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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

「ウェブ進化論」をすべての上司にプレゼントしよう

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遅ればせながら梅田望夫著「ウェブ進化論」を読みました。快著ですね(ですます復帰)。
われわれ日本人は、この2006年2~3月という比較的早い時期に、Web 2.0に関する共通認識を広範な層にもたらしてくれるこの本を得ることができて、非常に幸運だと思います。売れているというのが非常によろしい。

書かれてあることは、オルタナティブブログにアクセスしてこられる方なら誰もが認識を持っている概念や動向についてですが、それを改めて、非常にわかりやすい言葉で、熱意のある書き手の文章として読むことができるのは、すごくありがたいです。

私は梅田望夫氏のブログのあまりよい読者ではありませんが、たまに読む彼の論調と比較すると、明らかに読者ターゲットを変えていることがわかります。読者にはブログやロングテールに関して明確な理解がない人が想定されています。通例、先端動向を一般読者に解説する語り口は、それを知っている人が読むと歯が浮くような印象を覚えるものですが、本書の場合はそんなことはなく、筆者の「わかりやすさの獲得に関する真摯な姿勢」がすがすがしいです。素直に敬服します。
梅田氏は、ブログを書いたこともないし、グーグルのすごさを知りえない人たちに対して、「世界はこんな風に動いている」ということを一生懸命に説明しています。広範な層におけるこの種の動向の理解が、日本の未来にとって非常にクリティカルなものであると確信しているからではないかと思います。

コンピュータ業界の中にいても、大手企業の内部では、Googleに関する本源的な理解を持っている人はさほど多くはないのではないかと考えています。
本書を読めばわかりますが、日本であまり知られていない事実として、Googleが世界最大のハードウェア+ネットワークシステムを構築した企業であり、そのシステムの投資コストとオペレーションコストの低さは既存企業が唖然とする水準であり、そうした世界最大のプラットフォームで新機軸のアプリケーションを動かそうと、世界最高の頭脳が日夜せっせと開発し続けているということがあります。化け物のようなR&D特化企業です。
現在、コンシューマのみならず、企業の従業員の作業環境においても、アプリケーションがネットワークの向こうから供給されるものになりつつあるなかで、Googleは、ひょっとすれば世界で最高のプラットフォームを使って世界でもっとも安く業務用のアプリケーションを供給することができる存在になるかも知れません。
また一説には世界でもっともコストエフェクティブな通信会社になりうるのではという見方もあります(同社が使っているバックボーン網を少し思い浮かべてみてください)。日本のみならず世界中のIT業界+通信業界がひっくりかえりそうなポテンシャルを持っているわけです。

本書がベストセラーになることによって、こうしたことの正しい理解が、日本の、特に重厚長大系の電機メーカーなどで一挙に広まることの意味は大きいです。もちろん、近い将来において適切な対策が講じられることを期待しています。
また、経産省や総務省の官僚たちの間でも、本書で説明されている事柄に関する共通理解が醸成されて、「このままでは日本はいかん」ということになり、u-Japanの工程表だけでは不足、もう少し人材育成やGoogle的な「あちら側」の企業をインキュベートするような施策も必要ではないかという議論が盛り上がる可能性にも期待です。

ということで、本書を、日本のIT業界および関連業界にいるすべてのエラい人たちにプレゼントして、”いま”に関する正しい理解をもってもらい、もって10年後20年後に対する正しい戦略づくりに入ってもらおうではありませんか。

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