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「歴史から明日を読む」をモットーに、ITと制度に関する話題をお届けします

勤務先の国際大学GLOCOMで、機関誌『智場』115号を発行しました。

国際大学GLOCOMは2009年10月20日、「ICT、社会変革、オープンなネット参加」を主テーマとするイベント「GLOCOMフォーラム」を開催しました。智場115号ではそこでの議論の詳細レポートを掲載したほか、新たに論文と対談を加えて編集しました。115

主な内容は以下のとおりです。

・巻頭論文「日本の社会変革は起こせるのか?―オープンな参加、ICTの可能性」(渡辺智暁)
・パネル討論「日本のICT活用のシナリオ:制度、組織、文化からの検討」(パネリスト:ケビン・ワーバック×夏野 剛×津田大介×石黒不二代×木村忠正、司会:渡辺智暁)
・対談:「オープンな議論、オープンなイノベーション、インターネットの役割」(ケビン・ワーバック×関口和一)
・論文「Twitter政治」は民主主義を増進するか」(庄司昌彦)
・対談:「日本企業を変革するICTパワー」(山本順二×篠彰彰彦)
・「講演:ICT活用 日本の挑戦」(夏野 剛)
・「動画生中継のグーテンベルク的変化」(井上明人×庄司昌彦)
・「事例で見るICTの社会変革力」(山崎富美)
・「日本はネット・ネイティブな国になることができるか」(渡辺弘美)
・「デジタル・ネイティブの教育」(豊福晋平)

*デジタルコンテンツはGLOCOMのホームページhttp://www.glocom.ac.jp/j/chijo/115/index.htmlで順次公開します。

*紙版はアマゾンで販売しています。

suna

最近、オンラインゲームや「セカンドライフ」のような仮想世界に関心を持つようになった。とはいえ、ユーザーとして参加しているわけではないので、この世界を理解しているとはとても言えない。ただ、勤務先の国際大学GLOCOMで若い研究者たちから話を聞く機会が増えて、それまでオンラインゲームにはまるで関心がなかった私ですら、もしかするとこれは現実の社会経済秩序を変えるような大きなインパクトをもたらす可能性があるのではないか、と考えるようになったのだ。

GLOCOMが発行している『智場』最新号(108号)の「特集:ゲーム・デヴォリューション」を読んで、その思いはますます強くなった。特集は、ゲームの歴史と産業動向、「セカンドライフ」を運営するリンデンラボの土居純氏へのインタビュー、仮想経済をテーマとした山口浩駒澤大学助教授と鈴木健GLOCOM主任研究員の講演録などで構成されている(詳細は http://www.glocom.ac.jp/j/chijo/108/)。

「レボリューション」といえば「革命」だが、「デヴォリューション」とは、手元の電子辞書を引くと、発展段階における「分化」という意味と、政治的な義務や権利の「自治権委譲」「分権」という意味の二つの意味を持つようだ。この特集は、前者の意味をこめて「ゲーム機戦争を傍目に拡張し拡散し続ける最新のゲームの世界を取り上げ」、後者の意味をこめて「多様化するユーザーたちが、プログラマーたちが、Devolutionを求めて立ち上がろうとしている。この動きが真のRevolutionになるのか」という問題意識を出発点として編集されている。

いまの私の関心はまさに後者のほうにある。なかでも、ユーザーたちが自由に創発的につくりだす仮想世界のガバナンスや社会経済の秩序はどのようなものか、それが現実にどのような影響を与えるか、がとても気になっている。
RMT(リアル・マネー・トレード)という言葉を最初に教えてくれたのは、特集の編集の中心となった井上明人研究員だ。「RMTとはゲーム内で流通している仮想通貨による取引を指す」という説明を聞いても、最初はなんのことだかさっぱり理解できなかった。オンラインギャンブル用の電子マネーかと勘違いしたほどだ。どこかで現実のマネーに換金されて、儲かったり損をしたりするようなサイバー版のカジノではないかと想像した。

しかし、これはまったくの見当違いだった。あくまでゲームに勝ちたいという欲求を満たすことが最終目的なのだという。そのために「アイテム」と呼ばれている武器や装備を購入する仮想通貨が使われるようになったらしい。アイテムを増やすには長時間プレイするしかないそうで、時間に余裕がある学生や職業についていない人たちが断然有利となる。そこで、忙しくてプレイ時間をなかなか取れない社会人は、手っ取り早くRMTによってアイテムを購入し、短時間でゲームを楽しむというわけだ。

