2030年度の国内DX市場は5兆円に 交通/運輸、金融、戦略/基盤、製造などがけん引し、拡大
富士キメラ総研は2021年3月15日、『2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編』を公表しました。
本調査では、製造、流通/小売、金融、医療/介護、交通/運輸、不動産、自治体、社会インフラ/建設/その他業界、営業・マーケティング、カスタマーサービス、コミュニケーション、戦略/基盤の12業種と7種類のDXソリューション市場動向を市場編に、DX関連ソリューションベンダー50社のビジネス戦略や国内企業のDXの実施状況や推進体制、投資分野/予算、課題などを把握するために実施したユーザーアンケートをベンダー戦略編にまとめています。
出典:2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 2022.3
DXは企業の重要な課題として位置付けが高まっており、企業価値の向上につながる取り組みとして投資が行われています。
現在は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響からリモート化や自動化などオペレーション改善を目的とする投資やWeb/スマートフォンを軸とする顧客接点改革への投資が積極的に進んでおり、変化への迅速かつ柔軟な対応を目的にシステムの内製化やマイクロサービスアーキテクチャを採用したシステムの実装も本格化しており、2030年度には5兆1,957億円に達すると予測しています。
それぞれの業界をみてみましょう。
製造
製造はOT(生産ラインやシステムの制御・運用技術)環境の可視化やリモート化、サプライチェーンの可視化、分析など事業継続に向けた投資が加速している。設計、開発、生産など生産現場の各プロセス内やバリューチェーン全体を包含したデータ連携やシステム統合などデータ活用に向けた投資、また、技能継承や人材不足といった課題に対する投資、さらにカーボンニュートラル化に向けたグリーンデジタルへの投資も拡大していくとみられる。
流通/小売
流通/小売はスーパーなどの小売店舗における現場担当者の経験知がシステム化され、需要予測・発注業務が自動化されるほか、OMO(Online Merges with Offline)が進展し、実店舗とECの顧客購買データと行動データを活用したRaaS(Retail as a Service)ビジネスが普及するとみられる。また、販売業務の省人化と顧客行動データの取得・活用、購買体験の向上に向けてデジタル店舗技術が浸透し、市場が拡大するとみられる。
金融
金融は次世代の金融基盤構築に向けたAPI活用が進み、他サービスとの相互連携などによるシームレスな社会の実現を目指し、業務プロセス全体の効率化に向けた投資の拡大が進むとみられる。非対面需要に伴う店舗の無人化、省人化に向けた投資拡大が予想される。
交通/運輸
交通/運輸は危険運転や交通事故の防止、安全な輸送サービスの実現に向けた投資、交通情報のビッグデータを活用した事業最適化に向けた投資、故障の予兆検知やメンテナンス時期最適化実現に向けた投資が中心である。MaaS実現に向けたデータ統合プラットフォームの構築、さまざまなサービスの連携や、AIをはじめとした先端技術を活用することで、ユーザーの利便性を高めていくための取り組みを進めている。
自治体
自治体は国内人口が減少に転じ、自治体の予算や職員数の減少が予想される中で、これまで以上の住民サービス提供が求められており、業務標準化、RPA/AIといったデジタル技術の活用による業務の効率化や柔軟な働き方の実現によって、人的リソースの有効利用が進むとみられる。また、オンライン行政手続きやチャットボットによる窓口対応など、住民の利便性/満足を向上させることを目的とした投資が活発になるとみられる。
営業・マーケティング
営業・マーケティングは、業務効率化や売上拡大の実現が期待され、投資が進んでいる。CRM/SFAの導入による顧客とのコミュニケーションの統合的管理、CDP(カスタマーデータプラットフォーム)やDMP(データマネジメントプラットフォーム)の導入によるユーザーに合わせた顧客体験の提供によってCX向上が実現できる。また、オンライン商談ツールによる場所を問わない営業やデジタルマーケティング基盤の整理による営業/マーケティング活動の効率化によってコスト削減も可能となり、投資が活発化している。