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小さいネットワークならばそれほど難しくなく構築することはありますが、大規模になるとAS(Autonomous System)、DNSの親玉、BGP(ボーダ・ゲートウェイ・プロトコル)等ISPレベルになるとはまた違ってきます。それらのインターネットを支える技術に関して本書では詳しく説明しています。

インターネットを「壊れやすくて粘り強い」事を、過去の故障の事例を元に説明しています。

近い故障としては2011年のエジプトのインターネットの切断事故(政府指示だから事故ではないか)がありました。何か記事には、実際回線引っこ抜いたようなことが書かれてあったかとおもったのですが、BGP経由でASに広告してた経路を取り下げたようです。こんな簡単に切られるしまうのですね。

インターネットの設計思想はある意味正しいのかも知れません。物理回線が切断しやすく(船の錨、鮫、地震による地面の移動)、回線の盗難や設定ミス、政治的な切断設定、曖昧な規定の解釈違いによるバグ等によって簡単に切れます。対策として、故障することを前提として回復させやすい設計に見えます。

この考え方は他に活用できるのではないかと思います。

例えば、原発において故障は起きない設計思想ですが、これは根本的に思想が間違っているのかも知れません。不沈と名乗った船で沈まなかったものがなく(タイタニックとか)、不落の城で落ちなかったものはありませんし、99.9999%のシックスナインの安全性と言われて引退するスペースシャトルは134回の打ち上げで2度も墜落しています。このあたりの安全性の確保は、人間の限界なのかも知れません。

ならば、インターネットの様に壊れることを前提とした設計思想の方が被害の少なくさせることが出来るでしょうし、対策(ロボットの開発等)も十分練られたかも知れません。インターネットの設計思想は他でも十分に活用できるのではないかと思われます。

本書で小話的に、"若い大学院生とRFC"によるRFCの歴史はちょっと面白いですね。RFCではいろいろと規定されていますが、発端がRFC=リクエスト・フォー・コメント=ご意見を求めます程度で、大学院生(=実作業を行ったメンバー)が各種事項を決められないため、権威ある人たち(大学の教授とか、企業の研究者とか)に聞くことから始まったようですが、スタートがそういうのかとちょっと面白いです。

既にインターネット及び通信は、生活になくてはならないレベルのものになったと思います。スマートフォンの普及による端末数の急増や発展途上国の発展によってトラヒックはまだまだ増えるでしょう。そう考えるとインターネットの速度(転送速度)、レイテンシや故障発生時の対策なども重要になってくると思いますし、Akamai等のキャッシュサービスによる転送量の減らす対策や冗長構成確保などのサービスなどが大切なような気がします。

そうなると本書で解説している内容を知っておいてもいいのではないかと思われます。

ついでに本書を手に取った瞬間、"あれ重い(厚さやサイズから比べると)"と思ったほど中身が詰まった本でした(紙質かな?)。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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