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【272人】なぜ五島列島が「移住の聖地」なのか(後編)

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五島空港から車で20分ほど。富江町という小さな港町に、te to ba <手と場> という名の小さなカフェがあります。地域おこし協力隊の一員として五島にやってきた村野麻梨絵さんが、元々はかつお節工場だった古民家を改修し、カフェをオープンしたのは今からおよそ7年ほど前のこと。以来ずっとこの地で、五島にごだわり、五島ならではの食材を使って、五島らしい味を来島者に振る舞う飲食店をやってきました。カフェとしてだけでなく、五島につながる品々を取り揃えて物販も。

その2年後。まりえさんは近所に、来島者にもっと町を、島を楽しんでもらう拠点としてゲストハウス ta bi to を開業します。次には五島の自然や伝統文化の拠点を活用し、ここでしかできないオリジナルな挙式を提供するウエディング事業を始めます。

そして今年。かつて写真館や書道教室として使われていた建屋を譲り受け、今度は美術館を開こうとしています。五島ならではの自然、文化、生活、食、人のあたたかさなどを、アートを通じて広く日本中に、いや世界中に発信する拠点としたい。まりえさんは、ここ五島をアーティスト・イン・レジデンスの拠点としたいと考え、古い建屋を借り受けました。

一見、関連性のない事業にも見受けられる多角化ですが、実は芯がちゃんと通っています。それは五島ならではの良さ、つまり豊かな自然や、それがもたらす至極の食材、脈々と受け継がれる伝統や文化、そして暮らす人々のあったかさなどを、何らかのサービスに変換し、来島者に伝えようとしているのです。

「住み続けられる島をつくりたいんです」とまりえさん。te to ba <手と場> という名前には、そこに集う人と人をつなぐ場になればという願いが込められています。その願い通り、多くの人々がte to baに集まり、つながり、その良さを味わい、体験し、周囲に発信しています。五島に移住してきた人で、te to baの存在を知らない人は多分いないんじゃないでしょうか。

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カフェの開業から7年、走り続けてきたまりえさんですが、実はここに来て大ピンチだと言います。事業はどんどん広がり、まだまだやれること、やりたいことが増えているようですが、何せ人が足りない。そう、一緒にやってくれる人手が不足していると。カフェもホステルもウェディングも美術館も、とにかく担い手が足りてない。まりえさんいわく、「今、五島で最も移住者を求めているのは、わたしです!」と。アイデアが溢れてくるまりえさんには、志を共有できるビジネスパートナーが必要なのでしょう。

そして美術館も、現在資金調達の真っ最中。クラファンで美術館への想いを語り、支援を求めているところ。「計画では、島外や海外のアーティストを招き、五島の自然や文化をテーマにした作品を制作・展示していただきます。その過程を子どもたちが見学したり、実際にワークショップで体験したりすることができるようにします」とキラキラした目で語るまりえさん。まあなんとも夢がある話だと思いませんか。

2月に五島に来て、いろんな人と話してわかったこと。それは、五島に移住してきた人たちが関わる仕事は実に多種多様だけれど、みなさんに共通しているのは、五島が持っている良さを、来島者や島外の人々に伝えたいという想いを持っていることです。ここte to baがそうであるように、そんな仕事に就ける機会が五島にはたくさんある。これこそが、一年に【272人】もの移住者が生まれ、五島が移住の聖地と呼ばれる最大の理由なのではないでしょうか。

▼te to ba <手と場> リクルート<手と手を合わせて場をつくる>
▼te to ba <手と場> クラウドファンディング<五島の記憶をアートで記録する てとば美術館を作りたい!>

【272人】なぜ五島列島が「移住の聖地」なのか(前編)もご覧ください

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