在宅介護を、乗り切れる人、つぶれる人。ITエンジニアの耐性は? ~続・ライル島の彼方(n)~

長年、親のケアをしています。ワンオペでオンコール対応12年の後、日参御用聞き18年、2020年からは5年半、在宅介護をしていました。
そして、昨年末、親は高齢者施設に入所しました。いまは、定期的に面会に通いつつ、業務再開に向けて、在宅介護中に山積した事務処理と、住み替えのための片付けや掃除に追われています。
親は単身者向けマンション住まいでした。介護しやすい住居への移転話は、何度か具体化しては頓挫。幻覚対応やトイレ介助のため、24時間の見守りが必要で、6畳の居室に常駐しました。
介護用品が場所をとるうえ、認知機能が悪化している時に、見慣れた家具の配置を変えることは避けなければならず、筆者用のベッドを置くスペースはありません。
当初は、畳の上に着のみ着のまま転がって寝ていました。冬になってようやく、ヘルパーさんが訪問している間に、自宅に戻ることができ、シュラフのお持ち込みに成功。その後、持ち込み香害により畳が移香してしまったため、フォールディングベッドを購入しました。昼間は来訪者があるので折りたたんで移動させるため、キャンプ用の最軽量で最小のサイズ、60cm幅の3ツ折りです。もっとも、夜間トイレ介助が頻回で、眠ることさえままならないので、歯車で肩や腕が傷だらけになる割には、大して役には立っていません。
そして今もまだフォールディングベッド生活です。布団で寝られる環境を作るには、まだ時間がかかります。
この睡眠環境に、ヘルパーさんたちは驚いていました。とくに、着衣のまま床に寝るということが、信じられない様子でした。が、筆者は慣れたもの。このオルタナティブ・ブログは、IT業界向けですから、読者の皆さんは頷くはず。
開発したシステムの運用期間中、OSやブラウザなどのバージョンアップで動作環境が変わる度、即時の対応がもとめられます。米国時間で発表されると夜間対応。また、技術解説書執筆の業務でも、脱稿直前に動作環境が変わると、サンプルプログラムの迅速な動作確認と修正が生じます。着替えて布団に潜り込むなどできるはずもなく、着衣のままパソコンデスクの下で短時間の仮眠をとり、また起きて仕事。
IT業界でなくとも、重厚長大でも、技術の現場では同様でしょう。昭和のサラリーマン時代、新製品発売前の繁忙期、筆者は、寝るためだけに帰宅していましたが、会社に泊まり込む社員もいました。勤務先には、和室の宿泊室がありました。
2000年頃のCQ出版の雑誌の連載陣に、桁違いの強者がいたのを記憶しています。デスク下に敷くための畳を1枚持ち込んだという話をエッセイに書かれていました。筆者の記憶が確かならば、開発歴の長い大ベテランでChatGPT本の著者の方です。作業環境であれ技術進化であれ、臨機応変、変化に柔軟に対応できる方なのだとおもいます。
最近、Xに、創業期のマスク氏がコンクリートの床で眠る写真が流れています。日本人は恵まれていると痛感しました。畳がありますから!
ケアマネージャーによれば、筆者の親の認知症状はかなり重篤な方だそうです。その何晩も続く幻覚や独語への対応をしつつ、嗜好や体調に合わせて三食を作り、トイレ介助をし、香害対応に追われながら、座卓の端にSurfaceを置いて、ブログを書いていました(※1、※2、※3)。こうしたハードモードにあっても、親がいなくなったほうがいいとか、終わりにしたいなどの考えがわいたことは一度もありません。したがって、手をあげそうになったことも、一度もありませんでした。睡眠負債が蓄積しても、マイナスの感情が生まれることはなかったのです。
筆者が潰れなかった最大の要因は、昼夜逆転、徹夜や二徹、床に寝る、緊急対応、そうした生活に慣れていたことだとおもいます。(ただし、筆者は百年一日タイプで適性は真逆です)
介護にまつわる事件が増えています。乗り切れる人、つぶれやすい人、おそらく属性による違いがあるはずです。その最大の違いは、睡眠負債への耐性でしょう。
定時間勤務者で突然介護が始まって離職した人は、脆弱だろうとおもいます。それに比べ、IT業界の現場のエンジニアは、身体面では、在宅介護でつぶれにくいといえます。
ただし、同じ業界でも、デザイナーを兼務しない純プログラマーは、、精神面では厳しい状況になるかもしれません。ロジカル思考は、認知症状と真正面からぶつかることになるからです。
ITエンジニアは、身体面では問題なく、乗り切ることができるでしょう。そして、問題解決型の姿勢は維持しつつ、周辺症状に対しては、ロジックを手放し、イメージで理解するよう心掛ければ、精神面も大丈夫でしょう。
タイトルのイラストは、Copilot(Microsoft Edge / Designer の Image Creator」)で描いたものです(2024年10月14日制作)。掲載済みのイラストは、「絵と詩と音楽」目次