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■カラニコス氏のBlogの波紋
ジェームス・カラニコスは著名なシリアル・アントレプレナー(連続起業家)だが、最近自身のBlogで、スタートアップ(創業間もないベンチャー)の経営者としての心得を書いたところ、賛否両論で大きな波紋を呼んでいる。僕自身が前のエントリーでそんなようなことを書いたばかりなのだが、彼のアドバイスはある意味過激で、より誤解を生みやすい内容ではあるが、非常に含蓄に富んでいて、そのいくつかはすぐにでも取り入れたくなる(あるいは取り入れている)ほどだった。
■シリアル・アントレプレナーとは
通常起業家というものは、学生時代か、ある程度の社会人経験を積んだ後に職を辞したうえで、自分のアイデアとわずかばかりの資金を元手に事業を興す人たちのことを指すが、厳密な意味での起業家、とは、ベンチャー企業として大きな成功を目指すひと、というニュアンスが強いといっていい。
大きな成功、とはすなわちIPO(新規株式公開、上場)だ。特に日本では。
それ以外の道、成功の形ももちろんあって、いわゆるM&A(企業売買)、つまり、作った会社の企業価値を向上させて、数倍の価値をつけた上で他の企業に買ってもらうやり方がある。
会社を作っては売り、売っては作るタイプの起業家を、シリアル・アントレプレナー(連続起業家)と呼んでいるが、日本ではあまりいない。テクノラティの創業者であるデビッド・シフリー氏や、ネットスケープ創業者のジム・クラーク氏もシリアル・アントレプレナーであると言えるが、日本では一つの会社で上場するまで頑張り通す形の起業家が好かれるし、同時にM&Aを毛嫌いするムードがあるからシリアル・アントレプレナーは存在しづらいのだろう。
■スタートアップの最初の試練とは
創業間もないベンチャーを、スタートアップと呼ぶ。スタートアップがまずやるべきことは、ファイナンス(資金調達)だ。創業時に必要な資金=シードマネーは最低限の創業メンバーを集めるためや、PCやサーバーなどを用意するために使われ、たいていはせいぜい数ヶ月で使い果たしてしまう。
その間に売上を上げて、利益を出せるようになればそれにこしたことはないが、ベンチャーであるからには目先の売上より、将来の成長を目指して開発により多くの資金を割かざるをえない。
となると、すぐにお金は無くなってしまうわけで、創業者(とCEO)がこの数ヶ月の猶予期間にどれだけの資金を集められるかが分かれ目になる。とはいってもスタートアップが銀行で融資を受けられるはずはないので、たいていは投資家からの出資をあおぐ。この投資ラウンドをシリーズAというが、このシリーズAで、十分な資金を得ることができるかどうかが、スタートアップの最初の試練であり、成功への第一歩、といえる。(IPOまでに、どのような資金調達をしていくか、そしてその過程で自社の価値をどのように向上させていくかを考え、計画表に落とし込んだものを資金政策、という)
だからスタートアップ時期の創業者やCEOのプレッシャーは、すさまじいものがあるのだ。
■カラニコスのアドバイスとは
カラニコスの発言は、つまり、そうしたプレッシャーにさらされた経営者の立場からの発言であり、 世間一般の企業全体に通用するアドバイスではなく、同じようにスタートアップにいるひとたちに向けての言葉であることは、予め理解しておく必要がある。
カンタンにどんなことを言ったのかを書くと(日本語は僕の意訳):
# Buy Macintosh computers, save money on an IT department
マックを買え。節約になる。(僕的には同感)
# Buy everyone lunch four days a week and establish a no-meetings policy. Going out for food or ording in takes at least 20-60 minutes more than walking up to the buffet and eating. If you do meetings over lunch you also save that time. So, 30 minutes a day across say four days a week is two hours a week... which is 100 hours a year. You get the idea.
週に4回はランチを社員におごれ。ランチで外出されると20-60分も返ってこないし、ランチをしながらミーティングすればいい。
# Buy cheap tables and expensive chairs.
机は安物でいい、椅子はいいモノを買え。
# Don't buy a phone system. No one will use it. No one at Mahalo has a desk phone except the admin folks. Everyone else is on IRC, chat, and their cell phone. Everyone has a cell phone, folks would rather get calls on it, and 99% of communication is NOT on the phone. Savings? At least $500 a year per person... 50 people over three years? $75-100k
電話は買うな。みんなケータイくらいもっているし、チャットできる。
# Outsource accounting and HR---such a no brainer.
総務とか人事はアウトソースしろ。
# Don't buy everyone Microsoft Office--it's too much money. Put Office on three or four common computers and use Google Docs.
MSオフィスは買うな、Google Docsでいいじゃないか。
# Use Google hosted email. $50 or free per user.... how can you beat that?!?! Why screw with an exchange server!?!?
メールもGmailでいい。メールサーバなんて買うな。
# Buy your hardest working folks computers for home. If you have folks who are willing to work an extra hour a day a week you should get them a computer for home. Once you get to three hours of work a week from home you're at 150 hours a year and that's a no brainer. Invest in equipment *if* the person is a workaholic.
働き者の社員には自宅用のパソコンも買ってやれ。それしたら自宅でもガンガン働いてくれる。
# Fire people who are not workaholics. don't love their work... come on folks, this is startup life, it's not a game. don't work at a startup if you're not into it--go work at the post office or stabucks if you're not into it you want balance in your life. For realz.
ワーカホリックじゃない社員はクビにしろ。スタートアップはゲームじゃない、時間通りバランスよく働きたいならスタバか郵便局で働くべきだ。
# Jura espresso machineGet an expensive, automatic espresso machine at the office. Going to starbucks twice a day cost $4 each time, but more importantly it costs 20 minutes. Buy a $3-5,000 Jura industrial, get the good beans, and supply the coffee room with soy, low fat, etc. 50 people making one trip a day is 20 hours of wasted time for the company, and $150 in coffee costs for the employees. Makes no sense.
