【Coffee Break】CMSとPIMの違いを知る人は少ない(今のところ)
CMSはコンテンツの管理方式により2タイプに分類できます。コンテンツをHTMLのひとつのページ単位で管理するものと、コンテンツを商品単位の粒度(SKU)で管理するものです。前者はブログ管理ツール的なものから商用の数千万のものまであり、後者も無料のDrupalのようなオープンソースから高価なものまであります。
トライベック・ブランド戦略研究所のWebサイト価値ランキングの2015年にNo1はANAで、B2Bサイトでは9年連続No1(V9)はオムロンです。この対照的な構造の2つのサイトで、このことを考察してみましょう。
航空会社のサイトにはオムロンのようにたくさんの商品情報がありません。チケットの予約がメインで「移動サービス」が代表的な商品となります。この形態が地域や季節などの変動要因で変化するものなので、基本的にコンテンツの粒度という意味ではシンプルな構造になり、グローバル化もしやすいものです。制御機器などを販売するオムロンは多くの製品とその形状やオプションから構成されるので、製品単位の粒度(SKU)で製品情報コンテンツの管理が必要になります。
CMSは会社情報やプレスリリースなどのページ単位のコンテンツに加えて、商品情報コンテンツをマネジメントするものですが、ページ単位のコンテンツ管理にフォーカスしたものと、前述のように商品情報マネジメントにフォーカスしたものがあり、どちらもCMSと呼んでいます。そのため、グローバル製造業がページ単位のコンテンツのマネジメントにフォーカスするCMSを導入したりすると、外部に製品情報データベースを構築する必要性が出てきます。しかし、この製品情報データベースをOracleなどのリレーショナルデータベースで正規化して実装したとしても、製品情報の管理項目の構造が変わったり、廃番になったり、カテゴリーが変わったり、多言語化が必要になったり、と業務が必ずしもリレーションデータベースの性質に合うものではないのです。そこで製品情報の管理部分だけが発展したPIM(Product Information Management)というカテゴリーの製品が注目されるようになってきました。IT部門が構築するMDM(Master Data Management)は商品の材料や価格や在庫など商品マスターとしての機能を持ちますが、PIMはマーケティングで活用するコンテンツなどの情報を管理する基盤となります。当然、MDMとPIMは連携していないとオムニチャネルのリアルとネットで在庫数の不一致が生じてしまいます。
CMSとPIMの関係を整理すると、以下の3つのタイプに分類されます。
- ページ単位のコンテンツ管理主体のCMS
- 商品のSKU単位のコンテンツ管理主体のCMS(PIM内蔵型)
- CMS with PIM(PIMとCMSをマイクロサービス方式で連携)
PIMを内蔵していないCMSをeコマースやグローバル製造業で活用する場合、他社のPIMとの連携が必要になります。DrupalはPIMモジュール(Drupal Commerce)を搭載することができますし、Agility MultichannelやSAP HybrisなどのPIMに特化したものはDrupalと連携することができます。
CMSという言葉から連想されるコンテンツ管理は、業種によりマネジメントするコンテンツの粒度の違いによってPIM機能が必要になる場合があり、それはCMSに内蔵されていたり、PIMに特化した製品と連携して活用されるものなのです。一般的なWebサイトをデザインする制作会社はPIMという概念をご存知ない方や、CMSというとHTMLのページをマネジメントするものと認識している人が多く、さらに、IT部門はデータマネジメントとしてMDMをご存知でもPIMをご存知ない方が多く、今のところCMSとPIMの違いを知る人は少ないのです。しかし、PIMの必要性はオムニチャネルと日本企業のグローバル化により急速に高まっており、ここ数年以内に加速度的に普及するため、今後は「違いの分かる人」が急速に増えてくることでしょう。
● エンタープライズCMSをオープンソースCMSに置き換えれるか!?
http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/2015/05/1_2.html
● CMSやマーケティングオートメーションを全体から捉えたい方は、
【シーズン1】デジタルのマーケティング(全15話)をご参考ください。
http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/1/
● 雑談のネタ 【Coffee Break】
http://blogs.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/
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