96年1月に刊行した私の初めての著書「インターネットでデッカク儲けよう!!(小資本で大きな利益をあげる52のノウハウ)」は約3万2,000部を売り上げて、えらくハッピーでした。もっとも最初はこの書名がいやで堪らず、「生まれて初めての本がこのタイトルかよ」と思ってました(すみません>関係各位)。
この本は今で言うネットの「ビジネスモデル」およびビジネスモデルを形作るパーツの数々を事例入りで解説していました。
同書執筆に先立って95年前半からずっと、個人のウェブページを毎日必死こいて更新していました。独立して専用の仕事場を持って間もない頃、受託していたMacのDTPの仕事(なんと月百数十万の売上があった)をしながら、毎日数時間をかけてウェブを更新していました。いわゆる「ウェブ日記」の時代。あの伝説的な津田さんの「日記リンクス」にも参加していました。
毎日数時間HTMLをいじり、コラム系のネタを書き、リンクしたりされたり、コメント書いたり書かれたり、ということを繰り返しているうちに、だんだん見えてきたものをまとめたのが上の本です。
私はそれまで業務系の月刊誌の編集を数年やっていたので、幸いに紙媒体の編集・出版という視点と、新しいモノが業務にどう使えるかという視点の双方から、ウェブの新しさを捉えることができました。当時、インターネットの中にいた方々はほとんどが大学生、大学院生。それからメディア系、音楽系の非常にエッジの立った方々ぐらい。ネットをビジネスの視点で論じる人がほとんどいなかった状況なので、一種の先駆者利益が得られたのだと思います。
最近のTwitterには、この当時インターネットに見ていたビジネス系の可能性の「束」に近いものを感じます。
Twitter上で可能になっている新しいタイプの集客についてもう1例を記します。
■@okadadada氏のクリスマスイブ深夜突発DJ Ust配信
昨年12月24日深夜から25日早朝にかけての伝説的なDJプレイのUstream配信事例です。視聴者数が最大で2,000人を超え、その後もTwitter上に大きな余韻を残しました。
詳細を報告しているブログ記事はこれ。なお、書いているTOFUBEATS氏は@okadadada氏の後輩筋の方ですね。
12月24日の夜10時ぐらいにベッドに入って、iPhoneでTwitterのタイムライン(TL)を追っていたところ、何人かが@okadadadaさんのDJのUstream配信がすごいと騒いでいました。あまりにどよめきがすごいので、小さなノートPCを立ち上げて、ベッドに半分入ったままUstにアクセスしてみました。この時点で私は@okadadada氏をまったく知りません。するとガーソ。あまりに魅惑的な選曲&つなぎによるプレイが繰り広げられていました(←年代問わない選曲だったということ)。個人的にはTodd Rundgrenの"I Saw the Light"が来た時にはカーッ!という感じ。
Ustreamにはあまり詳しくないので、2,000人以上が同時視聴することがどれだけすごいことなのかピンとこないのですが、多数の人がTL上で異口同音に言っていたのが「歴史初(日本で)」ということ。視聴者数が500単位で増えるたびに「おぉ!」という歓声が上がっていました。
Ustreamでたくさんの観客が集まるメカニズムは、改めて書く必要もないと思いますが、おおよそ次のようになっています。
- 主催者@johnさんが「やるよー(+UstreamのURL)」とTwitter上でつぶやく。
- @johnさんをフォローしている人のうち、Ustを見たい気持ちがある人(かつ時間の余裕がある人)がすかさずアクセスする。そして何気なく見る。この時点では評価めいたものは何もない。
- 誰か(@paulさん)がUstのTL上で「すげー!(+主催者アカウント+UstreamのURL)」と叫ぶ。この時点で視聴者数1ケタ。
- @paulさんをフォローしている人(@georgeさん)が「何が起こってるんだ?」とすかさずアクセス。この時点で視聴者数20名程度。
- @georgeさんが「やべー! RT @paul:すげー!(+主催者アカウント+UstreamのURL)」などと叫ぶ。前後して@ringoさん、@billyさん、@yokoさんなども「すごすぎる!(同)」などと叫ぶ。各自RTを入れたり入れなかったりするが、この時点ではもはやそういう細部は関係なく視聴者数が膨れ上がる。視聴者数100名程度。
- フォロワー数が数千~数万のすごい方、あるいは非常に影響力のある方が「これすごいよ。(+主催者アカウント+UstreamのURL)」とクールにつぶやく。これで増加に勢いがつき、視聴者数500名程度に。
- 以降多数の人がTwitter上でUst配信の内容に高評価のコメントを書くことで、視聴者数が上がっていく。
Ustreamはリアルタイムであることに意味のあるメディアパッケージで、1.で主催者が「やるよー」とつぶやいてから7.に至るまで約30分程度でしょうか。人が集まるコンテンツだと非常に短時間に視聴者数が増えます。
@okadadadaさんのDJの場合も、上記のブログ記事で報告されていますが、いとうせいこう氏が
とつぶやいたことによって視聴者増加に勢いがついたとのことです。私が実見したのはその直後ぐらいで、そこから朝3時4時の終わりまでずっと見てました。翌日は普通の仕事の日…。ただ久々に早朝までやるクラブ的興奮を経験させてもらったことは確かで、ものすごくいい余韻が残りました。どうもありがとうございます!
