« 2011年6月22日

2011年6月25日の投稿

2011年6月27日 »

書評を書くタイミングが悪かったかも知れません。著者である羽生善治氏が名人戦(2011/6/22)で残念ながら敗れました。

私は将棋に詳しいわけではありません。小学生以来指したこともありませんが、2010年にあから2010が女流の清水市代さんに勝ったところで興味がわきました(その後の対戦はどうなったんだろうか...)。

このため、本書を手にとって見ました将棋を知らなくても面白かったです。

将棋界には「反省はするが、後悔はしない」は面白く且つ有意義な言葉です。シリコンバレーでは、起業と解散を繰り返されますがこの言葉と似たような方針なのでしょう。やはり、失敗は失敗で学び、次にチャレンジするための足かせにならないように後悔を最小限にとどめるべきなのでしょう。

「リスクをとらないことが最大のリスクである」の考えは、非常に面白いと思います。過去にIntelは、DRAMから撤退してx86に注力しました。この選択はリスク過ぎるだろうと思われますが、そのおかげで現在の半導体業界の巨人になりました。

また、NVIDIAもFermiを作ったときに相当なリスクを背負ったと思います。Fermiは大きなサイズ(コストが高い)で、且つGPGPUとして機能を大量に盛り込みました。おかげで、消費電力あたりの性能やGPUとして性能はライバルに劣るものになってしまいました。また、さらに設計ミスのおかげで、製造が遅れたものです。

ですが、このリスクを背負ったチャレンジが成功したため、Top500でFermiを採用したシステムが増えていますし、AmazonやIBMが採用したシステムを販売しています。GPGPUの先頭に立つためのリスクをとっているため、今の地位に居られているのではないでしょうか。逆にAMDはGPUに関してはリスクをとらない方針にしているためか、GPUとしては地位は高くなっていますが、GPGPUへの対応が今のところ後手に回っています。

AMDが、x86の64bitを発表したときも相当リスクを背負ったと思います。それまでx86の命令はIntelが作っていましたが、その流れを断ち切ったのですから。ですが、そのおかげでサーバ市場で足がかりができて、現在のシェアを確保できています(その後、ちょっと大きくシェアを落としましたが)。

無条件にリスクをとれば言いわけではありませんが、リスクをとらなければ窮地に追いやられるのは、どの業界でも同じだと思います。このため著者は新しい作戦を実戦で試すことをリスクと言っていますが、どの業界でも同じなのだと思います。

情報メタボに関する考察は面白いと思います。Googleの登場で情報を調べることに関するコストは低下していますし、ブログ・マイクロブログ・キュレーションしやすい環境が整っているため、情報が氾濫しやすくなっています。

このため情報メタボで満足しやすくなったのではないでしょうか。著者が"情報や知識はしばしば創造に干渉する"と提言しています。これは、知識が増えすぎたため、それの対抗処理を知り、自分で考えること減ったのではないでしょうか。

溢れる情報のおかげでゴールまで簡単に行けるようになりましたが、ゴール後の道まで書かれてあるわけではありませんし、もしかするともっと別な近道はあったかも知れません。このあたりは、情報化時代の問題なのかも知れません。

本書を読み業界の第一人者は他の業界でも通じることがあるものだと思いました。

後、やはり新書タイプは電車の中では読みやすいですね。このサイズの本か、Kindleのような軽いガジェットで本が読みたいです。あまり厚い本は持ち運びことも読むのもつらいです。

(本エントリはタイトルミスで2011/6/24 9:00に一度掲載したものを、6/25 9:00に再アップ)

櫻吉 清(さくらきち きよし)

« 2011年6月22日

2011年6月25日の投稿

2011年6月27日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

櫻吉 清

櫻吉 清

IT業界ウオッチを趣味としている。知的好奇心の趣くままに何でもチャレンジして、とりあえず壁にぶつかってみる。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
カレンダー
2013年4月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
kichi
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