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【週1時間】文科省発、高校キャリア教育必修化でする胸騒ぎ

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 今のところ、読売新聞の記事しか根拠がなく、当該者の文科省から公式な発表が出ているようではないので、こんな話は空を切ってしまう可能性が高いのですが…という前置きをしつつ、とはいえ気になるところもあるので、思うところを少しだけ書いてみますね。
 

キャリア教育、高校普通科の必修に…文科省検討
 

 高校生の進路への意識を高めるために、文部科学省は高校の普通科で「キャリア教育」を必修化する検討を始めた…(中略)…文科省は、将来への目的意識を持たせることで、学習意欲の向上につなげたいとしている…(中略)…同省は学ぶ目的を明確に持たせるため、キャリア教育の内容を具体的に示し、全学校での実施をめざすことにした。早い段階で進路の意識付けが必要なことから、授業は「高1段階で週1時間程度」とする案が検討されている。

 
YOMIURI ONLINE 1月15日(火)3時3分配信記事より一部引用

 
 とにかく「キャリア教育の内容を具体的に示し」とされる中身を早く知りたいところです。「高1段階で【週1時間】程度」とまで書いていますから、それなりの青写真ができているのでしょうか。
 
 これは単なる想像に過ぎませんが、文科省のいう「将来への目的意識を持たせる」ということが、「将来やりたいシゴトを見つけさせる」ということを意図しているとしたら、それはちょっと危険だなと思いました。文科省が捉える「キャリア教育」が何を目的としているのか、つまり「将来の自分(の職業)を見つけさせる」ことを目標に、自己分析させたり、適正診断受けさせたり、社会人講話を聞かせたり…といったメニューに終始すると、結局今の大学が抱えていて超えられない壁を、高校時代にも築くだけじゃないかなって、按じたりするわけです。
 
 そもそも。働く前に、将来なりたいシゴトを決めさせるような目標設定の仕方に無理があると思うのはわたしだけでしょうか。それどころか、世の中にどんなシゴトがあって、それにはどんな意義があるのか、どんな大変さがあるのか、などといった基本的な職業教育をパスしておいて、「将来何がやりたいか考えようね」というのは危険じゃないかと。まぁ、わたしが記事の文脈から勝手に想像しているだけですので、間違っているならよいのですが。

 わたしの妄想の背景には、文科省は「キャリア教育」と「職業教育」を分けて考えており、ざっくり言えば、職業教育は専門学科で教えるものと位置づけていることがあります。(気になる方は、文科省が作成している高等学校キャリア教育の手引きをご参照ください) 今回の「キャリア教育必修化」計画が、対象を「高校普通科」としているのは、ここに起因するのではと考えます。しかし、職業教育の入り口あたりにある職業知識の習得は、将来の職業選択を考えれば、普通科高校の生徒にこそ必要な知識ではないかと思うわけです。
 
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 終戦直後に、こんな教科書があったことをご存じでしょうか。以前に知人から見せていただき、愕然としたものです。たとえば今、これが必要だという議論なら、すぐに賛同したいところですが。その意味で、今回文科省が投げかけた(いや、これから投げかけるのでしょうか)波紋が、「キャリア教育って何をすべきだろう」をあらためて考えてみる契機になればよいと思います。
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