IBMのSun買収が実現したらクラウド市場はどうなるか?
米IBMが米Sun Microsystemsを買収する交渉を進めているという記事が様々な形でとりあげられています。その可能性については、定かではありませんが、仮に交渉が成立した場合に、市場にどのような影響を与えるのでしょうか?私自身は、IBMとSunのそれぞれの事業内容や戦略を理解しておりませんが、クラウドに関しては多少なりとも理解しておりますので、クラウドにおける相乗効果を自分なりに整理していきたいと思います。
IBMは、「Blue Coud」構想に代表されるように、近年クラウドコンピューティングに大きく舵を切り、特に、エンタープライズ分野のプライベート・クラウドに注力しています。日本においてもクラウドコンピューティングを推進するクラウドコンピューティング事業推進部を設置し、全社横断的なクラウド展開し、3月には、プライベート・クラウドの構築に向けたコンサルティングなどの構築支援サービスを提供していくことも公表しています。また、最近では、Amazonとも提携し、IBMの一部のソフトウエアを「Amazon EC2」で利用できることも発表しています。
一方、Sun Microsystemsは、1983年の創業時から「The Network is The Computer」というフレーズを使い、「ネットワークこそがコンピュータであり、ネットワークに接続されていないコンピュータには価値がない」と創業時から一環しています。「The Network is the Computer」 という言葉はサンでは、「ビジョン」と呼んでいるようです。「クラウドコンピューティング」という言葉が使われるようになったのは、2006年8月の「検索エンジン戦略会議」でグーグルのCEOエリック・シュミット氏が講演の中で使ったのが始まりと言われています。シュミット氏は、サン・マイクロシステムズのCTO(最高技術責任者)出身であり、サン・マイクロシステムズにいたころに、「The Network is The Computer」の理念に大きく影響を受けたようです。
Sun MicrosystemsのCEOジョナサン・シュワルツ氏は、2008年4月に、「クラウドとは、ネットワーク・コンピューティングを新しい言葉で言い換えたものだ」と発言しており、サンの「ビジョン」が世の中にも広まってきているという見解を示しています。
実際に、アメリカ本社においては、シュワルツ氏直轄の2008年11月に1000人単位クラウドコンピューティングの事業本部を設置し、さらには、2009 年1月7日、2009年1月7日、クラウドコンピューティング環境のソフトウェアを開発、提供するベルギーの「キューレイヤー(Q-layer)」を買収を発表するなど、クラウドコンピューティングの事業の強化をはかっています。
そして、Sun Microsystemsは、3月18日にオープンソースをベースとしたクラウドサービスのプラットフォーム「Sun Open Cloud Platform」の提供を公表しています。夏には、パブリッククラウドの「Sun Cloud」の提供も予定しており、Sunも急速にクラウドへの戦略に舵をきっているように見られます。
そこで、気になるのが、両社がどのようにクラウドを統合し、そしてビジネス展開をしていくことになるのかが興味深いところです。SalesforceはGoogleやAmazon、そしてFacebook等と連携を強め、Microsoftは、AzureやWindows Online等本格的にクラウド市場に参入しようとしています。そのほかにもHPやDell、そしてVMware、Oracle等もクラウド市場に自社の強みをいかしながら、参入してきています。そして、これまでエンタープライズのSI市場に大きな影響力をもってきた巨人IBMとSun連合が実現すれば、今後のクラウド市場大きな影響力を増すことになるでしょう。クラウドの普及に伴い、勝者と敗者の優劣が鮮明になり、クラウドの市場は拡大する一方で、SIの市場は中長期的に見て縮小の方向に進むのではないかと考えられます。そこに、日本のIT企業がどのように食い込んでいくのかというのも注目されるところです。
IBMがSunを買収が確定するのか定かではありませんが、いずれにしても、クラウドの本格的普及に伴い、各社の買収や連携の動きはさらに強まっていくことになるのではないかと個人的には考えています。