コンサルティング品質のばらつきに悩む国内企業、成果を最大化するスキル定義の客観性とは
ガートナージャパンは2026年6月5日、国内企業におけるコンサルティング・サービスの利用実態に関する調査結果を発表しました。国内の多くの企業でカスタム・システムのオープン化やクラウドへの移行、DXなどの戦略策定が進むなか、外部資源の活用は不可欠なものとなっています。しかし、多額の費用を投じているにもかかわらず、期待通りの成果を得られている企業は限定的であるという構造的な課題が浮き彫りになりました。
本調査では、コンサルティング費用そのものの高さ以上に、人材の品質に生じる差異が顧客の大きな不満を生んでいる状況が示されています。今回は、国内企業におけるコンサルティング活用の実態、満足度を押し下げる構造的要因や現場での利害対立、そして、今後の展望について取り上げたいと思います。

国内企業におけるコンサルティング活用の現状と投資規模
ガートナージャパン株式会社が2026年3月に実施した調査によると、国内企業の74.0%が何らかのコンサルティング・サービスを利用している状況です。日本国内における同サービスの市場規模は、2026年に2兆709億円に達すると予測されており、企業の投資意欲は堅調であるといえます。
利用目的の内訳を詳しく見ると、「システム更改などその他ITプロジェクトの戦略/計画策定」が59.7%と最も高い割合を占めています。これに「DX/デジタル・ビジネスの戦略/計画策定」が48.8%、「デジタル/IT人材の育成や関連組織の立ち上げ」が30.5%で続いています。一方で、「プロジェクト開始後の要件定義やPM」での利用は21.7%に抑えられており、上流工程の計画策定に偏っていることが分かります。
顕在化する成果への評価と「半数未満」の満足度
これほど市場が拡大し、多くの企業が依存している一方で、提供されるサービスに対する顧客の満足度は総じて低い水準にとどまっています。同調査において、各利用局面で「期待以上」の成果を得られたと回答した割合は、いずれも半数未満という結果になりました。
具体的には、最も評価が高い「DX/デジタル・ビジネスの戦略/計画策定」でも48.6%にすぎません。さらに、利用頻度が最も高い「システム更改などその他ITプロジェクトの戦略/計画策定」では41.5%、「デジタル/IT人材の育成や関連組織の立ち上げ」では37.8%にまで落ち込みます。「プロジェクト開始後の要件定義やPM」にいたっては34.4%しか満足していません。一定の効果を認めつつも、投じたコストに対して十分な手応えを得られていないという企業の複雑な心境が示されています。
価格以上の不満を生む「品質のばらつき」という構造
顧客企業が抱く不満の背景には、何があるのでしょうか。調査結果によると、すべての利用局面において、費用負担の重さを表す「価格が高い」という項目以上に、「コンサルタントの品質(能力)のばらつきが大きい」ことが最大の不満要因として挙がっています。
例えば、「システム更改などその他ITプロジェクトの戦略/計画策定」においては、39.8%の企業が品質のばらつきを不満の理由として挙げています。DX関連の戦略策定でも32.4%に達しており、外部の支援を受ける際の最大の不確定要素となっている状況です。コンサルティング・サービスが提供するロードマップやプロジェクト憲章などの成果物は、それを担当する個人の構想力や分析力、さらには広範な関係者と合意を形成するコミュニケーション力に依存せざるを得ません。この特性が、均質なサービスの提供を困難にしていると考えられます。
調達現場における「経歴書依存」と運任せの選定
実際の選定や評価の現場では、コンサルティング会社の提案時にリーダークラスの一部の人間のみが紹介され、その他のアサインされるメンバーの具体的な能力や適性が不透明なまま契約に至るケースが少なくありません。顧客側も「この実績ある会社やリーダーが関わるなら安心だろう」という、曖昧な信頼関係に基づいて意思決定を行ってしまう傾向があります。
しかし、このような属人的な判断基準は、プロジェクトに投入されるチーム全体の均質性を保証するものではありません。個人の職務経歴書を並べるだけでは、自社固有の課題やプロジェクト環境に対する真の適性を見極めることは困難です。結果として、高い契約金額を支払いながらも、実際の成果がどのコンサルタントを割り当てられるかという「運」によって左右されてしまうという摩擦が、顧客と供給側の間で常に発生しています。
スキル定義の客観化による代替アプローチの模索
こうした状況を改善するために、調達やベンダー管理を統括する部門には、これまでの商習慣を見直すアプローチが求められています。ガートナージャパンのバイスプレジデントアナリストである海老名剛氏は、選定や評価を即時に改善できる特効薬はないとした上で、契約上の基本合意を徹底する必要性を挙げています。
具体的には、委託する業務の範囲や求める成果物を明確にすることに加え、補完してほしいスキルを客観的に定義し、それを契約上の約束として双方で合意する手法が検討されています。職務経歴書に記載された定性的な説明だけに頼るのではなく、自社が必要とするスキル要件を評価基準として書類や契約に落とし込むことで、人材供給の不確実性を排除する仕組みへの移行が必要となります。
今後の展望
今後は、2兆円を超える国内コンサルティング市場の成長とともに、企業側における外部資源の調達能力の優劣が、そのまま事業の競争力を反映するようになっていくと予想されます。これまでのように外部への依存度を高めるだけの姿勢では、投資対効果の低下を招くだけでなく、期待通りの効果を発揮しなかった場合に、組織内におけるIT投資そのものへの不信感を醸成するリスクが想定されます。
これからの産業構造や技術導入のスピード感に対応するためには、ベンダー管理のあり方を「信頼ベースの属人的な契約」から「スキルの客観的定義に基づくガバナンス」へと移行させることが重要です。発注側の調達部門や事業責任者が、求めるスキルを主体的に定義し、契約履行の管理を徹底していく組織能力を構築できるかどうかが、今後の持続的な成長を見据えた判断が求められます。
