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"ARMが次期CPUコア「Cortex-A57」と「Cortex-A53」を発表"

ARMが予定通り64bitに対応したCortex-A57/53を発表しました。2011年の時点で発表していたため、今回はもう少し詳細な情報があります。

Cortex-A57の性能は、Cortex-A9の3倍のパフォーマンスとあります。たぶんこれはシングルスレッドだと思います。2012年の時点でスマートフォンの主流であるCortex-A9のほぼ3倍が2014年に搭載されることになります(2012年後半ではCortex-A15世代が立ち上がり始めましたが)。

また、"Cortex-A57 Processor"でPerformanceには28nmのCortex-A15との性能比較がされています。タイミング的には20nmからスタートが切れないでしょうから、28nmとの比較が妥当だと思います。28nmではDhrystoneで20%近くは性能差があるようです。十分かと言われると少しジャンプが小さい気がしますので、Cortex-A57は20nmぐらいから本番に見えます。

ARMv8で今回のライセンスを受けていることを発表したのは、AMD、Samsung、STMicroelectronics、Broadcom、Calxeda、HiSiliconだそうです。当然発表していないメーカもいるでしょう。AMD、Broadcom、Calxedaあたりはモバイル用を作る気がないでしょうから、ARMとしては既に天下を取れたモバイルよりもルータやマイクロサーバ等を次の主戦場としたいのでしょう。

気になったのはCortexA15の発表時にTIは最初からライセンスを受けているメンバーとして発表されていましたが今回は名前が挙がっていませんでした。OMAP部門をAmazonに売却する噂は本当かも知れません。

ARMv8は、バスの帯域を増やしり、L3を搭載したりと64bitに対応したりと本格的にマイクロサーバに対応できる製品が出てくるかも知れませんし、搭載コア数次第では下手なx86サーバより高いスループットを出すことが出来るかも知れません。

POWERやSPARCではマイクロサーバに進出は実質できませんし、Xeonでは消費電力が低いモデルならばマイクロサーバ向けになります。Intelは、Atomのコアを使ったマイクロサーバ向けモデルの開発していると言われています。このため、ARMがサーバ分野に進出するためのライバルはIntelになります。

Intelに対抗して勝てるメーカはなかなかいません。豊富な開発力と優れた製造技術があるため、ARM陣営の苦戦が予想されます。ただ、現在のスマートフォンやメディアタブレットではほぼARM優勢のため必ずしも勝負が決まったわけではありません。

また、CPUの分野は過去の歴史からは下克上がだいたい成功しています。メインフレームがRISCに追われ、RISCがx86に押しやられました。半導体分野で下克上が成功しやすいのはムーアの法則による性能向上がしやすいところでしょう。ARM系CPUもCortex-A8のころはインオーダーで1コアで周波数もそれほど高くありませんでした。ですが、今では4コアを搭載したり、アウトオブオーダーを搭載したりと性能向上は目を見張るものがあります。

このため、2014年に登場するCortex-A57/53でIntelが対抗してきても一定のシェアを持つことができると思われます。シェアに関しては2015年頃にラインナップが増えたころには10%強まで保持できているのではないかと予想しています。

また、Cortex-A57あたりではメディアタブレットより上のカテゴリにも進出できるのではないかと思われます。例えば、Appleが2014年頃にAシリーズをMacbook Airやminiに搭載するかもしれませんし、Androidがクラムシェルスタイルでシェアを持っているかも知れません。

RISC系はハイエンドのみになり、長い間サーバCPUに新参者が入ってきませんでした。このため現状を考えるとARMの参入は市場の起爆剤になると思われるため、ARM及びライセンスされているメーカにはぜひとも頑張って欲しいと思います。競争が激化すればするほど、市場は成長するのですから。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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