機械と人間の未来(10)ロボットOSの覇権
ソフトバンクが発表した世界初の感情を持つパーソナルロボット「Pepper」の発表は、大きな話題を呼びました。19万8000円という手頃な価格体系で2015年2月から一般販売の開始を予定しています。
「Pepper」の大きな特徴は、人間の感情や声などから感情を数値化し自律的に学習する「感情エンジン」の搭載と、インターネットで接続された「クラウドAI」の機能を持っている点です。「クラウドAI」を通じて、学習結果をデータベース化しフィードバックすることで、成長・進化させていくことが可能となります。
今後のロボットの進展に欠かせないのがロボットOSです。ソフトバンクの100%子会社のアスラテックは2014年6月11日、ロボット全体の動きを制御・管理するソフトウェア「V-Sido OS」とV-Sido OSの一部機能を1枚の基板に実装したマイコンボード「V-Sido CONNECT」を主軸とした事業戦略を発表しました。
基本的なコンセプトは「人とロボットをつなぐOS」です。
出所:アステック新規ロボット事業発表会資料 2014.6.11
ロボットOS「V-Sido OS」には、「リアルタイム」、「安定化」、「効率化」の3つの特徴があり、人の意図が伝わり、安全で、使いやすいロボットの開発が可能となります。
出所:アステック新規ロボット事業発表会資料 2014.6.11
「V-Sido OS」を通じて制御機能やAIとの動作させるようになり、ロボットのハードウェアと連携させることで、ロボットの大きさや構造が異なるさまざまなタイプのロボットへも展開が可能となります。
出所:アステック新規ロボット事業発表会資料 2014.6.11
海外では、すでにロボットOSの動きが活発化しています。シリコンバレーでは、米Willow Garage社が開発し、「オープンソース・ロボット開発財団(Open Source Robotics Foundation) 」が維持管理し、無料で提供しているソフトのROS(ロボット・オペレーティング・システム)です。
このROSの登場により、世界各地で開発コミュニティが立ち上がるなどのソフトウェア開発ブームが起こっています。ロボット上で動く様々なソフトウェアやアプリが提供さるようになり、ROSを中心としたロボット・エコシステムの形成が始まっています。
ROS以外でも、欧州の「Orocos(Open Robot Control Software) 」など多数のミドルウェアが存在しています。
これまでは、パソコンはWindows OSとMac OS、スマートフォンやタブレットはiOSやAndroidがOSなどが激しいOSのシェア争いを繰り広げてきています。過去の歴史からOSでリードしている事業者がその分野をリードしているといっても過言ではありません。
ロボット市場においては、研究開発段階からようやくビジネスベースとして市場が立ち上がりつつあります。今後はロボットそのものではなく、ロボットOSのデファクト・スタンダートの動きも注目されるところです。
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