っていたことが理解されます。
例えば、
- 単に「前へ攻めろ」というのではなく「後ろを気にするな」と言って、強すぎる責任感を解放させるとか、
- 「アイツにできてキミにできないわけがないだろう」と、横並び意識やライバルへの嫉妬心に火をつけるような言い方をしたり。。
また、サッカーだけでなく野球をはじめ、他のスポーツにおいてもガイジン選手・監督などのインタビューがなされています。
野球では、元ロッテのボビー・バレンタイン監督や元日本ハムのヒルマン監督などへの取材を元にした記事があり、
- 荒削りの大リーガーに日本の野球を経験させて、「細かい技術を身につけて選出として大成させる」という手法が定番化しつつあるようなこと、
- やっぱり日本の野球はベースボールになることを拒み、選手も監督もファンもバント戦法を好むこと
などが書かれています。
まるで、日本市場で厳しい顧客に技術とセンスを磨かれた上で世界市場に出て行くという「サムソン型戦術」を、大リーグのチームが取り入れつつある一方、日本メーカーは一生懸命に日本市場の日本人ユーザーの声を聞いた結果、益々ガラパゴス化してきたというビジネス界の状況を想起させられます。
他には、オリンピックやアジア大会でメダルの増えてきたフェンシングでも、実は外国人コーチの指導が絶大な効果を発揮しているらしいです。確かに考えてみれば、スキーとかもそうですが、元々日本に根付いた歴史の深くないスポーツでメダリストを出せるレベルになるには、この種のガイジン指導者が居ないはずがないのでしょう。。
同じような話の流れで、大学ラグビーで逆転優勝を決めた早稲田大学の裏側にも、(外国人コーチではないが近い考え方の)指導法として「魂を重視しながらも、自分で考えてプレーすること」が重要視されていたと語られています。
やはり、リーダーたるもの、文化的ギャップを超えて現場・選手のメンタリティを理解しながら上手く人を動かすものだと感心させられます。
じゃあ、日本人の指導者側に「そのレベルのグローバルリーダーは居ないのか」と思ったところ、シンクロナイズド・スイミングで中国のコーチをしている井村氏の話も少し出てきています。
こちらの方は、協会との不仲みたいな話もあるようで、結果重視で敏腕CEOを日本企業は雇い入れることができるか?のような経営者側のメンタリティの問題も想起してくれます。
下手なビジネス書で組織論を読むよりも、オススメです。