ややこしいのは、ゲームに勝つことが目的であっても、アイテム取引用の仮想通貨がオンラインゲーム内にとどまらず、現実世界のマネーと連動してきた点にある。それによって、実際にお金持ちになった人もいれば、アイテム獲得のために長時間プレイできる「労働者」(ゲームプレイヤーと呼ぶべきだろうか・・・)として雇われている人もいるという。

ここまでくると、ゲームの「アイテム」はまさに経済取引の対象となる「バーチャル財」と呼ぶのが適切な存在であることがわかる。ゲームであればアイテムも限られるだろう。ところが、セカンドライフのようなユーザー次第でビジネスでもレジャーでも何でもできるという仮想世界になると、もはや現実と変わらないほど膨大なバーチャル財が生まれてくる可能性がある。セカンドライフ自身のビジネスモデルは、同サイト内での土地販売と有料メンバーシップという単純なものであったとしても、そのプラットフォーム上でユーザーが多種多様な経済活動を繰り広げれば、いわば自然発生的に多様な財や取引ルールができてくるはずだ。

オンラインゲームを含めたネット上のさまざまな仮想世界では、すでにバーチャル財を取引する通貨だけでなく市場もできたり、資本家と労働者の関係が生まれたり、たとえばドイツに住んでいる人がアメリカに設置されたサーバを使って中国に住む人を雇ったりといった国際分業までも行われているそうだ。

経済学には不案内だが、国家が貨幣発行権を独占しないこのような自由な経済空間は、もしかするとハイエクが思い描いたような世界と共通点があるのだろうか。そして、その世界の内側に見られる光景は、富の配分が著しく不均衡で、マルクスが指摘したような労働者が資本家に搾取される構造なのだろうか。

米ソ冷戦下の「資本主義vs社会主義」の時代が終わって、国によってそれぞれ異なる「資本主義vs資本主義」の時代へ移行したといわれてきた。とすると、さらに次は「リアル資本主義vsバーチャル資本主義」の時代と呼ばれるようになるのだろうか。

それにしても、もともとお金儲けを目的にプレイするのではないオンラインゲームで、誰でも自由に参加できボランティアな活動がベースになってきたインターネットの世界で、政府や大企業によるコントロールを排してユーザー自身が秩序をつくる民主的な仮想世界で、あたかも剥き出しの資本主義が顔を出してきたように見えるのはなんとも不思議で皮肉な感じがしないでもない。

suna

ご無沙汰しました。お久しぶりです。にもかかわらず、宣伝でたいへん恐縮ですが、講演会のお知らせをさせてください。

日本情報処理開発協会(JIPDEC)が編集している情報化白書は今年で創刊40周年を迎えました。それを記念して11月20日(月)に『情報化白書創刊40年記念講演会ー情報化の未来を創る』が開催されます。

情報化の先端的な動向を感じ取りたい、歴史的な視点から情報化の大きな流れを把握したい、日米韓豪における放送と通信の融合の最新事情を知りたい、という方にお勧めです。また、情報化やメディア融合について興味がある方、これから勉強してみたい方、ITの専門家として情報社会の未来について考えてみたい方、お待ちしています。

■日時: 2006年11月20日(月) 13:00~17:00

■会場: 全社協・灘尾ホール
           (〒100-8980 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル)
■参加費:無料

■【プログラム】
1.主催者挨拶「白書40年にあたって」
                   児玉 幸治(財団法人日本情報処理開発協会 会長)

2.特別講演「情報化の新潮流」
                 石井 威望(東京大学 名誉教授)
3.基調講演「情報化の未来を創る~個人が主役に」
         砂田 薫(国際大学グローバルコミュニケーションセンター)
4.パネルディスカッション「メディア融合の日米韓豪比較」
   モデレータ:篠崎 彰彦(九州大学大学院)
   パネラー  :上田 昌史(国立情報学研究所)
          清原 聖子(東京大学大学院)
           三澤 かおり((財)国際通信経済研究所)
           杉本 幸太郎(アウトロジック・インコーポレイテッド)

