【Coffee Break】GE Lightingの要望とDrupalのPIMモジュールに類似点があることはほとんど知られていない(今のところ)
ITベンダーが提供するパッケージは、バージョンアップを重ねる中で、企業のニードを吸収し、それをコアコンピタンスにしていることがあります。今回は製品ベンダーの姿勢という観点から、このことを考察してみます。
「CMSとPIMの違いを知る人は少ない(今のところ)」で、以下のようにリレーショナルデータベースの縦横構造にコンテンツを格納することの限界を示しました。
「グローバル製造業がページ単位のコンテンツのマネジメントにフォーカスするCMSを導入したりすると、外部に製品情報データベースを構築する必要性が出てきます。しかし、この製品情報データベースをOracleなどのリレーショナルデータベースで正規化して実装したとしても、製品情報の管理項目の構造が変わったり、廃番になったり、カテゴリーが変わったり、多言語化が必要になったり、と業務が必ずしもリレーションデータベースの性質に合うものではないのです。そこで製品情報の管理部分だけが発展したPIM(Product Information Management)というカテゴリーの製品が注目されるようになってきました。」
私が以前に携わっていた製品は、もともとはリレーショナルデータベースの縦横の表に収まるコンテンツのみ(Basic Asset)を扱い、PIMの機能(Flex Asset)は含有していませんでした。しかし、米国のGE LightingからDXFファイル(AutoCAD形式)や、GE Lightingの全製品がカテゴリーで格納でき、データベースの知識のない人でもデータベース構造を変更できるUIを持った機能が欲しい、という強い要望があり、エンジニアの創意工夫でPIM機能を実現しました(したがって、当時PIM機能はオプションモジュールだった)。
また、「DAMとCMS(eBASEとDrupal)とPIMの違いを知る人は極めて少ない(今のところ)」で紹介したeBASEに、以下のデータベース構造定義が柔軟に設定可能な機能があります。
「● フレキシブルなデータ構造とノンプログラミング開発環境
各種マスタ(商品、顧客等)のレコード構造(項目)は属するカテゴリー別に異なります。カテゴリーの種類と同じ数のデータベース構造定義が柔軟に設定可能です。又、利用現場の多様なニーズにタイムリーに対応すべくフレキシブルに改変が可能です。これらを実現するノンプログラミング開発ツールも取り揃えています。」
eBASEのルーツは凸版印刷の関西画像研究所から生まれたものですが、大阪にはGE Lightingのような企業があり、そこからの強い要望からこの機能はビルトインされたのかも知れません。
このように、複雑なユーザーのニードに真正面から向き合う姿勢は、製品の進化という意味でとても大切です。
ちなみに、無料オープンソースのDrupalは、世界各地でニードに向き合って開発されたモジュール(ディストリビューション)を組み込むことで進化する製品で、PIM機能は、Commerce KickstartやフランスのAkeneoなどを搭載することで実現可能です。
「製品情報をカタログ化するにはたいへんな手間がかかる。現在、ほとんどの会社では手作業でExcelファイルをアップデートしているというのが実情だ。そこでこの作業には多額の人件費がかかっている。われわれのシステムはこれを画期的に効率化できる」(オープンソース、多言語対応のカタログ管理ソフト、AkeneoがExcel地獄の解消を目指すより)
eBASEも、Commerce Kickstartも、Akeneoも、GE Lightingのようなユーザーの強い要望があり開発したものなので、一見すると地味ですが、現実のビジネスで切実に必要とする課題に着実に応えている、という意味で価値ある製品ではないでしょうか。
● CMSとPIMの違いを知る人は少ない(今のところ)
http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/2015/08/_coffee_breakcmspim.html
● CMSやマーケティングオートメーションを全体から捉えたい方は、
【シーズン1】デジタルのマーケティング(全15話)をご参考ください。
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/1/
● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/
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