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梅田望夫氏My Life Between Silicon Valley and Japanの「総表現社会と村上春樹の言葉」が非常に興味深いです。

インターネットにおいて、ひとつのトピックに関して非常に多数の人の意見が集まってくる時、それを俯瞰的な立場から見ることができる人は、公文俊平氏が語っていたところの「創発」をそこに見るのだと思います。

-Quote-
彼らは、これまでの近代文明が理念像としてきた、右顧左眄することなく自らの目標を追求する「強い個人」ないし「合理的エージェント」というよりは、他人の意見や行動に影響されやすい「弱い個人」ないし「烏合の衆」たちでもある。
 それにもかかわらず私は、彼らこそが「共の原理」の担い手として、さまざまな「協力の技術」や「関係性の技術」を発達させ利用するなかで、自分たちの共同目標を実現しうるような、「群がりの知性(スウォーム・インテリジェンス)」と「集合行為」を通じた自己組織能力とをもった存在だと考える。
 中略
彼によれば、人間の脳が発達させた驚くべき能力とは、他人の心を読む能力であり、それが実は人間の自意識の基盤となった。しかし、他人の心を読みその行動が示すパターンの意味を理解できる脳の能力は、たかだか百数十人を相手とするものに限られていた。
 中略
そして今日、コンピューターのソフトウエアが、ウェブでの人びとのオンライン活動のパターンを解析することで、何千万、何億という人びとの心、つまりわれわれ自身の心を読み、しかるべき対応――たとえばある人が興味を持ちそうな新刊書の推薦――をすることが可能になりつつある。つまり現在進化しつつあるソフトウエアは、人間精神の読み取り機になる方向に向かっているというのである。いいかえればここに、ソフトウエアの力を借りて、人びとがお互いの心を読み取り、コミュニケーションとコラボレーションを、さらには相互の奉仕を、より高度なレベルで展開していく可能性が生まれつつある。ジョンソンの言葉で言えば、われわれはいまようやく、「創発」のなんたるかを理解し、それを単に事後的に観察・分析したり、模倣的に再発・創出させたりしようとしていた段階から、新たな創発現象そのものを意図的・人為的に生み出す段階に入ったのだ。
情報社会学序説 5.1.1. 創発(イマージェンス)
-Unquote-

↑以前にも引用した部分です。ここで記されていることを、「総表現社会と村上春樹の言葉」に引用されている村上春樹と、同投稿を記している梅田氏がやっているように思えます。

ここで「立ち上がる理解」というものが、事前に予測できない形で、swarm intelligence的な状況から、いわく言いがたい精妙な相互作用によって出現するのがおもしろいわけですね。この時の理解の対象はおそらく、縦横二軸のマトリクスにぽっかり投射された雲のように、右も左も上も下も含んだ不定形なかたちなんだろうと思います。。

こうした理解はおそらく、現在のことでありながら歴史的な視点による理解であり、かつ、理解する主体が対象から一歩も二歩も離れたところにいるのではなくて、その気になれば、その理解を形作っているもののなかに再び入り込んで、理解自体を更新することできる、というおもしろい態様を持っています。

これは例えて言えば、ある時代の文壇における、過去の名作の解釈の状況を眺めていたところ、あまりにおもしろいものだから、タイムマシンで自分も移動してその文壇に入り込んで、あーだのこーだの言っているうちに、その名作の評価傾向が多少変わり、それでもって文学史にも相応の影響があって、文学史の延長にある現在も多少変化を被っている、その変化のなかに自分もいるし、その変化自体を鳥瞰することもできる、というあたりでしょうか。歴史的に例のない理解のかたちですね。参加も可能な理解です。

-Quote-
いま僕は毎朝数時間を費やして、SNSの中も含めて、ネット上に書かれた「ウェブ進化論」への感想や書評をできるかぎり読み、気になった内容は記録しながら考えるという作業を続けている。発売から二ヶ月以上たった今でも、捕捉できる限りで一日に最低100個くらいは新しい感想・書評がアップされているから、月に数千、これまでに累計で5,000以上の感想や書評を読んだ勘定になる。「こういう空気があって、その空気が僕のものを読んでくれているんだ」「全部まとまると正しい」というのは確かによくわかる。
総表現社会と村上春樹の言葉
-Unuote-

この記述にもなかなか痺れます。

dimaizum

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プロフィール

今泉 大輔

今泉 大輔

株式会社インフラコモンズ代表取締役。
国内の太陽光、木質バイオ、石炭火力の発電案件。海外の天然ガスに関係した案件の上流部分のアレンジメントを行っている。その他、リサーチ分野として、スマートグリッド、代替的な都市交通、エネルギーの輸出入。電力関連の近著も。

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