■講演会の詳細、参加お申込みは、以下のURLをご覧下さい。
 http://www.jipdec.jp/seminar/

suna

先週、ITジャーナリストの先輩と大阪に出張した。わたしたちはビル・ゲイツと同世代。帰りの新幹線で、えびせんと柿の葉寿司をつまみに缶ビールを傾けながら、梅田望夫著『ウェブ進化論―本当の大変化はこれから始まる』(ちくま新書)の話でひとしきり盛り上がった。

車中の話題は、ブログからソーシャルタグ、オープンなインターネットとセミクローズドな日本のSNS、さらには2001年9月11日の同時多発テロ以降の価値観の変化にいたるまであちこちへ飛んでいったが、これはビールのせいだけでなく、さまざまな論点を含んだ刺激的な本であることが一番の理由だろう。読み手の関心によって、いろいろなテーマで語ることができる。
そのなかで、Web2.0についての理解を深められたというが共通の感想だった(と思う)。

むろん、「Web2.0」ということばはこれまで何度も耳にしてきた。しかし、インターネットの「こちら側」(利用者側のフィジカルな世界)の技術進歩に付いていくことすらおぼつかないわたしにとって、「あちら側」(インターネット空間側のバーチャルな世界)で起こっている技術革新の本質を理解することはとうてい不可能だった。
単にインターネットの活用方法が変わるだけではないのか。結局はIT業界がいつの時代も必要としてきたバズワードにすぎないのではないか。
正直言って、その程度の認識しか持ち合わせていなかった。

本書は、このようなテクノロジーに疎い旧世代の読者にとっても、わかりやすくウェブ進化の方向を解説している。しかも、「もしかすると、ウェブの進化によって社会に大きな変化がもたらされるかもしれない」と考えこませてしまう説得力をもっている。だからベストセラーになったのだろう。

Web2.0を説明するために、著者はふたつの対立的な概念を採用している。ひとつは(すでに本稿でも引用した)ネットの「こちら側」と「あちら側」だ。もうひとつは「不特定多数無限大」に対する「信頼なし」と「信頼あり」だ。そして、前者を横軸、後者を縦軸でクロスさせて、区切られた4象限をそれぞれ次のように分析している(同書223頁の図を参照)。

(1)「こちら側」「信頼なし」:大組織の情報システム
(2)「こちら側」「信頼あり」:リナックス
(3)「あちら側」「信頼なし」:ヤフー・ジャパン、楽天
(4)「あちら側」「信頼あり」:Web2.0

ああ、なるほど。わたしにとって、これはWeb2.0のもっとも核心を突いた説明だった。そして、この解説を読みながら、著者が示唆している日本の未来は、山岸俊男著『安心社会から信頼社会へ』(中公新書、1999年)で描かれている「信頼社会」と共通するものがあるのではないかと思った(注)。
閉じられた内輪の社会での安定を求めるのではなく、不特定多数への信頼感にもとづく開かれた社会へと日本を変えていこうというメッセージなのではないか、と。

山岸理論によれば、「安心社会」とは、村落共同体や終身雇用の会社共同体をつくりあげた日本のように、人間同士の関係が安定していてわざわざ相手が信頼できるかどうかを考えなくても安心して暮らせる社会を指している。ここでいう「安心」とは不確実性がないと感じられる状態を意味している。
一方、「信頼社会」とは、アメリカのように、人間関係が流動的で不確実性があったとしても相手を信頼しようとする傾向が強い社会を指している。「信頼」ということばは、相手の「能力」への期待と「意図」への期待の両方を含んだ意味で使われている。

とするならば、崩壊しつつあるとはいえ伝統的に「安心社会」を形成してきた日本は、不特定多数への「信頼なし」の技術開発に適合的だったのではないか。実際、日本企業は「信頼なし」のIT開発を得意とし、これまでにアメリカへのキャッチアップをほぼ達成してきた。一方、「信頼あり」のほうは今のところそこまでの成果を上げていない。

また、ウェブの進化が「あちら側」「信頼あり」へ向かっているのだとすれば、不特定多数が利用する検索エンジンやポータルサイトを通じて、人びとの「能力」や「意図」をデータベース化しようとする技術開発のベクトルが働くことも、ごく自然な流れのように思われる。

