PSTへの道しるべ
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先日に、Xの記事として公開しましたが、Xの記事は流れていってしまうので、それに多少の加筆をしたうえでこちらに記したいと思います。
2025年12月にScrum.org認定のプロフェッショナルスクラムトレーナー(PST: Professional Scrum Trainer™)になったので、軽く日記的に記しておくことにした。
日本人で初めてプロフェッショナルスクラムトレーナー(PST)になりました
Scrum.orgとは
Scrum.orgは、スクラムの生みの親の一人であるKen Schwaber氏が設立した団体で、スクラムガイドにて示した意図を体現する「プロフェッショナルスクラム」を普及するグローバルな団体である。主体となるコミュニティは、300数名のPSTと、100万人を超えるプロフェッショナルスクラムの認定者(うち、およそ半数が認定研修受講者)、Scrum.orgにユーザー登録したメンバーで構成されている。
PSTとは
PSTは、Scrum.orgにその能力・経験を認められたものだけがライセンスさせるものであり、非常に限られたメンバーであることがわかるだろう。私は、光栄にもその「日本人として初めて」PSTに認定された。
PSTになると、ライセンスを保持している認定研修コースの講師を担当できるようになる。言い換えると、PSTだけが、Scrum.orgが厳格に管理し、メンテナンスし続けている認定研修コースウェアを用いて正式な認定研修を提供できるのだ。
余談だが、Scrum.orgの認定研修は、統一された認定研修コースウェアを用いる。これは、PST固有の教え方や経験値を制限しているわけではなく、一定の品質を保ちつつ、受講者にPSTとしての知見を惜しみなく提供できる仕組みにしていることを指している。これについては、PSTについて記されたページも参照されたい:
ちなみに、PSTとしての長沢にアクセスするには、以下を見ていただきたい:
PSTへの道
この投稿を見ている人の何割かはPSTになることに関心がある人たちなのだろうと推察する。そこで、簡単に私自身の経験をもとに記しておきたいと思う。なお、私の体験は皆さんとは異なる部分がある。なぜなら、私はPST選定のプロセスの大きな転換のまっただ中にいたからだ。従ってここから先に記載している事柄はこれからPSTを目指す人たちにとっては若干の違いが見られるだろうということを予め述べておきたい。
Scrum.orgは、スクラムの価値基準を体現している。従って、PSTへなるための道のりも公開されているのだ。
ここから辿れば、欲しい情報はほぼ全て入手できる。従って、「PSTになりたいけど、情報がない」といった時点で、PSTにはなる気がないといっても過言ではないだろう。
公開されている情報としては、以下のフェーズでセレクションをすると記されている。
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必須となる資質
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知識と実践経験
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トレーニング技術
ただし、ここに至る前にアプリケーションの提出がある。要するにPSTになりたいですよとScrum.orgに宣言するのだ。
私のときには、フリーフォーマットであった。主に記載しなければならないのは以下であったと記憶している:
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スクラムマスターやプロダクトオーナーとしての具体的な経験を5つ
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推薦者の氏名と連絡先
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その他(忘れた)
具体的な経験は、アジャイルコーチとしてではなく、実践者としての経験だ。
私の推薦者は、Sam Guckenheimer氏にお願いした。快く引き受けてくれたSamGuに改めて感謝の意を表したい。
今は、テンプレートが用意されているようだ。テンプレに従い、エントリーできるのでPSTになることに関心があるならば、試しにテンプレに入力してみるといいだろう。
さて、先に紹介したセレクションの3つの項目のうちで、私が最も重要だと感じたのは「必須となる資質(Core Qualifications)」だ。厳密には、これと「知識と実践経験」がセットになっているイメージだが、とにかく経験主義やスクラムについての理解、実践(失敗、成功、アウトカム)を何度も何度も聞かれる。それだけではなく、簡潔にまとめる能力、表現力なども同時に見られる。
このゲートをパスしないとPSTにはなれないというのは、PSTになった今だからこそ、実感できるものだ。
その他必要な情報は、とにかく公開されている。従って「見つからない」と思ったら、それはあなたがPSTになるに当たって熱が足りていないのかもしれない。
PSTになるのにどれくらい要したか
あまり記憶が確かではないが、2021年からのチャレンジだったと記憶している。従って、かれこれ4年半ほどかかったことになる。
通常は、アプリケーションを通過してから2年程度(短いと半年もある)だと聞いたことがある。その意味では私はだいぶ寄り道をしているようだ。
言い訳をさせていただくと、アプリケーションはすぐに通過し、PST候補のコミュニティには早々に参加することができていた。先述したようにプロセスの見直しなどもあり、いわゆる「待ち」のステータスであった期間もある。ただそれ以上に、私が「待たせてしまった」時間が大半であった。この間も密なコミュニケーションを継続してくれ、言語の壁がある中で道を模索し続けてくれたPST担当のD氏には感謝してもしたりない。怖くて聞けていないが、おそらくPST候補に最も長く居座った自信がある。
「待たせてしまった」中でも、彼らの実験的な取り組みに"被験者"としてこの身を捧げたりしていたのもいい思い出である。きっと今後のPSTセレクションにも役に立ててもらえるだろう。
PSTになって何をしたいか
私がPSTになって何をしたいかというと、それほど野心的なものは正直いってなにもないのだ。
わたしは、Ken Schwaber氏の考え方が好きで、PSTの仲間たちが好きで、このコミュニティに貢献した気持ちが大半なのだ。それにプラスして日本のコミュニティへの貢献というのももちろんある。
PSTとしてライセンスされた認定研修コースをデリバリーするモチベーションも当然あるのだが、それも貢献活動の一環としての位置づけだ。
私がライセンスを保持しているコースは、「エビデンスベースドマネジメント(EBM)」(PAL-EBM)なので、このコースを通じて、EBMを適切に理解し、実践してもらいたいと考えている。
認定試験にも合格する人が増えることでEBMを適切に理解し、実践してもらえる環境が増えると思っている。それによって、ビジネスアジリティが高まったり、よりスクラムやアジャイルを実践できる環境が整ったり、これらに自信を持てるようになり、顧客価値に邁進できる現場が増えることを望んでいる。
EBMはアジャイルを実践するうえで基礎科目であり、必須の考え方だと捉えている。それはたとえスクラムを実践していると自認しているからといって顧客に価値を提供できていない現場があったり、上手くいっていても意図なく解体されるチームがあったり、成果の出ているプロダクトとそうでないプロダクトでの投資バランスが崩れていたりといった「現場あるある」からも明らかだと捉えているからだ。
私自身は、PSTであろうが、なかろうが、スタンスに変わりはない。それは今後も同じだろう。このコミュニティに貢献することが喜びであり、好きでやっているので、望まれようが、望まれなかろうが、成果が出ようが、出なかろうが、あまり関係がないのだ。ビジネスとしてやっている意識も"ほぼ"ないので、儲かるから続ける、儲からないからやめるということもないだろう。
最後に
PSTになりたくてこの投稿を読み進めてくれた人には感謝したいが、残念ながらこの投稿を読む時点で、おそらくPSTには向いていないだろう。
PSTになりたいならば、信念をもって、ご自身とScrum.orgと向き合ってほしい。コミュニケーションが全てだ。レシピに従ったらなれると思ったら大間違いだということだけは知っておいてほしい。
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