前後の色んな人の書き込みによると、この@okadadada氏のプレイは予め準備されたものではなく、12/24の夜、自室に帰ってきた@okadadada氏がいきなり思い立って始めたらしいです。それもiPhoneを使って(この時期iPhone活用Ust配信はまだ一般化していなかった)。また、@okadadada氏は関西エリアでは積極的にプレイをしている方のようで、かなりの実績があるとのこと。
従ってまったくのシロートの方が思いつきで始めたUstイベントに客が集まったというものではなく、相応の力量を持った方が余興で始めたUst配信にたまたま膨大なお客さんが集まったという図式になります。
この偶然性が聴衆を狂喜乱舞させる要素の1つになっていました。また、この偶然性が幸いして@okadadada氏は関東エリアでも大いに知名度を上げました。彼が東京にやってきてプレイした日にはかなりの熱狂があったそうです。私も先日の早稲田茶箱でのプレイをUst経由で見てました。
Ustを使ったイベントで多くの観客を集めるものがすべて偶然性に拠っていると言うつもりはありません。ただ、偶然に多くの観客が集まるものには以下の特徴がありそうです。
- 一部の人(かつフォロワー)は、その人がテーマとして取り組んでいるいることをよく知っている。だから突発的なUst配信でもその価値が正確に判断できる。
- なので、ちょっと配信内容を見ただけで「すげー(+URL)」というコメントを出せる。
- よく知っている人の最初期の反応がRTやコメントの連鎖を生んでいく。
要はその人が何かのテーマに取り組んでいること。それが日頃のTwitterのつぶやきでフォロワーによく知られていること。そのへんがポイントだと思います。
Twitterにおける「集客」は、マーケティングの専門家の方がしっかりと研究する価値のある非常に大きなテーマだと思います。
私が最近観察することができた事例をいくつかメモしてみます。
■SocialWeb2.0Party(そーしゃるうぇぶつーぽんとおーぱーてぃー)
@dynamistarさんが企画、主催しているパーティです。昨年の7月下旬に第一回を開催。9月に第二回、12月に第三回を開催しています。回を追うごとに参加者が増え、第三回では百数十名が集まったと聞きます。
今年に入ってからは赤坂NOTEという飲食のできるイベントスペースを定番会場として、すでに2回開催しています。(うち1/28のには私も出させてもらいました^^;)
実は初回の企画段階で@dynamistarさんが私のところにいらっしゃって、「協力してくれないか」と打診を受けました。こちらはあれこれ抱えているのでお断りしたのですが…。それでも「二回目をやるよ」「三回目をやるよ」というのをその都度、@dynamistarさんから伺い、興味深く動向を見守っていました。すると回を追うごとににぎやかになっていくではありませんか。これはすごいと思いました。局所的かも知れませんが、これは1つの成功事例だと思います。
成功への流れをまとめてみると…。
- イベントのナビゲーターや講演者にTwitter関連およびWeb2.0関連のベンチャー企業の代表や専門家などを多く起用。Twitterでバズが起こりやすいプログラムになっている。
- 初回イベントの実施中に、会場で起こっていることをtsudaる人やUstreamで中継する人が複数出て、イベントそのものがTwitter上でシェアされる図式が生まれた。
- 初回来場者が50名だとすれば、その10倍~20倍の人がこのイベントに間接的に参加した格好。
- 興味を抱いた人は第二回目に実際に参加。第二回目において、第一回目と同じ図式が拡大再生産される。
- 以降、回を追うごとに、より多くの人の注目を集める図式が拡大再生産され、定番イベントになっていった。
もちろん成功要因はこれだけでなく、@dynamistarさんの営業、講演者への交渉、プログラムの準備など地道な活動があるわけです。それがあって初めて上記の図式の拡大再生産がうまく働いたということでしょう。
■ツイッター議員との今年最後のつぶやき祭り
Twitterを活用している政治家たちが10名以上顔を揃えたという伝説的なイベントです。その詳細は主催者である田宮嘉一さんのブログで確認できます。これは必読です。ちなみに田宮さんのフォロワー数は1万数千(@_@)。
12月24日に実施を決定し12月28日に開催するまで、告知・準備期間わずか4日。当初は会場も未定、参加政治家はゼロという状況だったそうです。しかし、田宮さんの姿勢に共感した協力者が政治家さんに出演交渉をしてくれたり、デジハリの杉山さんが会場を提供、司会もKNN神田さんに決まり、だんだんと形が整っていったそうです。それらの準備がすべてTwitter上で行われました。
田宮さんから直接話を伺いましたが、彼のTwitter活動のベースには、長らく携わってきたボランティアの経験があるとのこと。すなわち、フォロー-フォロワー関係を作っていく場合でも、細かな配慮を欠かさないとのことです。実際、私がフォローした時にも、十数分後にフォロー返しがありました(手動でやっているそうです)。
「ツイッター議員との今年最後のつぶやき祭り」にしても、”社会善”的な意識で進めたものと思われます。
集客という意味でのポイントは以下。
- イベント開催情報がRTされて広く伝播した。
- ないないづくしから始まったイベントの準備の進展度合全般がやはりRTの対象になり、「ない状況」がクラウドソーシング的なメカニズム(協力者が多数出現)で急速に埋まって行った。
- イベント開催直前の状況で、RTなどで開催を知っていた人たちの間に大きな期待が高まった。
- 政治家10名以上参加というエポックメーキングな出来事をUstreamで遠隔から視聴することができ、Twitter上には長らくバズが残った。
今日は時間切れでここまで。
あまりまとまったものを書こうと欲張らずに、Twitterでつぶやくのに近い姿勢でやると、ブログがまた書けそうですね。
昨日のソフトバンクによるUstreamへの出資発表、およびその後の孫さんの四半期決算説明会。Twitterのタイムライン(TL)をちらちら眺めていましたが、ものすごいことが起こっているなということはすぐにわかりました。典型的なエピソードがこちら。
RT @akhk: RT @yukawasa: RT @dfnt: 孫さんにツイッターで話しかけたら返事→数分でスタジオ設立がどんどん決まって行く、という恐ろしい体験をしたのでまとめました。… http://bit.ly/9i432m
@himanainu_kawaiさんが説明会で待機している孫さんにTwitterで「Ustreamへの出資凄いニュースですね!表参道店に誰でも使えるUstreamスタジオ作って下さい!」と話しかけたところ、即断即決で決まったという展開。すばらしいことです。
