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国内排出量取引なんて要らない

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菅内閣の閣僚会議において、温暖化対策の主要施策の1つであった「国内排出量取引制度」の導入検討見送りが決定されました。京都議定書後の温暖化対策が国際的にも混迷するなかで、日本だけが突出する状況を避ける方針のようです。

温室ガス:排出量取引13年度導入を断念 関係閣僚会議
政府は28日、地球温暖化問題に関する関係閣僚会議を開いた。温暖化対策の主要施策として検討していた国内排出量取引制度について、13年度導入を正式に断念する方針を決めた。早ければ次期通常国会への提出を目指していた同制度の内容を定める関連法案などの議論も当面、先送りする。

同制度では、大企業の温室効果ガス排出量に上限を設け、目標を守るため他企業と排出量を取引できる。国会で継続審議となった地球温暖化対策基本法案に主要施策として盛り込まれ、早ければ13年度の導入を視野に制度設計を検討してきた。


国内排出量取引制度は、いわゆる「キャップ&トレード方式」と呼ばれ、企業や業界毎に温暖化ガス排出量の総量規制(キャップ)を決めて、その排出量の枠を企業間などで取引(トレード)できるようにするものです。つまり、市場メカニズムの活用によって温暖化ガス排出量を抑制する手法です。


この制度設計については、経済界や電力・鉄鋼といった大規模排出源を含む産業界と対話を進めながら検討を進めてきました。しかし、COP16において京都議定書後の枠組みが先延ばしされ不明確であること、景気回復が遅れ産業界への影響が懸念されること、そして政権運営においても与党の参院選惨敗によってねじれ国会となっている現状から法制化は難しい状況となってきました。

温室ガス:「京都」達成の水準に 09年度5.7%減
環境省は27日、09年度の温室効果ガス国内排出量の速報値を発表した。金融危機(08年秋)後の景気後退で企業の生産活動が落ち込んだ影響で、前年度比5.7%減の12億900万トン(二酸化炭素=CO2=換算)と、京都議定書で約束した「マイナス6%」を達成できる水準に収まった。しかし民間シンクタンクは、10年度は景気回復や夏の猛暑などで、排出量が増えると予測している。

09年度は京都議定書の目標期間(08~12年度)の2年目に当たる。日本は同期間の温室効果ガス(CO2を含む6種類)排出量を、90年度より毎年平均で6%減らす義務がある。ただし、森林によるCO2吸収分や海外から購入した排出権(枠)を削減と見なせるため、実際の排出量は同0.6%減(12億5400万トン)でも目標が達成できる。09年度の速報値はこれをクリアした。

排出量のうち、産業や家庭での燃料・電力使用による「エネルギー起源」は前年度比5.6%減の10億7500万トン。とりわけ工場など産業部門が同7.9%減と急減し、90年度比では19.9%減となった。オフィスなど業務部門も前年度比6.6%減らした。


実際に、温暖化ガス排出量は景気後退を受けて減少しており、京都議定書の-6%という目標を達成できる水準にあります。政府はあくまで経済発展と低炭素社会の両立を目指していますが、皮肉なことに経済を犠牲にして低炭素社会が実現しつつあります。


そこにさらに企業活動に対してコスト要因となる、国内排出量取引を導入することは景気回復に水を差す原因になりかねません。円高によって輸出産業を中心に厳しいコスト管理を迫られる一方で、エネルギーや資源の価格高騰によって国内産業の空洞化も進んでいます。


現在の日本に必要な環境政策とは、国内排出量取引のように企業の競争力を減衰させるものではなく、イノベーションを生み出せるインセンティブを用意することです。画期的な技術の実用化を支援して、京都議定書後の国際社会に対して積極的に展開していくような戦略的な投資が求められます。


温暖化対策は、すでに国際的な経済取引になっています。この現状を認めた上で、貿易収支が黒字のうちに構造転換を図ることこそが、日本が課題先進国として世界をリードしていくことに繋がっていくと考えています。







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