米連邦政府向けにクラウドサービスを提供するGoogle、Microsoft、Amazon、IBM
日本では、自治体クラウドをはじめ、電子政府・電子政府クラウドに関する議論が始まっていますが、米連邦政府では既にFederal Cloud(連邦政府クラウド)の導入が始まっており、クラウド事業者の政府向けに対応したサービスの提供が目立つようになってきています。
ここでいくつかの政府向けのクラウドサービスを整理してみたいと思います。
Microsoft in Federal Government (BPOS Federal) :マイクロソフト
米マイクロソフトは2月24日、政府専用クラウドサービス「Business Productivity Online Suite Federal」(BPOS Federal)の提供を開始しました。
運用は分離された政府専用の設備で、担当者は 国際武器取引規制に基づき、指紋捺印を含む厳格な身元調査済みの米国市民でるということが明記されています(関連記事)。
また、Microsoftは10月にBPOSの後継製品「Office 365」を発表し、ニューヨーク市からユーザー10万人規模のクラウドサービス契約を獲得しています(関連記事)。この契約により、ニューヨーク市は年間1000万ドル、計5000万ドルのコスト削減を実現できるとしています。
Google Apps for Government :グーグル
米グーグルは7月26日、「Google Apps」の米政府機関への専用版として「Google Apps for Government」を発表しました。
連邦情報セキュリティマネジメント法(FISMA)の基準を満たす初めてのクラウドアプリケーションスイートであるとしています(関連記事)。同法に基づき、Gmailやスケジュール管理などの情報は、米国外には出さず米国本土内の専用システムに格納し、民間データとは隔離することによってセキュリティ基準を満たしています。
「Google Apps for Government」は、米国のNIST(アメリカ国立標準技術研究所:National Institute of Standards and Technology)が定義する「コミュニティクラウド」の条件を満たすため、米国の連邦政府や、州政府、地域政府での利用が可能としています。
Google Appsの政府機関での導入事例では、ワシントンD.C.やフロリダ州オーランド市、カリフォルニア州ロサンゼルス市、米エネルギー省ローレンス・バークレー国立研究所などで採用されています。
グーグルとマイクロソフトによる政府向けの競争も激しくなっています。米グーグルは、10月29日に、米内務省がオンラインコラボレーションサービスの採用検討にあたって、「BPOS Federal」のみ提案できるというRFQとなっており、公正な機会が与えられなかったとして、米連邦政府を提訴しています(関連記事)。
FedCloud :アマゾン等
米アマゾンは10月、「FedCloud 」においてFISMAの要件を満たすクラウド・サービスを、米連邦政府に提供するために Apptis とパートナーシップを結んだことを発表しました(関連記事)。「Apps.gov」から入手可能となっています。
Federal Community Cloud(FCC):IBM
米IBMは11月1日、米連邦政府向けにFISMAの要件を満たす「Federal Community Cloud(FCC)」を立ち上げたと発表しています(関連記事)。IBMでは、国防省や保健社会福祉省など、15の政府機関と協力してFCCの環境を構築しています。また、IBMは同日、地方自治体向けのクラウドサービス「Municipal Shared Services Cloud」も発表しています(報道発表資料)。
以上のように、各事業者が、FISMAの要件を元に、米連邦政府クラウド向けのサービスを積極的に展開しています。日本の電子政府や電子行政のサービスにおいて、民間で提供されているクラウドサービスがどの程度採用されていくのか、また、民間事業者がどの程度政府や行政向けのサービスとして提供していけるのか。「政府情報システム改革検討会」や「自治体クラウド推進本部」などで具体的な検討が進んでいますが、世界各国の政府でのクラウド採用が進んでいく中で、今後の動向が注目されます。
※訂正
「Microsoft 365」を「Office 365」に訂正