その後の孫さんの説明会はUstreamで配信され、5000人以上が目にし、TwitterのTLは大さわぎ(いい意味で)になりました。
Twitter界隈では以前からキャズム超えが話題になっていました。1.5年前ぐらいから「これでキャズムを超えた」「いやまだだ」というやりとりがよくなされていました。
最近、特にこの方(@HyoYoshikawa ←以前仕事でご一緒させていただいたことがあります)がキャズム超えに関して熱心に発言していらっしゃいました。色々な現象をサンプリングしては「これでキャズムを超えた」という意味のコメントを書かれています。例↓
私としても、2007年の夏ぐらいからTwitterを使い始めて、一時期不熱心になったり、ある時期はかなり否定的な見解を持ったりして、でも姿勢を修正してみるとまたおもしろくなったりということを繰り返して、現在は4度目の波が来ているかなという印象を持っています。キャズムもすでに超えているという感覚があります。定量的に明らかにできるわけではありませんが。
単にキャズム超えというのではなく、ひょっとすると、もっとそれよりも異質なよい変化が起こっている可能性もあると考え始めています。複雑系で言う「創発」に近いもの、すなわち、個々のふるまいが全体としては単純総和以上のシステマティックな様相を呈する、とか、以前、レイ・カーツワイルが言っていた「特異点」(Singularity)を超えたのではないか、とか。
(もっともレイ・カーツワイルが言っていたのは、CPUの進化がキカイとしての心性を獲得し、それが人間の能力の総和を超えるという意味だったわけで、それに対して現在Twitter上で起こっていることは、まさに人のつながり性がプラスに働く方向での特異点突破。人の価値。レイ・カーツワイルの真逆ですね)
ともあれ昨日は、複数の方がTwitterでおっしゃっていたように、日本のIT史上に記憶される日になったと思います。
昨日のよいまとめが以下にあります。
RT @TKool: browsing: ソフトバンク発表会祭に見る、孫正義の「現実歪曲時間」 - いま作ってます。 http://j.mp/abJizM
先日、Patently AppleというAppleの特許に特化した専門サイトで、いわゆるHome Energy Managment(HEM)に関連したAppleの特許出願が報じられました。
内容は一言で言うと、家庭内の電灯線をデータ通信に使うPLCの技術を応用し、ネットワークに接続された電子機器や家電製品の消費電力を包括的にコントロールするための技術や工夫の集合体になっています。
Patently AppleではAppleが出願する特許を定常的にチェックしているらしく、願書が公開された時点でいちはやく目を通し、記事に書くというスタイルをとっています。Appleが出す特許の関連ではおそらく世界一早い情報源なのでしょう。
で、それを様々なニュースサイトがウォッチしています。
この専門サイトから出たAppleのHEM関連特許の情報は、私もearth2techというニュースサイト経由で知りました。
それからしばらく経って、興味があったのでこの特許の関連のことを色々調べてみました。Googleで関連事項を記述しているニュースサイトの記事を拾っていくと、なんとすべてがPatently Appleの記事を情報源としているではありませんか。情けないとは言いませんが、ニュースサイトならもう少し情報補強のしどころがあろうというもの。ネタ元記事1本だけで自サイト(商用サイト)のニュース1本が書けるなら、これほどコスト効率のよい執筆活動はありませんw。
自分としてはもっと濃い情報が欲しかったので、しょうがなく願書本体にあたることにしましたが。
ただ、私もそうしたニュースサイトの記事に躍らされたクチで、このニュースを読むなりTwitterでつぶやいてしまいました(ただし引用したのはニュース記事ではなく元の記事)。
関連の報道では、「Appleがスマートグリッド分野に参入する」(HEMはスマグリの一部)と報じているものもあり、Twitter上でも大いに話題になりました。数えることはできませんが、簡単な検索からも数千以上のつぶやきが発生したであろうことが推察されます。もちろん私もその一部。
専門サイトの1本の記事から数十のニュースサイトの記事が生まれ、数千のつぶやきが発生する…。すごいですね。しかし、大元の専門サイトの記事の見解に誤りがあったりしたらどうなるんだろう、ということも考えてしまいます。事実の誤りというより、見解の誤りの方ですね。それによってミスリードが発生する可能性あるという方の見解。
昨年12月後半から、Twitterでユニークな活動をなさっている方々多数と出会いました。忘新年会だったり勉強会だったりイベントだったり…。それによってTwitterを核にした集客の定番パターンが見えてきたように思います。また、遅ればせながら以下のTwitter本5冊に最近目を通しました。その内容も参考にしながら、Twitterによって可能になりつつある新しいタイプの起業について、少し時間をかけながらまとめてみます。
■Twitterで潜在顧客の「買うリスク」を軽減できる
まず大前提として確認しておきたいこと → 商売は顧客がいなければ売上はゼロだということです。起業を考える人は、大きな事業であれ小さな事業であれ、すばらしい前途を思い描くものですが、そのイメージが成るも成らないも、すべては顧客の存在いかんに関わっています。
起業する時は、誰もが顧客ゼロの状態から始まります。ゼロが10になり、10が100になっていくには、未だ顧客ではない人たち(以下、潜在顧客)の1人ひとりに商品・サービスの価値がきちんと伝わり、お財布を開いてもらうことが必要。しかし、これがなかなか簡単ではないです。
リスクは潜在顧客の側にあります。潜在顧客の方々は、お財布を開くのに先立って、「まだほとんど買った人がいないモノ・サービスを自分が人柱になって評価しなければならない」というリスクを冒すことになります。このリスクを乗り越えてもらうことが、なかなか至難の業。
そこで起業家側では、潜在顧客が向き合うリスクをなるべく軽減してあげる必要があります。すなわち、開業当初からそこそこお客さんがいるようにして、潜在顧客がその商品・サービスを買うにあたって「誰も仲間がいない状態」ではないようにしてあげる必要がある…。
しかし、これは考えてみれば大きな矛盾をはらみます。開業当初だからお客さんがいないのは当たり前。けれども、潜在顧客のためには「すでにお客さんがいる」ようにしてあげなければならない。このジレンマをどう切り抜けるか?
