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【272人】なぜ五島列島が「移住の聖地」なのか(前編)

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最近、というか、コロナ以降というか、移住という言葉をあちこちで見かけるような気がしています。ちょっと前までなら、移住というのは、たとえば定年とか、たとえば親が高齢とか、何らかの事情で仕事に一区切りを付けて生活拠点を変えようとする時に意識するようなキーワードだったと思うのですが、最近はもっと身近になったというか。

コロナ下でリモートワークが市民権を獲得してからは、会社を、仕事を変わらなくても生活拠点を変えるチャンスを手にする人たちが、年齢を問わず増えてきたと思います。またデジタルツールがあればどこでも仕事ができるような人たちも少なからずいて、便利だけど犠牲にするものも多い都会生活を離れて、自然環境が豊かな地域に生活拠点を移している人が一定層いたりする。考えて見れば、最近の移住は、IT系のお仕事をされている方々との相性がいいのかもしれません。たとえば完全に移住とまではいかなくても、ITツールを駆使して2拠点生活をエンジョイされている方々もいらっしゃる様子。このあたりは統計的な調査を調べればもっと説得力をもって説明できると思うのですが、今日の本題からは少しずれるので、また別の機会にでもと思います。

わたしは名古屋市郊外のベッドタウンに住んでいます。それこそ田畑と住宅がほどよく混在するような地域。最寄り駅から名古屋駅まで電車1本で30分もかからない。そんな環境で農業ベースの事業を楽しんでいたりします。ちょっと前のニュースで、群馬県が移住先ランキング2位になったと知りました。この場合の移住感覚から、いざとなれば1~2時間くらいで都心にもアクセスできる便利さをキープしながら、日常生活は自然に恵まれて住宅費も都心より割安な場所でQOLを上げたい人たちが多くなっているのかなと想像したりします。

最近、ご縁があって、長崎県の五島列島に行ってきました。五島市は、長崎県の五島列島にある人口5万人くらいの小さな町です。実はこの五島、移住の聖地と言われているらしい。2023年度に五島市に移住してきた人が【272人】もいて、直近5年間での移住者数が1,177人にもなるとのこと。正直、驚きました。

わたしが五島に行ったのは2月で、いわゆる観光シーズンからは外れた時期。まあ本当に魚が美味いとか、野菜が、果樹が美味いとか、ベタな感想ですが食の宝庫であることはすぐにわかりました。自分が農業ベースの事業を営んでいることもあって、この地の魅力は十二分にわかりました。一方で、独自の伝統文化もきっちり残っていて、世界遺産の江上天主堂をはじめ、魅力的なポイントが多々。実は一番大きな福江島の五島空港には、福岡便と長崎便が一日4往復飛んでいます。こうした利便性も大きな魅力なのかもしれません。

五島市役所に出向いて、移住関係の情報を探ってみました。ここの地域協働課にはちゃんと「移住促進班」なるチームがあって、移住支援員と呼ばれる移住支援の専門家3人が、微に入り細に入り移住希望者のサポートをしてくれます。このあたりが、他の市町との違いなのかな。

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ずばり、気になるお金のことを聞いてみました。「ウチよりもっとすごい市町さんもありますから」といいながら、どうしてどうして、驚きの手厚い制度を教えてくれました。移住支援金なら2人世帯で100万円!。もちろん条件があるけれど、これは結構大きい。他にも奨学金返還助成制度があって、学生時代に借りた奨学金の一部(年間最大で36万円!)を助成してくれるとか、涙出そうな嬉しさ。ほかにも面接旅費助成、子育て世帯引越し助成、空き家バンクリフォーム助成とか、これでもかという手厚さ。結構すごい気がしませんか。

もちろんお金のことだけじゃない。住まい、仕事探し、いろいろ生活上の不安点をひとつずつ丁寧に相談にのってくれる。こうした島の人たちの移住者に対する気持ち、みたいなものが、実はとっても大きいのかなと。市役所の中を歩いているといろんな人が声を掛けてくれる。この辺のあったかさが、妙に染みるのであります。

(後編に続く)

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