ここまで考えて、『ウェブ進化論』が示唆する日本の未来は、藤原正彦著『国家の品格』(新潮新書)が理想として描く日本の姿とは対極にあるのではないかと気づいた。現在の日本では、まったく異なる進路を予感させる本がともにベストセラーになっているわけだ。わたし自身がまさにそうであるように、これからの日本社会の変化をよく見通すことができなくて、キョロキョロしている人が案外多いのかもしれない。

*注:『ウェブ進化論』を読んで『安心社会から信頼社会へ』を思い浮かべた人は他にも絶対いるはずだと思い、グーグルで「ウェブ進化論 信頼社会」で検索してみました。やっぱり、あった! ブログ「極私的脳戸」です。

suna

2月14日(火)に熊本市のKKRホテル熊本で「平成17年度地域情報化セミナー in KUMAMOTO」が開催され、わたしもスピーカーのひとりとして参加いたします。

主催は総務省九州総合通信局と経済産業省九州経済産業局。セミナーの統一テーマは「住民視点での電子自治体構築と地域経済の活性化」で、入場無料です。
セミナーの詳細:http://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/jyoho/060214sem/annai.htm

このセミナーの特徴は、電子自治体の最新動向として注目されている二つの事例が報告される点にあります。ひとつは、阪神大震災での多大な犠牲と被害を乗り越えて全国トップレベルの電子自治体をつくりあげた兵庫県西宮市で、情報政策部長の吉田稔さんがお話になります。同市は、住民の安心・安全を守るために地図情報システム(GIS)を活用されていますが、できるだけコストをかけずにシステムの開発・運用を行っていらっしゃるようです。
もうひとつは、いままさに全国的な盛り上がりの兆しが出ている地域SNSについて、そのリーダーシップをとっている熊本県八代市の取り組みを行政管理部情報推進課の小林隆生さんがご報告されます。
この2市の事例は、単に新しい技術を活用したユニークな情報化として注目されるだけではありません。役所内部での部門間協力、住民・地元企業・行政の共働、そして市町村レベルでの自治体間連携など、日本社会の縦割り構造を乗り越えていく地域発の改革の動きとしてわたしは注目しています。

お二人の講師はおそらく実務者にたいへん有益な情報を提供されるだけでなく、現場の熱気や迫力が伝わってくる感動的なお話をされると思います。残念ながら、わたしにはとうていその真似はできません(人前で話すのは緊張して苦手ですし・・・)。
ただ、月刊コンピュートピアで電子自治体の取材を続けてきた経験と、情報産業や情報政策の動向と歴史の研究を通じて考えてきたこと、その二つを足し合わせた観点から自分なりの考えをお話させていただく予定です。

もしご都合がつけば、バレンタインデーに熊本でお会いしましょう!

suna

勤務先のGLOCOMが六本木ヒルズのすぐそばなので、平日はいつもヒルズの中を通り抜けています。1月16日のライブドアへの突然の家宅捜索にはびっくりしましたが、あれからまだ2週間も経っていないのに事態が次から次へと急展開する、そのスピードの早さにも驚いています。
ライブドア事件についてはまだ頭の整理がつかないので、とりあえず今感じていることをメモしてみました。

■ 誰のため何のための会社?

逮捕されたライブドア前社長の堀江貴文さんは、「会社にとって一番大切なのは株主」「時価総額で世界一をめざす」と語っていた。しかし皮肉にも、今回の事件は、そのような経営方針の会社でひとたび問題が発生すると、従業員よりも顧客よりも早く、株主が真っ先に逃げ出して会社に大きなダメージを与えるという現実を見せつけた。取り残された従業員と顧客にとっては、困惑や不安あるいは怒りが交錯しているのではないだろうか。
ライブドアの今後の経営についてはまだまだ流動的だ。フジテレビが安定株主となって支えるのか、場合によっては買収するのか。あるいは逆に冷たく見放すのか。ライブドアは昨年ニッポン放送の株取得でフジテレビに大きなゆさぶりをかけたが、今は逆にフジテレビがライブドアの命運を握る立場になっている。
ただ、ライブドア新社長にマネジメント経験の豊富な平松庚三さんが就任したことで、フジテレビとの関係が好転する兆しも出てきたようにみえる。平松さんは、従業員のモチベーションやプライドを尊重し、強いリーダーシップを発揮しつつ、思い切った判断を下すことができる経営者だと思う(何を隠そう、10数年前の一時期、わたしは平松さんの部下だった)。
ライブドアの経営体制が一新した今こそ、株価依存の危うい経営から脱却してもっと顧客や従業員を大切にする会社へと生まれ変わるチャンスだろう。リーダーの個人的主張を通じて社会に影響を与えるのではなく、事業を通じて社会に貢献できる会社へと再生できればいい。がんばれ、ライブドア社員。