一般的に資本力のある企業の場合はこのジレンマを広告宣伝費の投入で乗り切ります。テレビを見ても駅のポスターを見ても「xxxx、新発売!」という情報が躍っていれば、認知も進み、実際にコンビニなどで手にした場合にお財布を開くのは、あまりリスキーな行為ではありません。その企業がすでにブランドを確立した企業であればなおさら。
小資本の起業の場合は、ここでTwitterが大きくものを言います。
起業家はTwitterを活用することによって、前もってブランドを作るまではいかないにせよ、最初に顧客になる可能性のある人たちに「その商品・サービスを買うがリスキーではない」と思ってもらえるような、心理的なつながりを構築することができます。
■@yut403さんのリアルショップで起こっていたこと
Twitterで顧客との良好な関係を取り結んでいる実例に、ジャズを中心にフィンランド音楽のCDを販売している@yut403さんがいます。
@yut403さんはo-moroというネットCDショップを2008年10月から運営しています。私も北欧のジャズが好きなので、たまたま@yut403さんの北欧ジャズ系コメントを見つけて、それからフォローするようになりました。
その後、o-moroが提供しているユニークなサービス、o-moro SANOMAT(何が届くか分からない?フィンランド音楽ニュースレター!)に加入し、毎月1枚@yut403さんがセレクトするCDを送ってもらっています。1月には好みの渋いピアノ(Samuli Mikkonen)がいただけたので大満足です。
今年1月の週末に渋谷区東でフィンランド政府観光局に関係したイベント「フィンランドカフェ」が開催されました。ここに@yut403さんはCDショップのブースを持ち、ふだんはネット通販でだけ販売しているCDを出品しました。彼にとっては初めての試みです。
このリアルショップにお客さんが続々とおしかけたのです。数で言えば数百数千という具合には行きませんが、それでもフィンランドカフェが開催される週末の都度、Twitter経由で知った彼のフォロワーを中心に三々五々、彼のブースを訪れ、実際にCDを買った人もたくさん出たとのことでした。
私も行き、たまたまかかっていたフリー系のジャズを1枚予約しましたw。
ここにある要素を、やや無味乾燥になりますが分解してみると以下になります。
- @yut403さんをフォローしている人たちは、彼がフィンランド音楽専門のネットCDショップを運営していることを知っている。
- 一部のフォロワーはそのCDショップからすでにCDを買っている。
- 大多数のフォロワーは@yut403さんがフィンランドカフェでリアルなCD販売を行うことを知った。
- 週末に時間の余裕があり、@yut403さんに会って見たいと思う人たちが彼のショップを訪れた(一種の軽いオフ会状態)。
- そこにリアルな@yut403さんがいた。
- たくさんのフィンランド系CDが並んでいるのを見た。それらのCDやそのショップに対する心理的な障壁はまったくない状態。
- @yut403さんと「何がいいんですかねー」的な会話を交わす。
- 自然とお財布が開く。
こういうことが起こっていたわけです。
@yut403さんのリアルCDショップでCDを買った人たちは、@yut403さんにとって初めてのリアル店舗顧客であったにもかかわらず、さも自然なことのようにCDを買って行きました。こういう喜ばしい事態がなぜ起こったのか、よく吟味してみる必要があります。
以下続く。
先日の投稿でも少し触れましたが、ピーポーズのサイト内容を刷新しました。
コンテンツが少しできあがってきましたので、簡単にご説明します。
(なお、従来から提供してきた[pepoz]ライブショウ、[メルPEPO]改め検索の達人は、これまで通りご利用いただけます。)
個人的に関川夏央は非常に好きな文筆家です。練り上げたよい文章を書きますね。二葉亭四迷がタイトルとなっているものの、その実、明治期の文人群全般に光を当てた好著「二葉亭四迷の明治四十一年」がすごくよかったです。個人的には、軟弱な印象のある二葉亭四迷のキャラに抵抗感がありましたが、最後まで読み進めるとそれもきれいさっぱりと洗われました。
なかで、樋口一葉と彼女を取り巻いていた文人たちにかなりのページが割かれています。ここから浮かび上がってくる一葉の人となりが実にいい。惚れ惚れします。日記など彼女の筆になるものを取り寄せている最中ですが、当面浸ってみたい感じです。
一葉関連の住居などが本郷地区に残っているので、先日土曜日に出かけて、この目で見てきました。上のコンテンツに掲げた写真にある路地は最高でした。
旅のテーマ:「ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の旅」安田知子著(1)
サンチャゴ巡礼に興味を持っています。関連書籍を買い込んであちこち読んでいますが、結局、巡礼というのは物見遊山的な観光の要素と、まぁ求道というか自らの精神を深める旅というか、その関連の要素とを併せ持つ、非常に魅力たっぷりの経験のようです。以前、日経夕刊で日経の編集委員の方が実際に自分で歩いてルポを書いていらっしゃいましたが、あれを読んで以来、興味を持ち続けています。
その延長で、上のようなコンテンツができあがっている次第。サンチャゴ関連は気長にコンテンツを加えていきたいと思います。
