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「歴史から明日を読む」をモットーに、ITと制度に関する話題をお届けします

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ソニーが大規模なリストラクチャリング計画を発表した。日経新聞は9月16日の朝刊でソニーが金融部門を売却すると大々的に報じたが、やはりこれは誤報だったようだ。我が家は結婚以来ずっとダブルポケットなのだが、新聞1面の大見出しを見て「えーっ」と思わず声を上げたのは、これで二度目となった。最初は夫で、山一證券の倒産だった。今回はわたしで、ソニー銀行に預金がある。

ふと、山一證券からソニー銀行の社長に転じた石井茂さんの顔が目に浮かんだ。石井さんには、ソニー銀行の開業直後のシステムトラブルが一段落した頃に、雑誌のインタビューで一度お会いしたことがある。日本の金融業の将来についてとてもしっかりとしたビジョンをお持ちのうえ、ネット銀行の将来性を熱く語られた。

素人目には、ネット銀行が本当に日本で離陸できるのかまだ不透明に見えた時期だった。しかし、派手な宣伝をしない代わりに、情報システムと個人顧客へのサービスに着実に投資していることがわかり、わたしは好印象を抱いた。そして、取材後しばらくして、社会人になってからずっと利用していた都市銀行にあった預金をソニー銀行へ移した。

都市銀行は、わたしのような小額預金の個人顧客にとても冷たい。窓口では待たされるし、ATMは行列で並ばされ、預金金利は低いのに、あまり欲しくもないティッシュペーパーなどのプレゼントをくれる。その点、ソニー銀行のサービスは実にシンプルで気持ちがいい。しかも、都市銀行で相次いでいる顧客情報の大量流出という問題も起していない。

つい最近、パスワード変更がうまくいかず困って同行の顧客窓口に電話をかけのだが、すぐにつながり、わたしの困った状況を瞬時に把握して適切な回答が返ってきた。パソコンや家電製品ではこんなことはめったにないので、とても感動した。問い合わせや修理の相談窓口の電話はいつも混んでいてなかなかつながらない、やっとつながったと思っても待たされたり、たらい回しにされたりする。こんな状態に、わたしたちはあまりに慣れすぎてしまった。

だから、日経新聞の記事に驚き、一瞬、「逆ではないか。不採算のエレクトロニクス部門を売却して順調な金融部門を残したほうがいいのではないか」と思い、すぐに「いや金融部門を売るなら今かもしれない。高く売れるはずだから」と考え直したほどだった。

ソニーのエレクトロニクス商品は青春時代のシンボルだった。一時期ラジカセとウォークマンが手放せなかったわたしは、コンピュータ産業の記者になると、ソニーが初めてパソコン「SMC-70」を発表したときも、3.5インチ・フローピーやUNIXワークステーションを発表したときも、真っ先に取材に飛んでいった記憶がある。そして、取材にはソニーのカッセットテープレコーダーを常に携帯していた。

しかし、このレコーダーは残念ながら見かけほど頑丈ではなかった。わたしはすぐに壊してしまい、何度も買い替えるはめになった。そのうち「なぜ、もっと丈夫なつくりにしてくれないのだろう」と不満を感じ、他メーカーの製品へ移ってしまった。また、だんだん歳をとるにしたがい、ウォークマンにもテレビゲームにも興味が遠のいてしまった。わたしにとってのソニーは「エレクトロニクスから金融へ」と完全にシフトしている。

9月22日に発表されたソニーの経営改革計画によれば、本業のエレクトロニクス部門に集中する方針を決定したという。金融事業部門の売却は当面見送られたようだが、報道でみる限り、将来の売却の可能性までは完全に否定していないようにも受け止められる。

グループの大規模な再編計画にソニー銀行がまったく影響を受けないわけはないだろう。ただ、一ファンであり、一顧客であるという立場から、「これまでどおり基本に忠実で誠実なサービスを続けてほしい」と願うばかりだ。

suna

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プロフィール

砂田 薫

砂田 薫

情報社会学の専門研究所、国際大学グローバル・ コミュニケーション・ センター(GLOCOM)の主任研究員です。
「情報政策の国際比較」「グローバル化とIT産業」に興味があります。

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