■ IT企業のM&A

IT業界では、M&A(合併・買収)を繰り返して会社を成長させることは決して珍しい話ではない。M&Aが急増したのは1980年代後半の米国のコンピュータソフトウェア業界だった。1990年代になると大手コンピュータメーカー同士のM&Aも活発になり、自動車産業と同様、コンピュータ産業もグローバルな業界再編・淘汰の時代に入ったことを感じさせられたものだ。
そうしたなかで、もっとも数多くのM&Aを実現させた経営者は、おそらくコンピュータ・アソシエイツの創業者チャールズ・ウォンさんではないだろうか。ウォンさんに限らず、米国のIT企業経営者の多くは、既存事業の強化や補完性を重視したM&Aを繰り返してきた。決して株価を上げることだけを狙ったM&Aではない。IT企業にとって製品やサービスの技術力は生命線だが、技術開発へ新規に投資する資金と時間を考えれば、すでに技術を保有する会社を買収したほうが早く市場に進出できるという経営判断があるからだ。
会社にとって顧客が一番大切と考える経営者は、既存の製品やサービスとの補完性を考慮したM&Aを計画するだろう。また、従業員が一番大切と考える経営者はM&Aに対して慎重で保守的な態度を示すか、あるいは事業を継続させる手段としてM&Aを選ぶか、いずれかだろう。とすれば、ライブドアのM&Aは顧客のためでも従業員のためでもなかったことはたしかだ。

■ カジノ資本主義の警告システム

金融取引のマネーゲーム化が国際的に進行し、もはやギャンブルの場と化してしまった。そのような経済体制を英国の経済学者スーザン・ストレンジが「カジノ資本主義」と名づけたのは1986年のことだ。それから15年後の2001年に米国でエンロン事件が、20年後の2006年に日本でライブドア事件が発生した。
ライブドアの逮捕された旧経営陣に対して、マスコミは「錬金術」という言葉を使ってルール無視の金儲けを厳しく批判している。たしかにそのとおりだとしても、彼らだけを特別な不道徳者とみなして処罰すれば問題が解決するというわけではないだろう。
かつて債権ディーリングで巨額の損失を出した銀行員がいたが、ゲームやギャンブルという側面を否定できないならば、一種の中毒に陥って自分自身でブレーキをかけられなくなった人が出ても不思議ではない。
素人の素朴な疑問にすぎないけれども、むしろ、なぜライブドアのM&Aや決算報告に関わった会計士や税理士、株式を上場させた東京証券取引所、さらには金融取引を監督する立場にある官庁など、第三者的立場で企業経営に関わりをもつ専門家たちが事前に警告を発したりブレーキをかけたりできなかったのだろうか。

いきなり家宅捜索、事情聴取、逮捕ではあまりにも衝撃的すぎる。あるいは、彼らはそのような警告を再三受けていたにもかかわらず、無視し続けたのだろうか。
プレイヤーのモラルもさることながら、カジノを運営する側にも不正を抑止するような仕組みづくりが求められると思う。サッカーだって、イエローカードという警告システムがあるではないか。

■ 若者たちのライブドア・ショック

ライブドア・ショックは、株式市場よりも、堀江前社長にエールを送った若者たちへ与える影響のほうが大きいかもしれない。
ライブドアへの家宅捜索のニュースをテレビで見た瞬間、わたしは自民党が圧勝した昨年の衆院選を思い出していた。投票日の9月11日の夕方、いつもの美容院へ出かけ、20代半ばの男性美容師さんにカットをお願いすると、彼は「今日は早起きして、店に出る前に投票してきましたよ。自民党に勝ってほしいから、今回だけは絶対に選挙へ行かなきゃと思って。ホリエモンが当選すれば面白いですよね」と愉快そうに話しかけてきた。
わたしが非常勤で勤務している大学の学生をみても、昨年のフジテレビとライブドアの攻防ではライブドア・シンパのほうが多かったと感じている。既存の社会秩序に反旗をひるがえし、既得権にしがみつく古い体質の業界に次々と風穴をあけていく堀江さんの破壊的なパワーに、若者たちは声援を送ったのだ。今回の事件を彼らはどう受けとめたのだろうか。
それにしても、選挙で堀江さんを応援した「改革派」の自民党幹部よりも、堀江さんがもっとも嫌ったはずの古い体質を代表するような政治家のほうが、逮捕後の彼を気遣う発言をしている。なんとも皮肉なことばかりだ。