以下もその一環。
サンチャゴ巡礼の帆立貝についてのメモ:「街道をゆく 南蛮のみちⅠ」司馬遼太郎著
気ままな一人旅に出てみるか:「定年バックパッカー読本」大嶋まさひろ著(1)
「定年バックパッカー」という考え方があることを知り、取り寄せたのが上の本。
何を隠そう今泉も浩宮様と同じ年の生まれなので、年齢的には大台に乗り○○歳。考えてみると、中高生の頃から、上の世代(いわゆる団塊の世代)のやっていることを見て育ってきているし、彼らの行動の影響をかなり強く受けています。
例えば、高校の頃、ほぼ毎日ジャズ喫茶に通っていましたが、このジャズ喫茶という特殊なカルチャーもその世代の方が形作ったものですよね。
それからバックパッカー旅行。私が最初に行ったのは1980年で、まだ黎明期だったですが、道筋を作ったのは上の世代の人たち。そんなこんなで、年齢的にも大台に乗ったこともあり、青年期から慣れ親しんだ上の世代の方々の価値観や楽しみごとを、ピーポーズのサービスに取り入れて、うまくパッケージングしてお届けしたいと考えているところです。
という流れで目に飛び込んできたのが「定年バックパッカー」ということなのです。上のコンテンツではこれまでに読んだバックパッカー系書籍を簡単に振り返っています。いっぱいありました。
最後は、ピーポーズがご提供する美味経験イベント第1弾。著書多数、「鉄なべごはん会」でも有名なみなくちなほこさんを講師にお招きして行う、「みなくちなほこ」さんと作る鉄鍋料理の会+鎌倉散策のご案内。
石井君が奮闘してくれてみなくちさんのご協力をいただけるようになり、なかなかいい感じで進んでおります。
昨日の続きです。
・21世紀石炭の概要にはいくつかの企業名が出てきます。基本的な枠組みは、両国が協力して石炭のクリーン利用を推進するというもの。具体的には、
(1) 米商務省からChina Power Engineering and Consulting Group Corporationに助成金を交付し、米国の技術を使って実現するIGCC(Integrated Coal Gasification Combined Cycle、石炭をガス化して発電する効率的な発電技術)の事業化調査を行う、
(2) 二酸化炭素排出を大きく削減できる石炭火力発電所を実現する目的で米国Peabody Energy社が中国GreenGenプロジェクトに参画する、
(3) GEとShenhua Corporation(中国政府系の世界最大の石炭採掘会社)が共同でIGCCおよび他のクリーン石炭技術を開発する、
(4) AES(米国の発送電会社)とSongzao Coal and Electric Company(石炭発電会社)が共同で重慶の炭鉱から得られたメタンガスを活用した発電を行い、温暖化ガス排出を軽減する、
となっています。
・シェールガス・イニシャティブでは、米国のシェールガス(前投稿の注参照)技術を活用し、環境を配慮したシェールガスの開発を行う。具体的には日米共同の技術研究、シェールガス田開発、石油ガス産業フォーラムの活動、視察、ワークショップなど。
・米中エネルギー協力プログラムでは、民間22社以上が資金を拠出し、米中共同で中国における多数のクリーンエネルギープロジェクトを推進する。内訳は再生可能エネルギー、スマートグリッド、クリーン輸送、グリーンビル、クリーン石炭、コンバインド暖房・発電、エネルギー効率化。
こうした政策、方策を両国共同で行うことが合意されました。
21世紀石炭プロジェクトの項では、エネルギー関連企業およびスマートグリッド関連企業としては世界最大手のGEの名前が出ています。ここで記述されている要素を組み合わせると、世界最大の石炭採掘会社の石炭を活用する大規模なIGCC発電所の実現にあたってGEが技術を提供するという図式が見えます。中国における石炭火力発電の規模の大きさ、そして排出される二酸化炭素の多さについては様々な場所で指摘されています。これをGEが解決するわけですね。そして大きなビジネスにする…。
近年、日本の産業界の発展のためには中国の非効率なエネルギー事情に日本の省エネ技術、環境保護技術を投入すべきだという議論が多くなされてきました。今回のオバマ大統領&胡錦濤主席の合意はそれに先手を打つ形になるわけですね。
実に驚くべき内容と言っていいでしょう。中国のエネルギー活用が近代的なものになっていくのに必要な省エネルギー技術の導入、電気自動車の開発、再生エネルギー発電の開発、クリーンな石炭発電の開発、膨大なポテンシャルがありそうなシェールガスの開発、そしてスマートグリッドがすべてカバーされています。GEなどの名が挙がっている以上、この動きから生じる事業機会には米国企業が優先的にアクセスできるものと見て間違いありません。
ある意味では、相当の期間をかけて準備してきた奇襲攻撃。日本企業がこの中国でエネルギー関連の事業機会を獲得していくためには、鳩山政権と各関連省庁が早期にこれに匹敵する戦略を練ることが不可欠だと思います。
