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「歴史から明日を読む」をモットーに、ITと制度に関する話題をお届けします

最近、オンラインゲームや「セカンドライフ」のような仮想世界に関心を持つようになった。とはいえ、ユーザーとして参加しているわけではないので、この世界を理解しているとはとても言えない。ただ、勤務先の国際大学GLOCOMで若い研究者たちから話を聞く機会が増えて、それまでオンラインゲームにはまるで関心がなかった私ですら、もしかするとこれは現実の社会経済秩序を変えるような大きなインパクトをもたらす可能性があるのではないか、と考えるようになったのだ。

GLOCOMが発行している『智場』最新号(108号)の「特集:ゲーム・デヴォリューション」を読んで、その思いはますます強くなった。特集は、ゲームの歴史と産業動向、「セカンドライフ」を運営するリンデンラボの土居純氏へのインタビュー、仮想経済をテーマとした山口浩駒澤大学助教授と鈴木健GLOCOM主任研究員の講演録などで構成されている(詳細は http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/108/)。

「レボリューション」といえば「革命」だが、「デヴォリューション」とは、手元の電子辞書を引くと、発展段階における「分化」という意味と、政治的な義務や権利の「自治権委譲」「分権」という意味の二つの意味を持つようだ。この特集は、前者の意味をこめて「ゲーム機戦争を傍目に拡張し拡散し続ける最新のゲームの世界を取り上げ」、後者の意味をこめて「多様化するユーザーたちが、プログラマーたちが、Devolutionを求めて立ち上がろうとしている。この動きが真のRevolutionになるのか」という問題意識を出発点として編集されている。

いまの私の関心はまさに後者のほうにある。なかでも、ユーザーたちが自由に創発的につくりだす仮想世界のガバナンスや社会経済の秩序はどのようなものか、それが現実にどのような影響を与えるか、がとても気になっている。
RMT(リアル・マネー・トレード)という言葉を最初に教えてくれたのは、特集の編集の中心となった井上明人研究員だ。「RMTとはゲーム内で流通している仮想通貨による取引を指す」という説明を聞いても、最初はなんのことだかさっぱり理解できなかった。オンラインギャンブル用の電子マネーかと勘違いしたほどだ。どこかで現実のマネーに換金されて、儲かったり損をしたりするようなサイバー版のカジノではないかと想像した。

しかし、これはまったくの見当違いだった。あくまでゲームに勝ちたいという欲求を満たすことが最終目的なのだという。そのために「アイテム」と呼ばれている武器や装備を購入する仮想通貨が使われるようになったらしい。アイテムを増やすには長時間プレイするしかないそうで、時間に余裕がある学生や職業についていない人たちが断然有利となる。そこで、忙しくてプレイ時間をなかなか取れない社会人は、手っ取り早くRMTによってアイテムを購入し、短時間でゲームを楽しむというわけだ。

ややこしいのは、ゲームに勝つことが目的であっても、アイテム取引用の仮想通貨がオンラインゲーム内にとどまらず、現実世界のマネーと連動してきた点にある。それによって、実際にお金持ちになった人もいれば、アイテム獲得のために長時間プレイできる「労働者」(ゲームプレイヤーと呼ぶべきだろうか・・・)として雇われている人もいるという。

ここまでくると、ゲームの「アイテム」はまさに経済取引の対象となる「バーチャル財」と呼ぶのが適切な存在であることがわかる。ゲームであればアイテムも限られるだろう。ところが、セカンドライフのようなユーザー次第でビジネスでもレジャーでも何でもできるという仮想世界になると、もはや現実と変わらないほど膨大なバーチャル財が生まれてくる可能性がある。セカンドライフ自身のビジネスモデルは、同サイト内での土地販売と有料メンバーシップという単純なものであったとしても、そのプラットフォーム上でユーザーが多種多様な経済活動を繰り広げれば、いわば自然発生的に多様な財や取引ルールができてくるはずだ。

オンラインゲームを含めたネット上のさまざまな仮想世界では、すでにバーチャル財を取引する通貨だけでなく市場もできたり、資本家と労働者の関係が生まれたり、たとえばドイツに住んでいる人がアメリカに設置されたサーバを使って中国に住む人を雇ったりといった国際分業までも行われているそうだ。

経済学には不案内だが、国家が貨幣発行権を独占しないこのような自由な経済空間は、もしかするとハイエクが思い描いたような世界と共通点があるのだろうか。そして、その世界の内側に見られる光景は、富の配分が著しく不均衡で、マルクスが指摘したような労働者が資本家に搾取される構造なのだろうか。

米ソ冷戦下の「資本主義vs社会主義」の時代が終わって、国によってそれぞれ異なる「資本主義vs資本主義」の時代へ移行したといわれてきた。とすると、さらに次は「リアル資本主義vsバーチャル資本主義」の時代と呼ばれるようになるのだろうか。

それにしても、もともとお金儲けを目的にプレイするのではないオンラインゲームで、誰でも自由に参加できボランティアな活動がベースになってきたインターネットの世界で、政府や大企業によるコントロールを排してユーザー自身が秩序をつくる民主的な仮想世界で、あたかも剥き出しの資本主義が顔を出してきたように見えるのはなんとも不思議で皮肉な感じがしないでもない。

suna

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コメント
藤井 啓正 2007/02/21 00:38

 オンラインゲームの事は、パソコン&ゲーム機関連の雑誌で聞いた事はありますが、正直言って、私には分かりにくいです。
 確かに、見えない誰かと競い合ったり、交流の場を広げたりも出来ますが、ネットマネー目当てでプレイする者もいると言う話も聞きます。
 なんだか、変な話ですよね・・・。


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砂田 薫

砂田 薫

情報社会学の専門研究所、国際大学グローバル・ コミュニケーション・ センター(GLOCOM)の主任研究員です。
「情報政策の国際比較」「グローバル化とIT産業」に興味があります。

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