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"AmazonがTIのモバイルチップ「OMAP」を買収か?"のニュースを読んでいろいろと考えさせられました。この買収はAmazonにとってメリットが多いことなのでしょうか?

CPUの設計(製造)とハード(端末)製造の両方を行っているメーカはそれほど多くはありません。有名どころはAppleとSamsungでしょう。ただ、Samsungは自社で製造したものを必ずしも使用しているわけではありません。

ARM系チップメーカであるQualcomm、TIやNVIDIAは端末を製造していません。x86のIntelもPCメーカをサポートしていますが、端末を製造しているわけではありません。AMDも基本的に端末を製造していませんが、マイクロサーバを製造しているSeaMicroを買収したときにサーバメーカから嫌な顔をされました。

PC以下のカテゴリにおいてはCPUの製造と端末の製造は分業化されている方が多いです。

サーバ系CPUは逆に、POWERを製造しているIBMはサーバを製造していますし、Oracleや富士通も自前のCPUを活用した製品を出しています。

この状況下でAmazonがAppleのように自前で製造することを目指すのでしょうか?

自社設計のメリットはAppleの戦略を見ていればわかります。採用するデバイスの解像度にあわせてGPUとメモリ帯域の強化したり、他のメーカよりも早く高性能なCPUの搭載などもできます。

デメリットとして開発コストが上がることでしょう。購入と自社設計でどの程度差があるか分かりませんが、Appleの成功に対して追随しているメーカが少ないことを考えると開発コストは決して少なくないのでしょう。

Amazonはほぼ原価でKindleシリーズを出しているように、端末で儲けるのではなくサービスで儲けるほうにシフトしています。このため、開発コストがアップしてもトータルで儲けることが出来ればそれでOMAPを買収しても問題はありませんし、他の端末メーカよりもリスクが低いと思われます。

ただ、それだけではAmazonのメリットは買収するほどでもないようにも思えますが、もっと他のことがあるように思えます。

それはARM系サーバに使用することです。

Amazon Web ServicesにはARM系OSもアップロードされています(使用できるか知りませんが、選択は可能です)。ARM系のCortex-A15はメモリが拡張され大量搭載可能ですし、近い将来(2014年)において64bitをサポートするARM系CPUが登場します。このためAWSでARM系CPUを普通に選択する時代が来てもおかしくはありません。

ARM系サーバはまだ波が来ていませんが、"低電力消費+高性能のARM系サーバ用チップにハードウェアスタートアップの参入相次ぐ, Calxedaが$55Mを調達"にもあるようにARMサーバ系CPUの設計メーカであるCalxedaが資金調達できたように市場ではマイクロサーバの時代の到来を予感させています。

IntelもAtomを使用したサーバ系CPUの開発を行われており、ARM系サーバ系CPUに対応をしようとしています。

AmazonのメインはKindleの様な端末販売ではありません。メインはオンライン販売とそれを支えるAWSなどのサーバ群です。このため、次の主流になるかも知れないマイクロサーバのトレンドに対応するためにOMAP等の開発リソースを買収するのは理にかなっている考えられます。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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