なお、GEについては、この記事(GE: A Third of Smart Grid Stimulus Winners Are Our Customers)が、先般のオバマ政権によるスマートグリッド関連助成金の対象となった1/3のプロジェクトは、実はGEの顧客企業(電力会社等)であったことを報じています。GEのCEO、Jeffrey Immeltは、助成金政策を策定したEconomic Recovery Advisory Boardの委員だったとのこと。また、関連のロビー活動に四半期だけで755万ドルを投じたそうです。今回の米中合意についても、相当綿密なロビー活動が行われたものと見るべきでしょう。
中国を訪問中のオバマ米国大統領と胡錦濤胡中国国家主席がクリーンエネルギー関連の合意に達したとの報道がありました。
朝日新聞:米中、クリーンエネルギーで技術協力 首脳会談で合意へ
新華社通信:米中協力でクリーンエネルギーを経済成長エンジンに=ロック米商務長官
(無料の会員登録が必要)
この報道に関連してTwitterで @takuya_itoh 君が以下の情報を流してくれたので…
RT @takuya_itoh: ホワイトハウスから発表されているクリーンエネルギーに関する米中の合意。EVやSmartGridについても言及されています。 http://bit.ly/3oZ39y
リンク先の以下のホワイトハウスの公式文書にざっと目を通してみたところ、なかなか興味深い事実が判明しました。
U.S.-China Clean Energy Announcements
・米国と中国はクリーンエネルギー政策に関して7つの主要分野を設定し、中長期の相互協力を行う。7つの分野は以下。これを見ただけでもかなり包括的かつ戦略的な協定であることがわかります。
- 米中クリーンエネルギーセンターの設立
- 米中電気自動車イニシャティブ
- 米中エネルギー効率化行動計画
- 米中再生可能エネルギーパートナーシップ
- 21世紀石炭(の研究開発)
- シェールガス・イニシャティブ(以下の注参照)
- 米中エネルギー協力プログラム
・米中クリーンエネルギーセンターでは、両国が5年で150億円以上を拠出し、両国の研究者によってビルのエネルギー効率化、クリーンコール(二酸化炭素吸収・貯留技術含む)、低炭素自動車の研究を行う。
・米中電気自動車イニシャティブでは、石油依存度軽減、低炭素化、経済成長を目的として、標準規格開発、12以上の都市におけるデモプロジェクト、技術ロードマップの策定、啓蒙プロジェクトなどを行う。
・米中エネルギー効率化行動計画では、ビル・産業施設・消費者家電におけるエネルギー効率化を推進するため、省エネビル基準および評価システムの確立、ベンチマーキング、検査官・監査官の育成、テスト手順の整備、消費者家電製品用評価指標の開発、省エネ認定制度のノウハウ提供、年次米中エネルギー効率化フォーラムの開催を行う。
・米中再生可能エネルギーパートナーシップでは、再生可能エネルギーを両国の各地域に浸透させるため、Advanced Grid Working Groupを発足させ、技術・研究資源(人等)を地方自治体へ提供し、両国の政策立案者、エネルギー事業規制当事者、業界リーダー、各地域が電力網の近代化を推進できるようにする。
シェールガスに関する注:Wikipediaによると頁岩から取り出した天然ガス=Shale Gasは米国では天然ガス供給源として重要性を増しており、2020年には同国の天然ガスの半分がShale Gasになる可能性もあるみなす専門家もいる。また中国でもShale Gasのポテンシャルがありそうだということが以下のブログ投稿からわかる。
海外では頁岩ガスがブームになっている
時間切れなので続きは夜にでも…
先日来、ウチのピーポーズのサイトの改修を進めていて、おおかた原型ができあがりました。考えているのは、非オンラインのリアルな[pepoz]です。色々な知見をお持ちの方にリアルな場でご登場いただいて、レクチャーをいただき、それに関連したおいしい食事をいただくというような内容を考えています。オンラインの[pepoz]から撤退するわけではなく、まず非オンラインで道筋をつけてから再びオンラインを盛り上げる、ということを考えています。
取り組むべきジャンルをまず5本に絞り込みました。
個々のジャンルについて、どんな世界を展開していきたいか、関連する書籍をご紹介することから始めています。以下はその第一弾。弊社サイトの3本の投稿を1本にまとめた上で転載します。
■旅のテーマ
「黄金の旅」の テーマ設定には色んなアプローチがあると思います。その1つに「日本百名山踏破」とか「日本百名湯めぐり」とか、全部制覇するのにかなりの日数を要するも のを選定し、1つずつ着実にこなしていくパターンがあるかと思います。四国八十八箇所をめぐる巡礼もその1つ。そして巡礼と言えば…サンチャゴ巡礼が頭に 浮かびます。
サンチャゴ巡礼は数が付く「○箇所めぐり」ではありませんが、いざ実行しようと思うと全行程800km、少なくとも40日はかかる非常に大型の旅の枠組みです。これも「○箇所めぐり」の1つと考えてよいでしょう。
2007年7月から11月にかけて日経夕刊で週1回「還暦カミーノ~スペイン巡礼記」が連載されましたが、お読みになった方も多いかと思います。同紙編集委員の土田芳樹氏が還暦を迎えたのをきっかけに、自らの足でサンチャゴ巡礼路を歩き、レポートを書くという企画でした。当サイト運営人dimaizumもこの連載で初めてサンチャゴ巡礼のことを知りました。
サンチャゴ巡礼、なぜ気になるのでしょうかね?