suna

このブログをお読みいただいている皆様、あけましておめでとうございます。

ブログを始めて3ヶ月余り、いつまで経っても初心者のままだなあと反省してしまいますが、ともかく継続が大切と思い、今年もできるだけ投稿を続けていこうと思います。どうぞよろしくお願いします。

Pc090023年末から年始にかけて、伊豆下田の温泉宿に引きこもり、ひたすら食べて、眠って、湯につ かって、本を読んでいました。おかげで、身体は重たくなってやばい状態ですが、ずうずうしくも神谷美恵子と丸山真男を隣のおばちゃん、おじちゃんと勝手に思いこんで、たっぷりと対話を楽しんできたので、いつになくいい休暇になりました。

2006年の興味のひとつに、ネットとテレビの融合がどこまで進むかがあります。でも、ネットとテレビから一時離れてみることも、とても贅沢な時間の使い方です。

このことをわたしはGLOCOMの先輩から教わりました。「休暇中はネットから離れます。メールもいっさい読みません」。なるほど、カッコいいなと思い、真似したというわけです。

では、皆様にとって今年が良い1年となりますように。

suna

すでに加山恵美さんが書かれているが、わたしも個人情報の過剰保護によって国民の6割が「暮らしにくい」と感じているという読売新聞の調査に注目した。
12月27日付の同紙記事によれば、役所、警察、学校などで個人情報の出し渋りが起こり、「災害時に助けが必要な一人暮らしのお年寄りの情報が地域の民生委員に知らされない」「学校が児童・生徒の緊急連絡網を廃止した」といった安全面の問題や、「役所が懲戒処分の職員の氏名や退職者の天下り先を公表しなくなった」という社会的な不公正に対して懸念を抱く人が多かったという。
まったく同感だ。

今年4月に個人情報保護法が本格施行されて以来、社会生活だけでなく経済活動においても、人びとを困惑させたり萎縮させたりするような過剰反応を見聞きすることが増えている。
その結果、大木豊成さんが指摘されているとおり、最近ではむしろ個人情報の過保護の方が懸念されるようになった感がある。

個人情報の保護はほんらい、他人には触れられたくない私的領域つまりプライバシーを守るために不可欠な手段であるはずなのだが、それが金科玉条の目的に化していないだろうか。それだけではなく、もしかしたら、わたしたちは(個人)情報の保護にばかり神経を使いすぎて、肝腎のプライバシーやそれにかかわる人権への配慮を欠くような行為を繰り返していないだろうか。

こんなことを考えるようになったのは、「プライバシー保護と個人情報保護はまったく異なる概念である」と指摘する国際大学GLOCOMの青柳武彦教授の議論に触発されたからだ。青柳さんは「情報社会ではプライバシーを厳重に守ったうえで個人情報を自由活発に流通させるべきである」と主張し、現行法については「個人情報過保護法」であると断じている。
個人情報の活用や流通についてはわたしのほうがもう少し慎重な立場だが、プライバシーと個人情報を明確に区別して、現在起こっている個人情報保護の行きすぎを改めるべきだという意見には基本的に賛成だ。また、プライバシー権の定義が「そっとしておいてもらう権利」から「自己情報をコントロールする権利」に近年変わってきたが、それに対する批判もとても面白い。(詳細は「住基ネット研究フォーラム」サイトに掲載されている青柳武彦「個人情報保護に行きすぎ」lを参照)

