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96年1月に刊行した私の初めての著書「インターネットでデッカク儲けよう!!(小資本で大きな利益をあげる52のノウハウ)」は約3万2,000部を売り上げて、えらくハッピーでした。もっとも最初はこの書名がいやで堪らず、「生まれて初めての本がこのタイトルかよ」と思ってました(すみません>関係各位)。
この本は今で言うネットの「ビジネスモデル」およびビジネスモデルを形作るパーツの数々を事例入りで解説していました。

同書執筆に先立って95年前半からずっと、個人のウェブページを毎日必死こいて更新していました。独立して専用の仕事場を持って間もない頃、受託していたMacのDTPの仕事(なんと月百数十万の売上があった)をしながら、毎日数時間をかけてウェブを更新していました。いわゆる「ウェブ日記」の時代。あの伝説的な津田さんの「日記リンクス」にも参加していました。

毎日数時間HTMLをいじり、コラム系のネタを書き、リンクしたりされたり、コメント書いたり書かれたり、ということを繰り返しているうちに、だんだん見えてきたものをまとめたのが上の本です。
私はそれまで業務系の月刊誌の編集を数年やっていたので、幸いに紙媒体の編集・出版という視点と、新しいモノが業務にどう使えるかという視点の双方から、ウェブの新しさを捉えることができました。当時、インターネットの中にいた方々はほとんどが大学生、大学院生。それからメディア系、音楽系の非常にエッジの立った方々ぐらい。ネットをビジネスの視点で論じる人がほとんどいなかった状況なので、一種の先駆者利益が得られたのだと思います。

最近のTwitterには、この当時インターネットに見ていたビジネス系の可能性の「束」に近いものを感じます。

Twitter上で可能になっている新しいタイプの集客についてもう1例を記します。

■@okadadada氏のクリスマスイブ深夜突発DJ Ust配信

昨年12月24日深夜から25日早朝にかけての伝説的なDJプレイのUstream配信事例です。視聴者数が最大で2,000人を超え、その後もTwitter上に大きな余韻を残しました。

詳細を報告しているブログ記事はこれ。なお、書いているTOFUBEATS氏は@okadadada氏の後輩筋の方ですね。

12月24日の夜10時ぐらいにベッドに入って、iPhoneでTwitterのタイムライン(TL)を追っていたところ、何人かが@okadadadaさんのDJのUstream配信がすごいと騒いでいました。あまりにどよめきがすごいので、小さなノートPCを立ち上げて、ベッドに半分入ったままUstにアクセスしてみました。この時点で私は@okadadada氏をまったく知りません。するとガーソ。あまりに魅惑的な選曲&つなぎによるプレイが繰り広げられていました(←年代問わない選曲だったということ)。個人的にはTodd Rundgrenの"I Saw the Light"が来た時にはカーッ!という感じ。
Ustreamにはあまり詳しくないので、2,000人以上が同時視聴することがどれだけすごいことなのかピンとこないのですが、多数の人がTL上で異口同音に言っていたのが「歴史初(日本で)」ということ。視聴者数が500単位で増えるたびに「おぉ!」という歓声が上がっていました。

Ustreamでたくさんの観客が集まるメカニズムは、改めて書く必要もないと思いますが、おおよそ次のようになっています。

  1. 主催者@johnさんが「やるよー(+UstreamのURL)」とTwitter上でつぶやく。
  2. @johnさんをフォローしている人のうち、Ustを見たい気持ちがある人(かつ時間の余裕がある人)がすかさずアクセスする。そして何気なく見る。この時点では評価めいたものは何もない。
  3. 誰か(@paulさん)がUstのTL上で「すげー!(+主催者アカウント+UstreamのURL)」と叫ぶ。この時点で視聴者数1ケタ。
  4. @paulさんをフォローしている人(@georgeさん)が「何が起こってるんだ?」とすかさずアクセス。この時点で視聴者数20名程度。
  5. @georgeさんが「やべー! RT @paul:すげー!(+主催者アカウント+UstreamのURL)」などと叫ぶ。前後して@ringoさん、@billyさん、@yokoさんなども「すごすぎる!(同)」などと叫ぶ。各自RTを入れたり入れなかったりするが、この時点ではもはやそういう細部は関係なく視聴者数が膨れ上がる。視聴者数100名程度。
  6. フォロワー数が数千~数万のすごい方、あるいは非常に影響力のある方が「これすごいよ。(+主催者アカウント+UstreamのURL)」とクールにつぶやく。これで増加に勢いがつき、視聴者数500名程度に。
  7. 以降多数の人がTwitter上でUst配信の内容に高評価のコメントを書くことで、視聴者数が上がっていく。

Ustreamはリアルタイムであることに意味のあるメディアパッケージで、1.で主催者が「やるよー」とつぶやいてから7.に至るまで約30分程度でしょうか。人が集まるコンテンツだと非常に短時間に視聴者数が増えます。
@okadadadaさんのDJの場合も、上記のブログ記事で報告されていますが、いとうせいこう氏が

say yeah! USTdj→http://bit.ly/Ds7aL

とつぶやいたことによって視聴者増加に勢いがついたとのことです。私が実見したのはその直後ぐらいで、そこから朝3時4時の終わりまでずっと見てました。翌日は普通の仕事の日…。ただ久々に早朝までやるクラブ的興奮を経験させてもらったことは確かで、ものすごくいい余韻が残りました。どうもありがとうございます!

前後の色んな人の書き込みによると、この@okadadada氏のプレイは予め準備されたものではなく、12/24の夜、自室に帰ってきた@okadadada氏がいきなり思い立って始めたらしいです。それもiPhoneを使って(この時期iPhone活用Ust配信はまだ一般化していなかった)。また、@okadadada氏は関西エリアでは積極的にプレイをしている方のようで、かなりの実績があるとのこと。

従ってまったくのシロートの方が思いつきで始めたUstイベントに客が集まったというものではなく、相応の力量を持った方が余興で始めたUst配信にたまたま膨大なお客さんが集まったという図式になります。
この偶然性が聴衆を狂喜乱舞させる要素の1つになっていました。また、この偶然性が幸いして@okadadada氏は関東エリアでも大いに知名度を上げました。彼が東京にやってきてプレイした日にはかなりの熱狂があったそうです。私も先日の早稲田茶箱でのプレイをUst経由で見てました。

Ustを使ったイベントで多くの観客を集めるものがすべて偶然性に拠っていると言うつもりはありません。ただ、偶然に多くの観客が集まるものには以下の特徴がありそうです。

  1. 一部の人(かつフォロワー)は、その人がテーマとして取り組んでいるいることをよく知っている。だから突発的なUst配信でもその価値が正確に判断できる。
  2. なので、ちょっと配信内容を見ただけで「すげー(+URL)」というコメントを出せる。
  3. よく知っている人の最初期の反応がRTやコメントの連鎖を生んでいく。

要はその人が何かのテーマに取り組んでいること。それが日頃のTwitterのつぶやきでフォロワーによく知られていること。そのへんがポイントだと思います。

dimaizum

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プロフィール

今泉 大輔

今泉 大輔

株式会社インフラコモンズ代表取締役。
国内の太陽光、木質バイオ、石炭火力の発電案件。海外の天然ガスに関係した案件の上流部分のアレンジメントを行っている。その他、リサーチ分野として、スマートグリッド、代替的な都市交通、エネルギーの輸出入。電力関連の近著も。

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