「黄金の旅」の中身を考えて行くにあたって、サンチャゴ巡礼は絶対にはずせないと思いました。というのも、サンチャゴ巡礼は今日思い立って明日行けるような旅行ではありません。相応の準備が必要です。
その準備も、長丁場に備えた体のコンディションづくりはもちろんのこと、情報収集も必要ですし、それも単なる旅行の目的地の情報収集とは異なる、いわば一種の勉強が必要になると思います。
サンチャゴ巡礼がポピュラーな巡礼として確立した背景には何があるのか。多くの人はなぜその巡礼に赴くのか。自分が行く際には、どういう納得の仕方で行くのか(旅行が大型であるだけに、自分なりの納得が必要になります)。
出かける前にサンチャゴ巡礼に関するもろもろの事項の理解を深めておいて、そうしてすっきりとした納得感を持ち、それから行くのが順当ではないかと思うのです。
800kmを歩くというのは、自分が歩く場合もそうですが、1,000年前の人が歩いた時にも、現代に欧州の方が歩く場合にも、相当に大変なことで す。その大変さを乗り越える自分なりの納得感というものが1,000年前の人にもあったでしょうし、現代の欧州の方にもあるでしょう。そうしたものを理解 していくなかで自分の納得もできていくのではないかと思うわけです。
まずは関連の書籍を読むのがいいかと思います。ということでオンライン書店で数冊取り寄せてみました。まず最初に読んだのが安田知子著「ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の道」(芙蓉書房出版)。
安田知子氏は1975年福岡生まれのライター。略歴には「40カ国以上を旅する。旅先では市場やスーパーマーケットを覗いて、食堂でごはんを食べ て、通りで見かけたカッコイイ人を眺めるのが旅の基本スタイル。2004年に初めてサンチャゴ巡礼路を歩き、以来、歩く旅に魅了される。」とあります。ま だお若い方ですね。
この本は非常に興味深く読めました。著者が自分の目で確かめ、歩いて確かめ、食べて飲んで確かめたものをさらりと書き綴っているのですが、最初は好 奇心と高揚感でいっぱいだったものが、800kmの行程が進むのに応じて、段々と単調な日々になり、著者の心境にも変化が訪れ、考えが深まり、そして最終 目的地のサンチャゴ・デ・コンポステーラに着いて感激に包まれる。そうした行程の一部始終がしっかりと追体験できるように書かれているのです。従って読み 終わると、自分も800kmを歩き終わったかのような満足感が得られます。旅行記として非常に優れていると思いました。
■サンドイッチとワイン
地名表記ですが、日本では「サンティアゴ」、「サンチャゴ」の2つの表記がともに数多く用いられており、Googleでの検索結果も、どちらを使う かで違ってきます。また、Amazonで書籍を検索する際にも、どちらをキーワードにするかで結果が違います。本サイト(今泉注:ピーポーズのこと)では「サンチャゴ」を用い、書名な ど固有名詞として使われている場合には「サンティアゴ」も用いることとします。
さて、旅書籍メモ、安田知子著「ぶらりあるき サンティアゴ巡礼の旅」の続きです。この本では巡礼路を歩いて行く間に食べたり飲んだりすることのできるものや店に関する記述がたくさんあり、非常に楽しいです。
まず、巡礼者たちがほぼ毎日口にするのが「ボカディージョ」(bocadillo)というサンドイッチ。
公園で巡礼者四人とボカディージョを食べていると、隣に座っていたアメリカ人の巡礼者が言った。
「この巡礼中にどれだけのワインを飲み、何本のボカディージョを食べるのかな?」と。
「ボカディージョ」とは、スペイン語でサンドイッチのこと。これも巡礼中に覚える単語の一つ。スペインのパンはフランスのバゲットよりも大きめ。これに生ハムやチョリソ(乾燥ソーセージ)、チーズを挟んで食べる。
巡礼路でランチや休憩中に食べることが多く、巡礼者のお弁当みたいなもの。
ボカディージョは、朝からアルベルゲ(巡礼宿)で作っていくこともあるし、歩いている途中に、村の商店やパナデリア(パン屋)に寄ってパンと具を買うこともある。そして、公園のベンチや木陰でボカディージョを作って食べる。
中略
また、バルでもボカディージョを作ってくれる。種類はハム、チーズ、チョリソ、ツナなど一通りあるが、トルティージャ・フランセサ(プレーン・オムレ ツ)をよくオーダーした。運ばれてくると、オリーブオイルの風味がすごい。スペインでは、バターではなくオリーブオイルをたっぷり使う。熱々のオムレツと パンだけのシンプルなものだが、とても美味しい。
中略
そして、ボカディージョのために、巡礼者のバックパックの中には、パン、それに生ハム、チョリソ、チーズ、ツナ缶、パテなどが入っていることが多い。
この記述を読んだだけで食べたくなってしまいます。なお、掲げている写真は本物のボカディージョです(非常にキレイに撮られていますが、巡礼路で食べるものはもっとワイルドそうです)。
あとは、ワインです。
巡礼中に、ワインを飲まなかった日は一度もない。私はワイン好きというわけではない。ただ飲む機会が多かっただけ。レストランでの食事にはワインが付いてくるし、アルベルゲでも誰かが買ってくるし、またバルでもワインが一番安い飲み物だったからよく飲んだ。
中略
スペインでは、ワインをガバガバ飲む。気取った感じがなく、九州での焼酎の飲み方に似ている。それは銘柄、水、氷、グラスなんかに特別にこだわらずに飲むということ。
中略
また、ヴィアーナでは突然の雪で、民家の軒下に避難したら、家の人が中に入れてくれてワインを出してくれた。そして、帰りに自家製の白ワインを一本持たせてくれた。
それにしても、よく飲んだ。特に歩いている途中にバルに寄って飲んでいた。ビールもいいが、トイレに行きたくなるのでワインにする人が多い。
この引用部分だけを読むと、著者だけが特別にワインを飲んでいるように受け取られるかも知れませんが、欧州の巡礼者、特にスペインの巡礼者がそうい うスタイルで巡礼を続けているとのことです。というより、日常の食においてワインをケチらずに飲むということがあり(値段も安そうです)、そのスタイルを 巡礼の時にも続けているというのが正しいところでしょう。日本から行った巡礼者も彼らと一緒に歩いていると、自然とそのスタイルに染まってしまうというこ となのだと思います。