ネットというサイバー空間における個人攻撃や誹謗・中傷、職場や地域社会というリアル空間におけるハラスメントなど、プライバシーにかかわる深刻な人権問題はいまも続いている。
この1年、顧客情報の大量紛失を理由に、日本企業の経営幹部がテレビカメラの前でそろって深ぶかと頭を下げる映像をわたしたちは何度も繰り返し見てきた。企業のずさんな個人情報管理を擁護する気はまったくないが、しかし、ほんとうに深く頭を下げなければならない事態はどこか別のところにあるような気がしてならない。
                                                                                                                     

suna

これほどタイミングの悪い政府発表はそうそうあるものではない。

小泉純一郎総理を本部長とする高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(略称:IT戦略本部)は12月8日、e-Japan戦略の目標となっていた「世界最先端のIT国家」が実現できたとする評価報告書を公表するとともに、2010年に向けた「IT新改革戦略―ITによる日本の改革―」を発表した。

「先端から先導へ」と題する評価報告書の冒頭には、「我が国のIT戦略は、インフラを中心として世界最先端と言える基盤が整った今、世界最先端に追いつく局面から、21世紀のIT社会の構築において世界を先導すべき局面に転換しつつある」と記されている。

自信に満ちた勇ましい宣言だが、皮肉なことに、発表当日は日本の金融ITインフラへの信頼性が大きく揺らいだ一日となってしまった。
国民の関心は、みずほ証券が引き起こした株式発注ミスに集中した。ITに頼らず人手で株式売買を行っていた時代にはまったく想像もできないような、人びとを呆れさせるほどの単純なミスだ。しかも、それが原因であっという間に300億円近い損失が発生したというのだから、証券取引の情報基盤に対する信頼がいっきに失われるほどの事故だといえるだろう。

しかし、国家IT戦略のほんとうの問題は、発表のタイミングの悪さ以上に、IT政策を立案する基本的発想がまったく変わっていない点にあるかもしれない。
「先端から先導へ」というタイトルを見たとき、わたしは24年前を思い出した。

1981年6月15日、通商産業省は1980年代の情報政策の基本方針を提言した「産業構造審議会情報産業部会答申」を発表し、コンピュータ産業をリーディング・インダストリーと位置づけ、「情報立国」をめざすと発表した。そして、「米国をキャッチアップする時代は終わった。これからは日本独自の技術開発で世界をリードする」を政策スローガンに掲げ、第5世代コンピュータやスーパーコンピュータの国家プロジェクトの重要性を強調した。
日本の情報政策史のなかで、同答申は最も自信にあふれた勇ましい内容だったと言えるだろう。たしかに国産コンピュータがハードウェア性能でIBM製品に追いついたように見えたし、国内市場シェアでは富士通がIBMを追い抜いてトップに立っていた。
しかし、その後の歴史は日本のIT産業にとって苦難の連続だった。1年後にはIBM産業スパイ事件が発生し、1980年代を通じて日米ハイテク摩擦は激しさを増していった。そして、1990年代になると、米国が先導したIT市場の構造転換に日本は完全に乗り遅れてしまった。

それから四半世紀近い歳月を経て、今度はIT戦略本部がブロードバンドで世界最先端に立ったと宣言した。
当時と今とではIT市場も日米関係も激変しているので、歴史は繰り返すとは言いたくない。ただ、「性能が高く、価格が安く、普及した」という技術中心の発想で世界最先端であるかどうかを評価する点は変わっていない。また、最先端であるべくキャッチアップの努力を重ね、その達成を誇らしげに宣言する姿勢も昔のままだ。

そろそろ、技術中心に「追いつき追い越せ」ばかり考えるのはやめて、「誰のために、何のために、技術が活用されたのか」をもっと議論し評価するようにならないものだろうか。手続きやプロセスの透明化というITの特性を活かして、企業や個人の不正防止に役立てることもできるだろう。
幸いにも、今回発表された「IT新改革戦略」にはさまざまな観点からの評価指標が掲げられている。それに期待したい。

suna

全国の小学校ホームページの中で最も優秀なサイトを選ぶ「第三回全日本小学校ホームページ大賞(通称:J-KIDS大賞2005)」の表彰式が11月19日、東京・西新宿区の損害保険ジャパン本社ビル43階で開催された。大賞を受賞したのは千葉県印西市立大森小学校 で、3年連続の快挙だ。
また、北海道斜里町立峰浜小学校が経済産業大臣賞、長野県塩尻市立塩尻西小学校 が総務大臣賞、鹿児島市立西陵小学校 が文部科学大臣賞をそれぞれ受賞した。

