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"ARMがAMDへのライセンス供与を狙う、Windows 8のARM対応がきっかけとなるか"

このニュースを見て難しいと思いました。何が難しいかと言えば、AMDがARMを採用することではなく、採用するメリット・デメリットが見えないため判断が難しいと思います。

2011年の年初にAMDは前CEOを更迭しました(予想外のCEO辞任で揺れるAMD)。更迭要因は、メディアタブレットへの対策不足と言われています。現在のAMDのBobcatでは、ARM系チップに対抗できるほど消費電力ではありません(メディアタブレットサイズに入るタイプも出ています)。

役員がCEO更迭するほどですから、AMDがARM採用する可能性が0ではありません。ですが、採用することにメリットはどの程度あるのでしょうか?ARMがx86を駆逐する可能性があるのでしょうか?それともx86がARMの撃退する可能性はどの程度あるのでしょうか?まったくわかっていません。

このようなCPUアーキテクチャの変換に関して歴史上最も参考になるのはRISC vs CISCです。

RISCが登場したときに、CISCは性能的に劣り駆逐されると言われました。このため、Intelも黒歴史No.1と言われているi860/i960を作成しています。巨人Intelでも揺れました。

ですが、RISC vs CISCの決着は、最終的にCISC内にRISCの考えを取り組む形で収束し、RISCのシェアは増えず終わりました。RISC vs CISCの争いとはその程度だったのです。

現在のx86 vs ARMの焦点は、省電力の能力の違いです。また、CPUの性能向上が目覚しく、人間が必要とする能力の下限がそろそろ飽和して、一般ユーザにはARMチップの性能で十分な時代が来るでしょう。

x86のデコード部分が非常に複雑なため、ARMチップの消費電力に太刀打ちできないと言われていたり、逆に改善できるとも言われています(結論:できるかどうかわからない)。このように考えると現在x86 vs ARMでもめている消費電力に関しては将来的に"そんなこともあったね"で終わったしまうのではないかと思えてなりませんが、どうなるか現時点では分かりません。

AMDのARMチップを作るならば2パターンあると考えられます。1つはCPU部分をARMに、GPU部分をAPUにするARM版Fusionです。もう1つはx86とARMのハイブリッドのCPUのFusionです(ついでにGPUも入る)。

1つ目のARM版Fusionを作るならば、Bobcatの省電力版(GPUをもう少し小さくしたりキャッシュをもう少し小さくしたり、チップセットを入れたり)の方がより費用対効果が高いと思われます。

2つ目のx86&ARMのFusionは、どうでしょうか。現時点ではARM版Androidとx86版WindowsとCPUアーキテクチャとOSの組み合わせは分かれていますが、お互いにx86版AndroidとARM版Windowsがでる可能性があるため、将来的にx86&ARMのハイブリッドFusionは必要とするケースは無くなると思われます。

2011年ならばに需要があるかも知れませんが。また、このような中途半端な製品で成功したためしがありません。決断はドラスティックにふったほうが良い結果が出ます(ただし、失敗する可能性も高くなりますが)。

AMDの首脳陣はARMを採用するのでしょうか?現時点では、ARMがPC市場にどの程度入ってこれるかわかりませんし、x86の省電力化がどの程度ARMと競争できるかわかっていません。

また、AMDの開発力&資金力でIntelとARM陣営の両方と戦うのは得策ではないと思います。

とは言え、PC市場が将来的に小さくなる可能性があります。この時のための対策は必要ですが、ARMと組むのが良いのか、それとも自社開発x86に固執したほうがいいのかわかりません。

これがまだ経済的に余力があるときならばよかったのですが、現在のAMDの懐状況を考えると、多くの保険的な選択肢を取れるとは思えません。

もしドラステックな選択をとるならば、ARM不採用=Bobcat系をスマートフォンに入れれるように省電力化する(Intelと同じ選択)=x86と心中するか、保守的なサーバ以外をARMにチェンジして、ARM版FusionでARM版WindowsとARM版Android対応を主眼として、最終的にはARMにチェンジする=x86を捨てるのどちらかを選択した方が良いと思います。

どちらが良いかはわかりませんが。

櫻吉 清(さくらきち きよし)

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