バイオマス発電が意外と好採算であることについて
夏から抱えていた単行本が昨日ようやく脱稿しまして、心置きなくこちらが更新できるようになります。
単行本は「電力供給」に関するもので、東日本大震災以降大きく変化している電力供給に関連した必須キーワードをわかりやすく解説したといった内容です。これを書いたことで自分の中でも、色々な分野に足がかりができて、見通しがよくなりました。版元は技術評論社さんです。
■未利用分が多いバイオマス
バイオマスもよくわからなかった分野ですが、調べてみるとかなりの奥行き(=可能性)があり、事業対象としても有望そうなことがわかりました。
バイオマスと一言で言っても、公園などの樹木を剪定した後の剪定枝から下水汚泥まで様々あり、普通は漠然としていてとらえどころがありません。バイオマスを推進している資源エネルギー庁系のパンフレットなどを読むと、これが一目瞭然です。主なバイオマスの賦存量と利用状況がどうなっているかを表したチャートを以下に引用させていただきます。
食品廃棄物は8割、建設発生木材は4割、林地残材のほとんど、農作物非食用分は7割が未利用なんですね。これらにエネルギー利用のポテンシャルがあります。
はた目から考えても、廃棄物の回収サイクルをどう作り上げるかがカギであることはわかります。効率のよい回収システムを構築しやすい分野でバイオマスの利用が進んでいくのでしょう。
■バイオマスをエネルギー源にする手法
バイオマスをエネルギーに利用する場合には、そのまま燃やす、発酵させてメタンガスなどを得る、ガス化してガスタービン発電などの燃料とするなど、いくつかのパターンがあります。それを整理したのが同じく資源エネルギー庁のパンフレットにあった以下の図。
これらの手法の中から、得られるバイオマス素材に合ったものを使ってエネルギー源とし、発電や熱利用ができるプラントとして構成します。
■富山グリーンフードリサイクルの好事例
バイオマス利用フローを組み、自社設置プラントで発電等を行って採算を成り立たせている事例はかなりあるようです。その中でも特に興味を引いたのが富山県富山市の富山グリーンフードリサイクル(株)の事例。
ここは食品廃棄物と剪定枝を回収し、自家消費用電力と堆肥を生産しています。
同社のリサイクルおよびエネルギー利用のフローがこちらのページにあります。よーく見てみると、各要素が相互に貢献しあう生態系のような「系」になっていることに気づきます。
回収した生ゴミはバイオリアクタで発酵させ、メタンを得ると同時に、生ゴミ発酵液を得ます。この生ゴミ発酵液が、細かく砕いた剪定枝を発酵させるのに欠かせない発酵原液のような役割で使われています。メタンの方は高効率の小型ガスタービン(30kW×3台)で燃焼用ガスとなり、年間で645,000kWhの発電電力量を得ています。この電力は施設内で利用されていますが、おそらくは剪定枝の発酵プラントでも使われているはずです。
同社の主力商品は剪定枝発酵から得られる堆肥です。これを生産するための電力、発酵原液を地域から回収した生ゴミから得ている格好です。
言うなれば、バイオマスからバイオマス系製品を作るのに、バイオマスで得たエネルギーと原料を使っているということになります。そこにはバイオマスを複合的に活用している構図があります。おそらくは、そうした複合的活用が好採算にも結びつくのではないかと考えています。ガスコンバインドサイクル発電で、ガスタービンから得た排熱を利用することで発電効率がぐっと高まるのにも似た図式です。
資源エネルギー庁の事例紹介のページでは短く採算に関する数字も出ていて、廃棄物処理設備および発電設備の初期投資額が約7,000万円(ガスタービン発電機が2,000万円×3台というところでしょうか)。これにより、節約できている年間の電力購入費が約800万円(645千kWh/年、発電効率20~21%)だそうです。
■すべて売電に回せば6年弱で投資回収が可能?
さて。来年7月からは固定価格買取制度が始まりますが、バイオマスの場合はkWh当たり20円程度という数字が従前から出ていました。上の富山グリーンフードリサイクルでは生ゴミ回収から得たメタンガスによってガスタービン発電機を回し、年間645,000kWhの電力を得ています。
これを20円で販売すれば、1,290万円の売上となります。設備だけで見れば6年を待たずに投資回収ができますね。電力購入で新たに発生する800万円と相殺すると年間500万円の粗利。どうでしょうか?
他の事例の数字をいろいろと見てみたいところです。
ご興味のある方、事例研究会をやりませんか?