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【-】失敗に学ぶ、ネットの実名表記で肝に銘じるべきこと

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 ここにきてネットの匿名性についての議論が活発になっています。デキビジ「勝間 vs ひろゆき」を巡っては様々な意見が飛び交い、オルタナでも大元さんがこの話題を機に自分の意見をこちらで実直に披露されています。またブログでの匿名・実名について、多数のオルタナブロガーが意見を述べています。
 
 わたしも当ブログ、Twitter、そして著書において、実名で書かせていただいている一人です。実名であるべきか、匿名がよいのか、もちろんわたしなりに思うところがあってやっているつもりです。が、それ以前の話として、実名で書く際に肝に銘じるべきだと痛感していることがあります。今回は自分の痛い経験を晒しながら、思うところを書いてみます。
 
 それは、「公に発言するという行為の重さ」という話です。なーんだ、そんなこと当然じゃないか、と思われるかもしれません。わたし自身、著書・ブログ・Twitterいずれもそうした気持ちを持って表現しているつもりです。というより、リクルート在籍時代からメディアに関わる仕事をしてきたわけで、いつもそれを心に刻んで従事してきたつもりです。
 
 しかし。過去にわたしが繰り返してきた、取材して原稿書いて印刷して、といったメディア制作のプロセスを経ることなく、今ではクリック1回で世界に情報を発信することができてしまいます。そうした手軽さ・便利さを甘受し、毎日のように発信し続けている中で、わたしは上述した責任意識に欠け、配慮を怠ってしまう失敗を犯しました。
 
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 昨年10月8日。オルタナブロガー佐々木康彦さんブログ「平凡でもフルーツでもなく、、、」における記事のコメント欄で、わたしは重大な失言をしてしまいました。

★佐々木さんの記事:
「ブロガーイベントに最近まともな企業は手を出さなくなってきていると言うけれど、そんな時に考えてみたい一手」


 詳細は記事とコメント欄をご覧いただくのが一番早いのですが、、、この記事ではブロガーイベントについての考察がなされている中で、「ウェブはバカと暇人のもの」の著者として知られる中川淳一郎さんへの日刊サイゾーでのインタビュー記事が引用されていました。
 
 わたしはその記事内容に違和感を覚え、コメント欄にて、実名で意見を書き込みきました。すると数日後、中川さん本人(確証はありませんが、そうだと思われます)からコメントの書き込みがありました。そこには、わたしのコメントへの詳細な反論が示されていました。
 
 中川さんの反論は、わたしのコメントの内容、中でも「ブロガーイベント=効果無し、という決めつけは、ブログの全体像をまるで見ていない人の言うセリフでしょう。そうした人に、もっともらしくブログを語ってもらいたくないですね」という部分に向けられていたと思います。
 
 正直に書けば、この時まで、わたしは中川さんについてほとんど存じ上げておりませんでした。著書も読んでいなければ、中川さんの経歴や見識、日本最大級のブログポータル会社が運営するニュースサイトの編集者で、膨大な時間と労力をWebに費やしている人であるということをまったく認識していませんでした。そんな彼に対し、あたかも「わたしよりもブログに無知である」と言わんばかりの発言をしてしまったのです。
 
 サイゾー記事における中川さんの発言に「木を見て森を見ず」と批判したわたしこそが、実は「木」しか見ていなかった。目の前に示された情報だけで判断し、中川さんの見識を揶揄するような発言をしてしまったのです。ちょっと調べれば、中川さんのインタビュー記事における発言が、多数の経験に裏付けられたものであるということが容易に察しがつくはずなのに、そんな基本を怠っていたのです。本当に失言でした。おごり、傲慢さがあったと言われても仕方ない。自分の非に気づいた後、わたしは再度コメントにて、中川さんに丁重に謝罪を申し上げました。
 
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 実名であれ匿名であれ、公での発言に責任が生じるのは同じことだと思います。しかしながら実名の場合は、発言者の社会的立場や実績、人格などを背負って表意することで、その発言の信憑性を担保することになるため、より重い責任が生じるということを忘れてはなりません。
 
 
この件以後、中川さんの著作を拝読しました。これまでにメディアの編集者として、何度となく自ら責任をとる行為をとってきたことを、自身のブログや著書で書かれています。公の場で発言することの責任の重さを体感しているからこそ、わたしの発言に強く反論を示されたのだと思います。
 
 先週、津田大介さんとのトークイベント「Twitterはバカと暇人のもの?」のUst配信を拝聴しました。その中で彼がメディアにピュアに対峙している姿を垣間見、わたし自身の発言をあらためて振り返り、身震いを覚えました。そして著作にせよブログにせよTwitterにせよ、実名で公に発言することの重さを再度考えました。
 
 中川さんには、この場を借りてあらためて謝罪を申し上げると同時に、言葉の重みを再認識させて頂いたことに感謝を申し上げます。わたしが言うまでもなく、今は誰もがメディアを使って公に情報発信を行える時代となっています。だからこそ、発信者は権利と義務、自由と責任をきっちり知らなければいけない。その重さをちゃーんと踏まえた上で、ポチッとやらないと。そんな当たり前のことを、あらためて考えた5月連休でした。。。

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