主催はJ-KIDS大賞実行委員会(委員長:村井純慶応大学教授)。今年選考対象となったのは全国の1万6,194校だ。

一次選考は、事務局の損害保険ジャパンの関係者をはじめとして1,000人を超えるボランティアが参加して行われた。高校野球の甲子園大会のように、はじめに都道府県代表の51校が選出され、それから「ベスト8」が決まり、その中から最終的に大賞が選定された。

コンテストといっても、小学校がそのためにわざわざ準備して応募するわけではない。主催者が全国のホームページを見に行って、コンテンツや日々の更新状況を勝手に評価・選考するという、とてもユニークな方法を採用している。

(コンテストの詳細は、J-KIDS大賞の公式サイト と、実行委員の一人としてホームページの更新調査や審査基準作成に尽力してきた豊福晋平・国際大学GLOCOM助教授のキッズページを是非ご覧ください。)
関係者は最初「とりあえず3年だけ続けて、駄目ならやめよう」という感じで始めたそうだ。しかし、コンテストに対する社会的な認知度は年々高まり、3年経った今年は初めて3つの「大臣賞」が設けられただけでなく、NHKをはじめとするマスコミ各社の取材も急増した。選考作業に協力してくれる個人ボランティアだけでなく、日本IBM、キヤノン、日立製作所、シスコシステムズ、マイクロソフトなど多くの企業が協賛に名を連ねた。

わたしは幸運にも昨年と今年、表彰式への代理出席の機会を与えていただいた。選考過程には関わっていないので詳細はわからないが、それでもJ-KIDSコンテンストの支持者が年々増えて、盛況になっていく様子を肌で感じている。
たぶん、この3年間のうちにホームページを通じて情報発信に熱心に取り組むようになった学校が増えていることが背景にあるだろう。また、それだけでなく、小学生がインターネットを積極的に活用する環境づくりを応援したいと考える社会人や企業も多いのだと思う。
生徒たちだけではなく、広島県立広島北養護学校 のようにPTAがホームページを通じた情報発信に積極的に協力している例もある。地域に開かれた学校づくりのためにもホームページは大きな役割を果たしつつあるようだ。

理屈はともかく、毎日の給食のおいしそうな写真や学校行事など、見ていてとにかく楽しい。今年の受賞校は以下のとおり。母校のホームページとあわせて、この機会に是非ご覧あれ!

ベスト8
   
・北海道代表校 斜里町立峰浜小学校 <http://www6.ocn.ne.jp/~minehama/index.htm>
・千葉県代表校 印西市立大森小学校  http://www.inzai.ed.jp/omori-es/
・東京都代表校 江東区立辰巳小学校  <http://www.koto.ed.jp/tatsumi-sho/>
・長野県代表校 塩尻市立塩尻西小学校 <http://www.shiojirinishi-e.ed.jp/>
・三重県代表校 津市立南立誠小学校 http://www.res-edu.ed.jp/minamirissei/index.htm

・鹿児島県代表校 鹿児島市立西陵小学校 <http://keinet.com/seiryous/index.htm>
・特殊教育諸学校代表校 広島県立広島北養護学校

   <http://www.hiroshimakita-sh.hiroshima-c.ed.jp/>
・特別推薦枠* 相模原市立橋本小学校 http://www.sagamihara-hashimoto-e.ed.jp/   (*注) 県代表選考で次点となった学校のうち最優秀の1校。

応援団賞: 県代表校等51校の中から、「J-KIDS大賞」サイトでの一般投票で選出。   ・愛知県代表校 一宮市立瀬部小学校
     <http://www.school.city.ichinomiya.aichi.jp/~sebe-e/>

特別賞
(1)テーマ賞:J-KIDS大賞のテーマである『可能性』に沿った小学校ホームページを選出。
・愛知県優秀校 高浜市立翼小学校<http://www.katch.ne.jp/~tubasho1/>

(2)デジタル・イメージ賞:デジタル・イメージをセンスよく活用し、生き生きとした子供たちの学校生活の雰囲気が伝わる小学校ホームページを選出。
・熊本県代表校 相良村立相良南小学校 http://www.hitoyoshi.ne.jp/sagarase/

suna


プロフィール

砂田 薫

砂田 薫

情報社会学の専門研究所、国際大学グローバル・ コミュニケーション・ センター(GLOCOM)の主任研究員です。
「情報政策の国際比較」「グローバル化とIT産業」に興味があります。

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