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クライアントの言葉に傷つくことのあるSIの方や、SIの言葉に何か騙されているような気がしているクライアントの方へ

« 2010年10月20日

2010年10月23日の投稿

2010年10月30日 »

自分のバンド用のtwitterでフォローさせてもらってる方の『「阪急電車」読了』というつぶやきで、「阪急電車」という本があることを知る。

その人が鉄オタでないだろう(そんな話はしたことが無いけど)とは思うし、何より、阪急電車の車両の画像が掲載されているような本なら、わざわざ読了とは書かないだろう。

短縮URLリンクがついていたけど、Desireでそのツイートを読んでいたので、すぐにはクリックしなかった。後でクリックしてみる。Amazonの商品リンク。どうやら有川浩の小説らしい。

Amazonの商品ページの、『商品の説明 出版社 / 著者からの内容紹介』にはこう書かれている。

恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセラー『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集

阪急電車をつかまえて、”関西のローカル線”、と表していることから、少なく共、京都線、神戸線、宝塚線を題材にしている訳ではないことは容易に察しがつく。

片道15分・・・箕面線か、千里線か、今津線か・・・。いや、意表をついて、淡路で分岐して天六から地下鉄堺筋線に乗り入れる方もあるぞ。だいたい、あの線何線って言うんだ?

あとから考えれば、甲陽線や嵐山線もあったのだけど、その2つはその時思い浮かばなかった。逆に言えば、箕面線、千里線、今津線が自分の大阪生活時代に一番身近であったから。

会社の帰り、会社の最寄り駅の駅前にあるちょっとした本屋、でも個人経営では無い風情の、確か別の場所でも同じ名前の本屋を見たことがあるから、チェーン店なんだと思う、今から電車に乗って帰る人、また電車に乗って帰って来た人が割と溢れているその本屋に立ち寄ってみたものの、有川浩の「阪急電車」らしきものはどこにも見当たらなかった。

「Amazonで見た時、新刊っぽい雰囲気だったから、絶対あると思ったのにな・・・」文庫の本棚全部、平積み、なめ回すように見てみたけど無かった。この本屋、こういうことちょくちょくある。それ程広く無い、というところもあるんだろうけど、出てまだ日が経っていない本が普通に置いてない。・・・だからネット書店にやられていくんじゃないの?とか色々思ったが、それはここに書きたい本題では無いのでまた別の機会に取っておく。

そうだ、図書館は?と思い、いつも利用している練馬区と板橋区の図書館の在庫状況を見てみたが予約待ちが数名居る。それに、自分が気を惹かれた本ぐらい、借りるんじゃなくてきちんと買っても良いのではないか、と思い直し、予約することをやめる。

それこそネット書店で買っても良かったのだが、まず、その「阪急電車」のモチーフとなっている線がどこかを確かめてから買いたい、と思っていたので、機会がある時まで買うのをやめることにする。

ある日、うちから比較的近所の本屋に立ち寄ってみると、普通に平積みで置いてあった。そうなんだよ、これが普通なんじゃない?いや、今のご時世においてはさすが、というべきか、あゆみBOOKS。普段から「酒とつまみ」なんて本まで置いてあるだけに、きちんとしてらっしゃる。

手にとって目次を見てみる。「今津線だ!」買うこと決定。いや、買うつもりでは居たのだが、100%の全力で買おう、と決意したのは、それだけ自分には今津線への、いや、今津線周辺についての想い出があったから。

誰かと比較した訳ではないけど、きっと人より遅い方なんじゃないか、と思われる自分の読書のペースだが、合間合間の時間であっという間に読み上げることができた。それは内容が軽薄だった、という訳ではなく、中に描かれている世界感がみずみずしくドラマチックであり、その一方で”フィクション”としてありがちな、「それはないやろう」という展開ばかりで構成されている訳でもなく、きっと自分の普段の生活にもこういうことって実はあるんだろうな、という日常感が、余計に親近感を持たせて、「で、どうなっていくの?」「ああ、そうくるかぁ」と思わせて早くページを進めたくなったのかもしれない。それでいて、ちゃんと伏線が張られているので、テキトーに読み飛ばしてはいけない。文字を一字一句丁寧に拾っていった方がより楽しめるので気を抜けない。