現地のカフェ兼食堂兼居酒屋であるバル(Bar)についても非常に魅力的な記述が多々ありますが、それについては、この本で直接お読みいただいた方がよいでしょう。
■100kmだけ歩く
著者の安田知子さんは、パリを拠点にしてお仕事をされているようで、こちらにインタビュー記事がありました。この本の後で「パリの老舗」(ピエブックス)という本を書いていらっしゃいますね。
さて、この本を読んでわかるのは、サンチャゴ順礼が非常に多種多様であるということ。一般的には、ピレネー山脈のふもとからサンチャゴまでの800kmを淡々と歩き通すことがサンチャゴ順礼だと思われていますが、実はそうではないようです。
まず、順礼路をいくつかに分割し、例えば毎年の休暇時期に5日間ずつ投入して、10年近くかけて800kmを踏破するというパターンがあるそうです。1回に100kmずつ、8回に分けるといったパターンもあるのでしょうね。
それから、800km全部を歩かなくても、途中の大きなレオンという街から歩き始める人もいれば、最後の100kmだけを歩く人もいるそうです。
サンチャゴには、巡礼者に順礼証明書を発行する事務所があるそうで、そこでは、道々歩いてくる間にアルベルゲ(順礼宿)などで押してもらったハンコにより、徒歩で100km以上歩いたことが証明できれば、コンポステーラという順礼証明書が発行してもらえるそうです。
ということで、800km全部を歩かずに、バスで移動しながら条件を満たす人もいるとのこと。その他、自転車での踏破も認められているそうで、 200km以上を走ったことが証明できれば、コンポステーラを発行してもらえるそうです。これだと、実際に自分がサンチャゴ順礼路を歩いてみる際にも、自 分に合ったパターンで挑むことが可能になりますね。
もう1つ、この本を読んで、サンチャゴ順礼について漠然と持っていた先入観が吹き飛んだことがあります。日本にいて「サンチャゴ順礼」という言葉を 聴くと、どうしてもそこに「求道」のような歩くスタイルを思い浮かべてしまいます。「精神修養」「修行」「苦行」のようなニュアンスをくっつけて考えがち です。
彼女が経験したサンチャゴ順礼はまったくそういうものではなかったようです。タフではあるけれど、楽しい毎日…。順礼路で知り合った仲間と毎晩、食べて飲ん で楽しい時間を持つ…。シャワー共用、個室のない大部屋で眠る日々だけれども、仲間意識が生まれ、独特の連帯意識が生まれる…。そんな雰囲気の順礼だった ようです。
これは世界各国からサンチャゴ順礼に集まってくる人々のなかに欧州からの巡礼者がやはり多く、彼らの順礼のスタイルがそうだということなのかも知れません。前投稿で書いたワインの飲み方と同じ事情があるようです。
いずれにしても、この本では、安田さんの目を通して、サンチャゴ順礼の現実の姿を知ることができました。
*下の写真はサンチャゴ・デ・コンポステーラ・カテドラル
遅くなりましたが11月4日水曜日に行われたスマートグリッド勉強会のご報告を簡単に。
今回は新たにスマートメーターがご専門でいらっしゃる石戸谷さん、外資系コンサルティング会社で主に自動車業界を担当されている木村さん、大手システムインテグレーション会社でIPv6がご専門の大元さんのご参加をいただきました。
その他の出席メンバーは、伊藤さん、林さん、今泉。欠席された方が6名。
■11月4日開催第3回勉強セッション内容
○今泉(資料はこちら)
・米国の停電による損失は年間1,000億ドル(EPRIの試算)
・先頃決定したオバマ政権Smart Grid Stimulus Fundsの交付先概要
-- スマートメーター関連プロジェクトを多く選定(雇用確保目的)
・米スマートグリッド普及に不可欠な電力制度のキーワード「Decoupling」について
-- 背景としての米国電力自由化概略
-- 電力会社にとってスマートグリッドに取り組むインセンティブの再確認
-- 米国では州ごとに電力規制が異なり、スマートグリッドが進展する州とそうでない州とに分かれる可能性がある。ベンダー目線では単一な市場とは言いにくい○林さん
・スマートグリッドにおける「電気マネー」(一種のポイント制度)ビジネスの可能性について
-- 太陽光発電やEVが普及したあかつきに電気マネーがどう流れるか
-- 政府、一般家庭、メーカー、決済事業者における電気マネーのメリット
・次世代EVのアーキテクチャー
-- EVの新しい事業モデル
-- EVがスマートグリッド浸透のドライバーになる可能性がある
・青森県六カ所村におけるスマートグリッド実証実験について
-- 青森県六カ所村がスマートグリッドに適している理由
-- 青森県によるデータンセンター誘致について○石戸谷さん
・海外におけるスマートメーター導入の動向
-- スマートメーターの基本
- 多くの国では日本のように毎月検針員が電力計を読んで当月電気料金が決まる仕組みにはなっていない
- 家庭側が読んで電力会社に支払う、電力計検針は3ヶ月ごと等、形態は多様
- 従ってスマートメーター設置の目的も検針員の人件費削減ではなく、その国ごとに異なる
- 盗電防止が最大の目的という国も多い
-- 各国の導入動向
- 米国
- 欧州
- 他の途上国○木村さん
・業務用自動車の資源(車両、人)配置最適化について
- 業務用自動車が全自動車に占める割合は大きい
- 業務用自動車全般において、資源最適化の余地が大きい分野がある
- EVの普及を前提に、業務用自動車の動的な資源配置を行うことができれば、より少ない車両・人員でより多くの貨物を運ぶことができる
- スマートグリッド関連では、電気自動車の充電およびバッテリー取替と上記資源最適化方策とは重なる部分があり、今後の研究が必要
以上のような内容でした。新しい方がいらっしゃると、その方のバックグラウンドやご専門がそれぞれ違うため、新しい視点で新しいお話が伺えるということがあります。今回も非常に知的興奮をそそられるよい集まりでした。
開催等の情報はこちらで流しています。なお、当日の資料の公開・非公開は各メンバーの任意ということにしています。






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