美味しいエスプレッソマシンを買え。スタバにいちいち買いにいくのは時間の無駄だ。
# Stock the fridge with sodas---same drill as above.
冷蔵庫に飲み物を常に置いておけ。上と同じ理由。
# Allow folks to work off hours. Commuting sucks and is a waste of time for everyone. Let folks start at 6am or 11am and you'll cut their commute in half (at least in LA).
時差通勤を認めろ。通勤時間を節約してもらえ。
結構過激・・・かもしれない。体育会系(?)的発言に、ちょっと嫌気がさす人も多いかと思うし、僕自身、ワーカホリック(仕事中毒)がいい、とは言えない。仕事ばかりしないで、趣味や社会奉仕にいそしむようなひとの方が一緒に働いて楽しいだろう。
が、しかし。
繰り返すがカラニコスの指摘は、あくまで上述のようなスタートアップOnlyに向けてのものだ。他のなにものに向けてのことでもない。
スタートアップは、僕自身が書いたように、大海に向けて漕ぎだしたばかりの小さな舟で、目の前の嵐を超えて、安定して前進できるエリアにまでなんとか着くまで必死で櫓を漕いでいるようなものだ。次の港(次の資金調達)に着けるかどうか分からないという強烈なプレッシャーに耐えるには、やっぱり他のことを考えている余裕はないだろう。
であれば、カラニコスの指摘はしごく当然、なのではないだろうか。
ベンチャーを目指す皆さんや、実際にスタートアップにおられる皆さんは、
どう思いますか??
カラニコスのBlogの原文はこちら
+ 追記:19:25 on 16/Mar/08
僕自身もスタートアップの経営者だが、そんな僕が最近嬉しいと感じること。それは・・
・真夜中や週末の朝にSKYPEでスタッフがオンラインであることを見つけたとき
・例の件どうなった?とメールを打っている最中に、ドンピシャの答えが
スタッフからメールされてきたとき
・外出から戻ったとき、チームが仕様や見積についての議論に熱中していたとき
・スタッフに飲みにいこうよと誘ったら「仕事が残ってる」と断られたとき
・依頼した仕様よりずっとクールな成果物をみせられたとき
なんのことはない、僕もカラニコスと同じだ。
モディファイを設立して2ヶ月半になるのだが、幸いにしてそこそこの売上と
対応しきれないほどの引合をいただき、忙しい毎日を過ごしている。僕自身の目下の悩みは、戦略的に必要なファイナンスバックアップを得るために忙殺され
て、十分にセールス&マーケティングに時間を割くことができないことだ。開発にも営業にもリソースは足りないが、それはスタートアップにとっては仕方のな
いことで、苦労というよりも、どうやってやりくりをするかを考える楽しみのほうが多い。
僕は前職で、スタートアップで働くための5つの心得
を書き記した。いまだに使っていてくれていて非常に嬉しいのだが、いま改めて、モディファイでいま一緒に働いてくれる仲間を称えて、同時に今後一緒に働いてくれるかもしれない未来の仲間に向けて、いま僕が考えるスタートアップで働くための心得を書く。
1. 仕事が大好きだ、というより好きなことしかやらない
スタートアップのベンチャーで働くということは、プレッシャーやストレスに耐えながら、あるいは将来への不安を抱えながらも、常に笑っていられるという心の強さが必要だ。
その強さを支えているのは、いま自分がしていることを肯定できることが前提となる。つまり、仕事が大好きで、大好きなことを仕事にできている、という喜びとプライドがなくてはならない。
2. 頑固である。頑固であろうとする。
自分のスタイルを貫けることが大事だ。自分のスタイルに自信がないひとはスタートアップには向かない。
自分のスタイルを通すためには、周囲に理解と協力を求める必要がある。やり方や方法を否定されたら、なぜ否定されたのかを考えて、肯定してもらえるように交渉してみよう。その努力と粘り強い交渉力があってこその、スタイルである。
3. 柔軟である。必要に応じて。
自分のやり方が間違っていると分かったら、すぐに改める。時と場合に応じて変化することを恐れない。本当に自分のスタイルに自信があれば、過ちを過ちと認める勇気があるはずだ。それで色あせるようなスタイルなら、最初から意味がないのだから。
4. 公私混同しよう、いい意味で。
土曜も日曜も、夜中も早朝も関係ない。ひたすら仕事をしよう。歩きながらでも寝ながらでも仕事はできる。
だからこそ、就業中に仕事以外のことを考えたっていい。24時間中、ほとんど仕事のことを考えているのだから。
オンとオフを切り分けるのではなく、一瞬一瞬で切り替えればいい。
5. 仲間を信じよう。仲間は家族であり親友である。
スタートアップは大海に漕ぎだした小さなボートだ。乗り合わせた仲間に命を預けることができなければ、すぐに沈んでしまう。スタートアップで共に働くメン
バーは、家族であり親友であり、時にはそれ以上のものだ。議論も諍いも時にあるとしても、根底にあるのは 互いの命運を預けているという信頼だ。
職種も肩書きも、年齢も性別も、そして国籍も関係ない。仲間は仲間なのだ。
モディファイの社員は僕をいれて5名。
また、社員ではないが、同じ船の上で一緒に働いてくれるメンバーが何人かいる。みな、上の5つの条件をパスした心強いチームだ。
いまはまだちょっとした環境の変化で揺らぐ小舟にすぎないが、共に働いてくれる多くの有志が集ってくれることを信じて、より大きな船へと成長していきたい。
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