自分の読み進め方は、この本においては少し他の人とは違うかもしれない。何せ自分は通学で今津線を使っていたのだ。その学校に通うずっとという訳ではなかったけど。途中から色んな諸事情が重なり、バイクや車で通うことが多くなったけど。それでも、小中高と、徒歩、自転車、バスで通学するような所しか通ってなかった自分にとって、「通学に使っていた電車」と言えば、主として今津線である。だから、小説を読み進めるにあたって、そのモチーフとなる場所や情景、またそれらの場所であった自分の出来事や想い出が勝手に思い浮かんできてしまう。もう二十年弱経ってしまっている浅い記憶にも関わらず。

実際、自分が通っていた頃と様子が変わってしまった場所が多々あることは知っている。その理由の一つに阪神・淡路大震災も影響しているのだが、変わった理由はそれだけでは無いだろう。でも、小説を読み進めていく際に思い浮かんでくるのは、昨今、里帰り時に偶然通りかかった際に見た新しい記憶ではなく、昔のもの。

一浪の受験時、社会の代わりに数学で受験して大設問が3問ある中、何度検算しても「これ満点じゃ無いのか?」と思った自分。その帰りに、一緒に受けに行った高校の同級生から、まさに阪急電車の車内で「今年から、社会と国語の配点150点になってんで」と教えられ、それで「もしかしたら受かってるかも」と思った自分。そもそもその大学を選択した理由。もとい、その大学を候補として選択した理由。自分の実力が無さ過ぎて、結果として言えば大学を、いや、学部も含めて選択できる権利は自分には無かったこと。残念ながら入ってそうそう学校に馴染むことを諦めた自分。一年経たずに辞めてしまった軽音サークル。その軽音サークルに入った偶然とも言えるきっかけ。話をするぐらいの友達は居たが、今も付き合いが残るような友達は一人としてできなかったこと。自分自身で生み出してしまった拒否感・・・。

今津線とは直接関係の無い想い出だが、それらは連鎖的に出てくる。

仁川の手前から一部を除いてほぼ今津線に並行して長く続く道を西宮北口に向けて歩いてみたこと。車窓の風景。通学定期は西宮北口経由で。でもたまには気分を変えたいからあえて宝塚まわりで帰ることを選択したり。定期があるので、門戸厄神駅から乗るべく、色んな道を歩いてみて帰ったこと。その途中で見つけた、山陽新幹線のトンネルの入り口とそこにある公園から見る自分のお気に入りの景色。今津線沿いにあったバードランドスタジオ、スタジオの帰りによったモスバーガー。甲東園駅の西側にあった、ボリュームの多い自家製コロッケ定食を出してくれる喫茶店(名前忘れた)。東側にあった、寂れたショッピングセンター。その中にあった薬局で買ったもの。その横のよく止めた駐車場。仁川の川沿いの道から見る、川と今津線のコントラスト。小林のあたりで逃げるようにカーブしていく中津浜線(※今はGoogle Mapで見る限り、その面影は無さそうだけど)

・・・キリが無いぐらい。

昨今、これ程まであの頃の想い出を思い出すことは無かった。大学時代のことを思い出す、と言えば、「ちゃんと教育機関としての利用をすべきだった」と後悔することぐらい。

特に自分の場合は、と明記すべきであろうけど、最近読んだ中で、一番自分の心に入り込んで来た本。良い出会いを与えてくれた、twitterのつぶやき主に感謝。

t-senoo

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妹尾 高史

妹尾 高史

某輸送用機器製造メーカー勤務。国内四輪販売会社向けのITによる業務支援企画部門所属。
ミニ鍵盤奏者、という新しいミュージシャンカテゴリーを開拓中。

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