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モバイルシフトとソーシャル化によって変化するネットの世界を、読者と一緒に探検するBlogです。

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僕たちは新刊書「ソーシャルメディアマーケティング」にて、マーケティング戦略を以下の4つのポジショニングで区分けしている。
・市場リーダーの「防衛戦」
・二番手企業の「直接対決戦」
・中小企業の「ゲリラ戦」
・ベンチャー、新規事業部門の「革命戦」

「ソーシャルメディアマーケティング」は、タイトル通りソーシャルメディアを活用したマーケティング戦略を解説した本だが、実のところソーシャルメディアに限った話をしていない。というよりも、マーケティングあるいはブランディング全般の話をしている。ソーシャルメディアマーケティングという限定的なマーケティング手法の話というよりも、ソーシャルメディアが、マーケティング上も無視できなくなった現代の企業にとって有益な(包括的な)マーケティングの話をしているつもりだ。


その流れで、今日は最近僕が興味をもって見ているテレビ広告について解説しよう。

現在の自動車産業における覇権争いをしているのはトヨタとフォルクスワーゲン(VW)だ。
(最近のプリウスのリコール問題についても言いたいことがあるが、それはまた後日。ただ言えることは、現実のマーケティングは利害衝突する企業間の戦争であり、敵のミスは自社にとってのチャンスである。敵に塩を贈る上杉謙信は美しいが戦国を勝ち抜いたのは信長であり秀吉であり家康だ)

VWにとってみれば、トヨタがシェアを落とせば、それだけ自分たちのシェアを広げることができる。VWは、トヨタを敵国としてロックオンしていることを公言している。つまり、彼らは戦争の相手を明確にしたうえで全ての戦略をとっているのである。

トヨタのエコカー減税にまつわるテレビCMは、子ども店長 で人気を博しているが、VWがとった方策はなんと女の子(子ども店長とほぼ同年齢と思われる)の広報担当者によるプレゼンテーションというテレビCMの放送だ。この臆面のなさは尋常ではない。明らかな挑発行為であるといえよう。

現在、自動車業界ではこぞってエコカー減税に関するCMに広告予算を集中して投下しており(輸入車のほとんどは適用外だったがVWは、そこを逆手に取ったメッセージングを行っている)、逆に言えば差別化しづらい状況にある。トヨタとホンダは、それぞれプリウスとインサイトというハイブリッドカーが売れてはいるが、それ以外の車が売れないのは困るし、両車とも生産が追いつかず納車待ちの状態があまり長く続くこともよくない。つまり、大ヒットが出るのはいいが他の車もまんべんなく売れなければ経営を圧迫するのだ。だから、エコカー減税適用車全体が売れるようなメッセージを込めたCMを作らざるを得ないが、他社と横並びになるようなエコカー減税CMであってはならない。

そこでトヨタがしかけたのが、子ども店長というわけだが、このCMが大成功しているのは周知の通り。そこに挑戦をしたのがVWというわけだ。

この子ども店長に対する「広報少女」CMは、単なるパクリではない。パロディなどという生易しいものでもない。
明らかに、トヨタのCMに対する挑発であり、宣戦布告に等しい。
一見すると、このCMは、VW側が何も考えずに、一般受けしている子ども店長CMをパクった、と見えるだろうが、世界市場を抑えようとするVWに限ってそんな浅はかな反射神経的な行為はない。パクっているという揶揄を浴びることを承知の上で、敢えてトヨタのCMのクリエイティブを台無しにしようとしている。完全なミート作戦であり挑発なのだ。


僕たちは著書「ソーシャルメディアマーケティング」の中で、二番手企業は市場リーダーの強みと弱みを研究した上で、強みを逆手に取り、弱みをあぶり出すような戦略をとるべきことを主張しており、シェアを広げるというより、市場リーダーのシェアを削りとることを考えるべきだと言っている。このVWのCM戦略はまさしくそれだ。
プリウスに相当するハイブリッドカーのブランドをまだ持っていないVWにとって、エコカー市場でプリウスをロックオンすることはいまのところできない。(燃費勝負ならよい線の車種は多くても、印象としてハイブリッドでなければエコカーでない、というイメージを今の日本の消費者が持っているのが問題だからだ)
しかし、それ以外の車であれば、エコカー減税が適用される輸入車、というメッセージングは非常に正しく、あとはそれを急いでイメージづければいい。そのための「広報少女」なのだ。

「広報少女」は必ず「子ども店長」と比較される。
最初はパクりだと嘲笑されるかもしれないが、ヘビーローテーションでCM展開していれば、やがては商品と価格に注目はそれていく。それでいいとVWは考えている。


マーケティングは戦争だ。消費者にどういうメッセージを届け、どんなブランドイメージを持ってもらうかを考えるときに、敵対する企業がどういう戦略をとっているかを考えないで作戦立案してはならない。VWは明らかにトヨタと戦おうとしており、その意志を強烈に消費者に印象づけようとしているのである。


ソーシャルメディアマーケティングとは、ソーシャルメディアを使うマーケティングというよりも、ソーシャルメディアを無視できない時代における統合的なマーケティングのことであるといっていい。企業は激烈な戦いの中にいる。マーケティングはその戦いに勝つための戦略と戦術であり、法律と社会的なマナーを遵守する限り(その結果として消費者からの好意的な印象を受けなくてはならないという制限において)、なりふり構わず勝ちにいくための姿勢のことだと考えるべきだ。

hiro

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プロフィール

小川 浩

小川 浩

株式会社リボルバー ファウンダー兼CEO。ソーシャルプランナーユニット「オガワカズヒロ」のクリエイティブディレクター。著書に「Web2.0Book」「仕事で使える!Facebook超入門」「ソーシャルメディアマーケティング」「アップルvsグーグル」など。

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