小布施という、まちづくりの奇跡
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昨年、小布施若者会議でお世話になった小布施町のまちづくりの歴史を綴った本。あまり予備知識なく訪れてしまったが、泊めていただいた市村良三町長のお宅をはじめ、修景という一大プロジェクトが民間主導で行なわれたことが理解できた。
修景は建物単位で昔ながらの風情を再現する街並み保存と違い、あくまで現代社会の日常の暮らしを守りつつ全体のバランスを調和させる手法。建物単位ではそれぞれの家主や建築家の意図で、結果的には街並みがバラバラになってしまうところ、家の屋根の向きや角度を統一し、建物の位置関係で塀などを無くして生け垣や樹木による滑らかな境界線を描いている。
その結果、修景地区と言われる街の中心部には12000人の人口の100倍の観光客が訪れ、また栗の小径やオープンガーデンといった普通の暮らしの風景が観光資源になるなど、住民参加型でまちづくりを進めている全国でも稀有な地域となっている。
観光需要によって税収が増加して、さらにそれを起業を志す若者たちに再投資することで雇用を創出するといった経済と人材の循環が生まれている。他の地域が真似しようと思っても、小布施町のように合併を拒み自治的に20年もまちづくりを進めてきた地域には決して追いつくことはできないだろう。
まちづくりとは、もちろん経済と人材を抜きにしては語れない。だがそれらの要件を満たすためには、修景のような目に見える事業も必要なのだ。
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